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猫の飼い方、飼われ方 05

読み返してない

買ってきた食品を棚にしまっていると、二階から降りてきたプロイセンが「夕食は三人前な」とダイニング側からカウンターに寄りかかって言った。
ドイツはりんごを持ったまま振り返り、「誰か来るのか?」と不思議そうに首をかしげた。
「来るっていうか、来てる」
「来てる?」
ドイツはプロイセンの肩越しに向こう側を見るが誰もいない。
首を反対側に倒したドイツを見て、「違う」とプロイセンは言うと天井を指さした。
「上にいるのか?」
「あぁ、屋根裏に」
「屋根裏?」
彼らの家は生活スペースとしては二階建てだが、二階の廊下の天井の一部にフックがついていて、それを“鈎”のついた棒で引っ張ると屋根裏への階段が降りてくる仕組みになっている。
屋根裏は半分が物置になっていて、半分はプロイセンの作業スペースとなっている。
普段は階段はおりてないが…
「昼間にさ、本棚の段がちょっとぐらついててさぁ、大工道具が必要だったから階段を下ろしておいたんだよ。で、本棚の修理終わって戻そうと思ったら廊下にいたんだ」
「いた?」
「そ、俺に気づくなり階段のぼってっておりてきやしねぇの。せっかく慣れたのかとおもったのによぉ、俺が上に登ろうとすると、こう“シャーーー!!!”って猫みたいに威嚇するんだよなぁ」
ドイツは兄の話に嫌な予感がした。
まさか…おかしな野生動物でも入り込んでいるのではないだろうか?
アライグマとか、イタチとか、タヌキとか…
「兄さん…、一体何が上にいるんだ?」
恐る恐る聞くと、
「だから、ロマちゃんだよ」
プロイセンはあっけらかんと言った。
なんだロマーノか。
ドイツは野生動物が入り込んだのではないことに安堵したが、すぐに別の意味で困ったことになっているということに気づいた。

 *

プロイセンに夕食の準備を任せ、二階に登ったドイツは屋根裏への階段の前で立ち止まり上を見上げた。
「ロマーノ、ロマーノいるのか?」
そして声をかけてみるが、反応はない。
ドイツはしばらく様子を伺った後、ゆっくりと階段を登っていった。
時刻は陽が沈むというところ、それでなくても雨戸を閉め切った屋根裏は真っ暗だった。
目を慣らすためにしばらくじっと闇をみつめていたが、大きな荷物の輪郭がかろうじてわかるくらいにしかならない。
「ロマーノ明かりをつけるぞ」
一応ドイツは声をかけるが、半ばもういないんじゃないだろうかと思っていた。
というのも、プロイセンは昼に飛び込んでいったのを確認した後、しばらくは構っていたらしいのだが、くしゃみをした途端に飽きて夕方になるまで犬と遊んでいたらしいのだ。
プロイセンが目を離した隙に出ていった可能性が高い。
だが…いた。
長い眠りから起こされて不満そうに瞬くオレンジの電灯の下、どこからか引っ張り出したらしいシーツにくるまっている『モノ』。
「ロマーノ?」
声をかけるが反応はない。そのかわりにスピーっと心地よさそうな寝息が聞こえた。
「寝ているのか」
ギシリ…と床をきしらせて近づく…と、ドイツは足元にあった空き缶(おそらくプロイセンが放置していたもの)を蹴飛ばしてしまった。
カンッと高い音を立てたそれは置かれていたダンボールにぶつかり、カラカラカラと転がっていく。
それで起きたのか、ロマーノがくるまっているシーツが動いた。
「ロマ「ちかづくんじゃねーっつったろうが!このジャガ兄!!!」」
声をかけようとした瞬間、プロイセンが言ったようにシャーーーッ!とばかりに威嚇されてしまった。
思わずビクッとしてしまったドイツだが、息を吐いて落ち着くと「ロマーノ」と改めて彼に呼びかけた。
「そんなところで何をしているんだ?」
「ジャガ2号?」
「…なんだその嬉しくないあだ名は…」
ドイツが呆れていると、シーツの一部がひらりとめくれ上がりロマーノの顔が見えた。
「な、何しにきやがった」
「何しにって…、ここは俺の記憶違いでなければ俺の家だったようなきがするんだが」
「う、うるせー!ここは俺の部屋になったんだよ!」
「いつからそんなことに」
「今日!」
ドイツ国内に南イタリアの占領地が…なんてことはもちろんドイツは言わない。
ロマーノとて本気でいったわけではないだろうし、屋根裏を占拠されても別に痛くも痒くもない。
「チクショー…プロイセンの野郎がいるなんて聞いてないぞ」
「…誰に聞いたんだ?」
不思議に思って尋ねるが答えはかえってこなかった。
「…出てこないのか?」
「…あいつは居ねーのかよ」
「兄さんか?彼なら下にいるが」
「出ていかねーのかよ」
「今日はもう家にいると思うが」
ドイツの言葉にチクショウとロマーノが小さく悪態をつく。
「あのな、兄さんは少し乱暴な所はあるが、むやみに暴力を振るう人ではないぞ」
「んなもん信じられるか!」
「いや…殴られたことはないだろう?」
「……」
どうやらロマーノは都合が悪くなると黙りこむらしい。
「とにかく出てこい。泊まるなら下に部屋を用意するから」
「此処が俺の部屋になったんだ!」
「此処には暖房の設備もないし、倉庫だからホコリっぽいし、そもそもベッドがないぞ?」
「フーッ!」
「猫みたいに唸るな…とにかく、下に降りよう、な?」
そろそろと近づくとまたシャーッ!と全力で威嚇された。
これまでになかった反応だが、どうもプロイセンがいることで過敏になっているようだ。
ドイツは敵意が無いことを示すように両手を上げた。
「大丈夫だ、何もしない。それに兄さんが何かしてきても俺が守ってやろう、それでどうだ?」
「うー…」
「とにかく下に降りよう。兄さんが料理を作っているんだが、あの人は一人にしおくと大抵何かしでかすからな」
そういってシーツを掴みロマーノから引き剥がそうとするのだが、丸くなったロマーノはシーツの端を自分の下に巻き込んでいるらしく全く動かない。
「ロマーノ、いい子だから、な?」
「……」
「そろそろ腹もへってるんじゃないか?」
「……」
「ほら、随分冷え込んできたし…」
「……」
だめか。ドイツは困ったように眉をしかめた。
そして少し考えたが、ロマーノを連れ出すいい案は浮かばなかった。
ドイツは仕方が無いよな…と胸の中でつぶやくと、
「よっと…」
「!!!!」
ロマーノの上から覆いかぶさるようにして手を彼の下に回すと、シーツにくるまったままの彼を持ち上げた。
「て、てててて、てめぇ!!な、何しやがる!!!!」
「こらッ、暴れるな!」
「だったら離せよコノヤロウ!!!」
「離したらお前はまた屋根裏に閉じこもる気だろう」
「当たり前だ!カッツォ!」
だったら放す訳にはいかない。夜になれば、屋根裏は家の中とはいえ冷え込みがきついのだ。
ドイツはロマーノの腹の前でがっしりと腕を組み、暴れるロマーノもなんのその。ゆっくりと階段を降りていく…と、

「お、きたきた。なぁ、ヴェスト、新しいバター開けても…」

ちょうど一階から昇ってきたところであるらしいプロイセンが居た。
そのプロイセンをみたとたん…

「フッシャーーーーー!!!!!」

ロマーノが全力で威嚇を始めた。
それに「おぉお?」とおかしな声を上げたプロイセンは、しかしすぐに調子を取り戻し、「なんだやるかぁ~?」とか言いながらニヤニヤしだした。
「兄さん、からかうのはやめてくれ」
「だってこいつがよー…って、うわ、なにすんだ!」
果敢にもロマーノはプロイセンをひっかこうと手を伸ばしている。
それに半ば演技だろうがプロイセンが怒ったような顔をしてなにかいい、ロマーノがドイツの腕の中で暴れる。
プロイセンはいつもすぐに何処かにいってしまうロマーノがつっかかってくるのが面白くてたまらないらしいが、ロマーノの方はたまったものじゃないだろう。彼ははすでに人の言葉を話していない…。
ドイツはロマーノを支えながら大きくため息をついた。

「犬の多頭飼いほど上手くいきそうにないな……」

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