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ゼロの夜想曲 40

黒く美しい長い髪を持った白い騎士・・・・。
その横顔は女と見まごう如く美しく、氷のように冷たい。
黒い瞳が迷い無く動き・・・そして、主人の姿を捉えた。

「悪いな。安い仕事だ」
ヤヒロノヒモロギに残っていた力は、それほど多くは無かった。
彼を召喚するだけでそのほとんどを使い尽くし、報酬としては雀の涙にも・・・いや、一つ技を出させるだけですでに赤字だ。
俺がそのことを口にすると、彼は口角をわずかに上げて微笑むような表情を見せた。
そして、
「私は貴方の剣。なんなりとお申し付けください」
冬の北欧に吹く風のように冷たく乾いた・・・しかしとても美しい声。
半ば抱きかかえているルイズが唖然としているのが気配で分かって俺は苦笑する。
何しろ、俺の呼んだクーフーリンは、仲魔の中でも・・・いや、悪魔の中でも随一の色男だ。美しい貴族を見慣れているであろうルイズだって見ほれて当たり前だ。
「・・・とかいって・・・、報酬分しか働けないんだろう?」
言ってやると、彼はスッと目を細めた。
それは知らぬ者が見たのならば、彼が気分を害したととったかもしれない。しかし、長い付き合いのある俺から見れば、彼が機嫌よく微笑んだのだと言うことが分かった。

報酬分。
人間には人間のルール、暗黙の了解、マナー・・・そんなものがあるように、悪魔には悪魔の領分がある。そして、それは神にもあてはまるのだろうと思う。
この場合、俺のいう“報酬分”というのは、悪魔のルールによるものだ。
彼らは報酬・・・つまりヤヒロノヒモロギに蓄えられたマガツヒの分だけで働く。それをそれ以上・・・まぁ多少の誤差は認められるにしても・・・多くを働きすぎると、ルール違反になる。これは、ストック空間において得た知識で、ボルテスクとは少々事情が異なっているらしく、こちらで仲魔を使うには基本的にギブandテイクだ。
まぁ、違反したからといって灰燼に帰す・・・なんてことはないだろうが、まぁそれなりのペナルティはあるはずだ。

「ザンダインくらいは許容か?」
俺の言葉に眉目秀麗な白い騎士は一つうなづいた。
俺はならば・・・と、いまだクーフーリンの突然の出現に驚き戸惑っているゴーレムに目をやり、ちらりと笑ってみせる。
「両手両足をもげ、間違っても壊しきるなよ」
俺の言葉に一礼した騎士は、愛槍ゲイボルグを胸の前に水平に構えた。
そして・・・・

《ザンダイン!》

衝撃系に属する対単体最強の術が放たれる。

風を白く染めた竜巻・・・森の木々がざわめき、葉を、そして弱い枝を散らして竜巻に吸い込まれていく。
「な・・・んなの?!」
ようやく気を取り戻したルイズの髪はすぐ目の前の竜巻に吸い込まれるように、うねり舞い上がっている。と、それに引きずられるようにルイズまで前に出ようとするので、俺はあわてて彼女の細い腰を抱き寄せた。
逆三角形になった巨大な竜巻・・・それは・・・ぎゅるぎゅると音を立てながら地面をえぐり・・・そして、ゴーレムに襲い掛かった。

そもそも、巨大なだけでそれほど動きが俊敏とはいえなかったゴーレムは・・・・とそこまでだ。
その先はすでに分かりきっている。
俺はすでに姿をけしかけているクーフーリンによくやったというように一つうなづいて見せると、ついでルイズに目を移した。
土石流が起こったかのようなものすごい音がするが、それにも俺はほとんど注意を払わず、「ルイズ!」と彼女の名前を耳元で呼んだ。
何度か目にようやく気づいた彼女は大きく見開いた目を俺に向ける。
俺は小さな子供にするように彼女を後ろから抱きかかえ直した。幸いなことに彼女はまだ呆けているのか、反抗は無い。杖を彼女に持たせ、俺は彼女の手を包むようにしてそれを助ける。
「ルイズ!」
「な・・・なに?」
彼女の反応があることを確認して、ようやく俺はゴーレムを見た。
クーフーリンの仕事は完璧だった。
両手をもがれ、両足を砕かれたゴーレムはいまや巨大な胴体だけになり、地面を震わせて落ちたところ。
「ルイズ、とどめをさすぞ」
「え?」
「え?じゃない。それに間の抜けた顔をするな」
俺が言うと、彼女はハッとしたようにいつもの強気の顔を取り戻す。
「いい顔だ」
ほめてやると、頬の辺りをカッと赤くするところは割りと可愛げがある。
「で、とどめって・・・」
「お前の魔法で・・だ。」
目を見開く彼女に俺は彼女の手をぎゅっと握ることによって応えてやる。
「分かってる。お前はまだまだ未熟者だ。俺の主人にしてはまだまだだが・・・まぁ、お前の心意気だけは気に入っている。」
「れい・・・じ」
「手伝ってやるから、気合を入れろ」
グッと手に力を入れると、彼女の顔にもまた気合が入った。
俺から顔を離して、まっすぐに胴体だけになったゴーレムを見やる。
ゴーレムは砕け散った体を少しずつ再生しているところだ。
俺はそれをじっと見つめ・・・・
「胸の中央だ。そこを核としているらしい。そこを狙え。」
彼女に告げる。
「わ・・・わかった!」
彼女は杖をきゅっと持ち直し、正面に構えた。

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