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退屈魔王様

王道RPG ラスボス魔王様

魔王というものは王城の奥深くにいて、勇者がやってくるまでひたすら退屈な日々を過ごすしかないらしい。
せっかく強大な力を持っているというのに、街に出て破壊行為を行うことも人を脅すことも家畜を殺すこともなく、日がな一日ボケ老人の如くぼんやりと玉座に座っているだけ。
ちなみに、仕事はすべて宰相と四天王とかいうやつらがやってくれているので、俺は本当に何もしなくていい。…というかやることがない。
時々退屈すると、青いスライムをプニプニして遊ぶくらい。
朝起きて、玉座に座って、茶を飲みながらスライムプニプニで一日が終わる。(ちなみに食事は特に必要がなく、ここ10年ほど摂取していない)
外に出たいといっても、「いけません!何かあったらどうするんですか!」と宰相が厳しい顔で言うし…。
っていうか「外は危険です!」とか「悪い人がたくさんいるんですよ!」とか…え?なんでそんなに過保護なの?
一応、俺最強なんだよね?魔王様だよね?
なんて疑問に思って、20年ほど前に四天王たちと模擬戦をやった。結果、俺が圧勝だったので、確かに強いとは思うんだけど…なんで俺、魔王城の奥深くでじっとしてなきゃいけないんだろう。
俺、カビがはえそう。
もういっそ、魔王なんてやめて村で農民とかやりたい気がする。
農民…いいなぁ…。
毎朝起きて、畑の世話をして、犬をつれて山羊を放牧したりして…。
いいな…いいなぁ…。
こんな暗いどんよりした所じゃなくて、太陽の下で自然の恵みの下に暮らすわけよ。
ここじゃ陽の光もはいらんし、雨の音も聞こえないし…。
それに頬にそばかすがあったりする女の子って可愛いとおもわね?ちょっと田舎くさく、おさげ下げてたりさぁ、花畑で花飾りとかつくっちゃったりさぁ…。いいよなぁ…あこがれだよなぁ…。
…それに比べて、ここにいる女どもは…なんつーの?娼婦?毒婦?みたいなのばっかなんだよな。
美人で胸はでかくて、色気ムンムンだけど、怖いのなんのって…。
はっきりいって全く好みじゃない。
っつか、そもそも俺はなんだってこんなとこでこんな事やってんだろうな…?
むかーーーし…あー…多分200年…いや400年?くらい前に反抗期かなんかで、カッとなってやっちまったような気がするんだけど…そもそも、何目指してたんだっけ俺。
あ、中二病的な何か?

「はぁ…」

もう何年も同じような思考を続けている俺が、ため息をつくと、そばにいた侍従(お茶くみともいう)の若いルーガルーはビクリと肩を揺らした。
彼は、同じくルーガルーで四天王の一人をしている黒牙(こくが)と違っていつもビクビクしてて面白い。
時々ビクビクしすぎてうざいけど。
「おい、赤犬」
彼の名前は…よくしらんので見た目で呼ぶと「はひぃ!」とおかしな声で返事をした。
「勇者一行は今どこにいんの?」
「え、えっと、あの、一番進んでいた勇者たちは、ついこの間ベルガの城で全滅しちゃいました。え、あ、その、だから、今一番進んでいるのは、ホントンの町にいるやつらだと思います!」
「ふーん」
ちなみに俺を倒そうとしている勇者たちは常時10組くらいいる。
だけど、どれもが途中で倒れ、未だに四天王にすら近づけたものはいない。
なっさけねー話。
「まぁいいや。で、ベルンのやつって強いの?」
「べ、ベルガです陛下。あ、あの陛下だったら小指一本で倒せると思いますけど」
「なにそれ、よわっ」
「べ、ベルガが弱いんじゃなくて、へ、陛下が強すぎるんです」
「ふーん…」
なにそのどうでもいいおべっか。
冷たく見てやると、彼はまたビクビクした。
「すみ…ません」
「べつにー…っつか、俺、部下の働き振りとかしらないんだけど、ちゃんとやってんの?」
「は、はい。あのご報告が必要ならば宰相様をお呼びいたしましょうか」
「そこまでする必要ないし、で、どんななの。まさかやりすぎてないよな」
「も、もちろんです!人間の街の中への急襲は宰相様がやってはいけないと命令されておりますし、旅人を襲うにも許可が行って、ひとつの街道につき月に3回までってきめられてます!」
「ふぅん」
「眠りの病を蔓延させた町のそばにはちゃんと薬草の生えた山がありますし…それに、勇者達には少しずつレベルを上げてもらうために、いきなり強いものを当てないようにと厳命されております!他にも…」
と、報告を聞く限り、ちゃんとやっているようだ。
っつか、勇者の対応はかなり甘くしているらしい。
それでなんでここまでこれないかね…ぇ。
そんなことをぼやくと、
「半端なものでは魔王様の相手はさせられないって、宰相様も四天王様もいっておられました」
赤犬がキラキラと輝く目で俺を見ながら言った。
うん。
意味分かんない。
超うざい。
「っつか、俺、いつもここにいる必要ないよな。勇者が四天王を倒した時点で呼び出されるって設定でもよくね?」
「な、何をいっしゃるのですか!陛下がここにおられるのとおられないのでは、魔物たちの士気が…!」
「いやいや、俺ずっとひきこもり状態だし。それに直接指示だしてんのは宰相たちだよな?」
べつにこの玉座から力を分け与えているとかってわけでもないし、魔界を安定させているとかってわけでもないし…
「ぶっちゃけ居なくなっても勇者が来ない限りまったく影響なくね?」
俺がずばり言うと、赤犬の耳がぺしゃんとなって捨て犬みたいにキュンと小さく鳴いた。
「そ、そんなこと言ったらだめです。陛下」
「いやいや、言わせろよ。俺、もうずっとこの城から出てない…っつか、ぶっちゃけもうずっと部屋と謁見の間の往復しかしてないし」
「へ、陛下ぁ」
「最後に城の外に出たのいつよ?100年前?それとももっと前か?」
「へ…へい…」
「ちょ、俺、どんだけひきこもりだよ。魔王じゃなくてヒッキーじゃね?…っつか仕事もしてねーし、ニート?いやいや、完全ニートだろ、ウワッ、最悪。魔王の風上にもおかねーな」
「へ…」
「これはいかん。いくら魔王でもこんなことではいかん。いや、もちろん魔王という職業を放棄するわけじゃないよ。だって宰相とか四天王の奴らとか、“あんたが上じゃなきゃやる気がおきない”とかいう頭のかしなやつらだし。そんなやつら野放しにできないし」
「………」
「けど、だからって、ここにずっとひきこもるってのもおかしいよな?まぁずっと気づいていたんだけど、今日こそは自分で自分をごまかすのはやめよう」
「……陛下?」
「というわけで、勇者が来たら絶対に戻ってくるから…」
俺は立ち上がり、にっこりと微笑んで…多分ここ30年ではじめて…赤犬に手を上げた。
「それまで宰相によろしくっていっといて」
そして次の瞬間、俺は魔王城から姿を消した。
っつか、ぶっちゃけ逃げ出した。

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