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イエス オア ノー

中世FT好きすぎる
フランシス(仏)×ルイーゼロッテ(女独)
読み返さない

早くは物心付く前に、そして多くはローティーンのうちに婚約を済ませ、二十歳には大抵のものが結婚してしまうという貴族社会の中にあって、今年23になってしまったルイーゼロッテはすでに“嫁ぎ遅れ”というレッテルを貼られていた。
家柄は申し分なく、また美しい姫ではあったが、彼女には何故か求婚の話は一度も来たことがなかった。それゆえ世間は“実は頭の病があるのだ”とか、“実はすでに私生児がいるらしい”とか好き勝手を噂する。
彼女自身はそれほど結婚願望は強くはないのだが、心ない噂には胸を痛めていたし、また貴族の娘として家の役(政略結婚)に立てないことにも胸を痛めていた。
だが二十歳を過ぎても尚、ひとつも結婚話が出てこないとわかった時、彼女は他の方法…彼女の家のもつ領地の内政に励もうと心を決めた。
そうして王都への街道を整備し、途中途中に宿街を作るという計画を立てていた時…

「結婚してほしいんだ」

彼女は思いもかけない相手から結婚を申し込まれた。

 *

「フランシス、それは一体なんの冗談だ?」

膝まずき愛を乞う男の名はフランシス=ボヌフォア。現在27歳。伯爵家の長男であり、近々その地位を引き継ぐ予定。
美しい金の髪と淡いブルーの瞳、少々女性的にも見える美しい男であり、社交界では知らぬものはいない伊達男だ。
そのフランシスはルイーゼロッテの兄、ギルベルトの友人ということもあり、二人は昔からの知り合いである。
だが、これまでフランシスはルイーゼロッテを妹のように扱ってきたし、彼女もまたフランシスを第二の兄のようなものと思ってきた。
だからこの求婚は青天の霹靂意外のなにものでもなかった。

「冗談なんてひどいなぁ。俺、本気なんだけど」
悲しげに眉尻を下げるフランシス。ルートヴィヒは頭痛を覚えて額に指を当てた。そして…
「わかった。では医者を呼んでくるから少し…「ちょ、待ってよ、ロッテちゃん」」
くるりと身を翻したルイーゼロッテの腕をフランシスは慌てたように引き止めた。
「俺は別にからかっても、熱があるわけでもないから!」
「まさか…若年性アルツハイマーとかいうやつか?」
「違うって!って、健忘症とかでもないからな!」
ついでに酒も飲んでない!
怒鳴るように言うフランシスをルイーゼロッテはじっと見つめ、「もっと悪いじゃないか…」とつぶやいた。
「は…?いや、だから正気だって!本気で俺は求婚してるんだが」
真剣な瞳に、ルイーゼロッテの瞳は揺れる。
「まさか…本気で言ってるのか?」
「あぁ、そうだ。ルイーゼロッテ。結婚して欲しい」
掴んでいた手を両手で握り締めるフランシス。
「あぁ、罰ゲームか?」
「違うって!どうして疑うんだ!」
「疑いたくもなるだろう…」
フランシスは数多くの女性と浮名を流している。
うわさ話には疎いルートヴィヒですら、すぐに思い浮かべられる名前が5つはある。
それも誰も彼もが美しいと評判の女ばかりだ。
比べて自分はは女にしては少しばかり背が高く、反対に声は少しばかり低く、そしてあまり笑顔のない欠点だらけの女だ…とルイーゼロッテは思っている。
それは実際の所、欠点ではなく魅力であるのだが…欠点だと思い込んでいる彼女としては、いくらフランシスが本気だと訴えたところで、信じられるわけがなかった。
それを信じるくらいなら、フランシスの気がふれたと考える方がよっぽど容易い。
「…あ、兄なら昨日から地方に出掛けているが」
フランシスは唐突な言葉に一瞬面食らったようだが、すぐに承知していると頷いた。
「領地の視察にでかけたんだろう?1ヶ月ほどは戻らないんだったか」
「あぁ…わかってるならいいんだ」
しかし、だったらなぜきたんだとでも言いたげなルイーゼロッテに、彼女が未だにまったく“求婚”を信じていないようだとわかってフランシスは傷つき、話を急ぎすぎたことを反省し立ち上がった。
「ルイーゼロッテ、今日は君に話があったんだから、ギルベルトは関係ないんだ」
そして先生が生徒に言い聞かせるように言った。
「それはわかるよな?」
「…あぁわかると思う」
「ここには君しかいないから、君に会いに来たんだ」
本当は使用人が5人ばかりいるのをフランシスは知っていたが、それは無視した。
ルイーゼロッテも同じだ。
「だがどうして?」
「だから君に結婚を申し込むためだ」
「それはどうしてだ?」
「それはもちろん…君を愛しているからだ」
愛していると告げたとき、フランシスは自分の声が緊張で上ずったのを自覚した。
自分で言った言葉に自分で照れてフランシスがルイーゼロッテを見ると、彼女は不思議そうに首をかしげている。
フランシスは自分の言葉がまだ信用されていないことを知って、また少し傷ついた。(もちろん、愛しているという言葉に全く何も感じる所がないとすれば、もっと傷つくのでその可能性は無意識に無視した)
「本当なんだ。からかっているわけでも、頭の病気でも、酔っているわけでもない。ルイーゼロッテ、君を愛している。一緒になってほしい」
ルイーゼロッテはまだ信用していなかったが、それでも真摯なフランシスの瞳にどくんと胸を打たれた。
「わ、私はお前のことをもう1人の兄のように思っていたし…、それにそれはお前も同じはずだろう?」
「君はそうだろう。だけど、俺は違う。そういうフリをしていただけだ」
いつから?
その問いをルイーゼロッテは飲み込んだ。
それを聞くのは少し怖かった。
「でも、他にたくさん女の人と遊んでいただろう?」
「それは」
フランシスは一瞬言葉に詰まり、「反省してる」と肩を落とした。
「自棄を起こしてたんだよ」
「自棄?」
「あぁ。君への婚約の話を片っ端から潰したり、ギルベルトの妨害を受けたりで、少し荒れてたんだ」
「は?私に結婚の話があったのか?」
「あぁ」
驚くルイーゼロッテにフランシスはあっさり頷いた。
「まぁ知らなくて当然だ。すべて俺が潰してきたんだから」
言葉もないルイーゼロッテにフランシスは自嘲するように笑った。
「ロッテ、君にも謝らなきゃな。結婚が決まらないせいで、色々と嫌な噂をたてられたろ?それは、ほとんど結婚を断られた奴等のやっかみだったんだ」
「えぇっ」
「俺はその噂を潰すことができたのに、それをしなかった」
「どう…して」
「もちろん、噂が立ってれば君への求婚者が減るからさ」
といっても、劇的な効果はなく、フランシスはやはり結婚話を潰すのにかけずりまわされた。
「わからない…」
「何がだ?」
「全部だ…嫌がらせとしか…思えない」
ルイーゼロッテの言葉にフランシスは悲しくなった。
「本当なんだ。信じてくれ。俺は君を愛している。一緒になりたいんだ」
「でもそんな素振りも…」
「あぁ、それはギルベルトに徹底的に邪魔されたからな」
フランシスは、過去にあったあれこれを思い起こし、舌打ちをした。
彼はルイーゼロッテへの思いを自覚してから何度もルイーゼロッテに個人的に会おうとしたり、文をだそうとしたり、プレゼントを贈ろうとしたりしたのだ。
だがそれはいずれもギルベルトに邪魔をされてきた。
そのうち何度かは本気の喧嘩になり、鋤骨を折られたこともある(顔だけは死守した)
「なるほど…じゃぁ、今日は鬼のいぬ間に…というやつか?」
「いや、違う。ギルベルトが居ないだけならこれまでも何度かあっただろう?」
王都に行かなければならなかったり、今回のように領地の視察に出かけたり…確かに何度も今日のような機会はあった。
「では何故?」
かしげていた首を反対側に倒すルイーゼロッテにフランシスは苦笑した。
「将を射んと欲すればまず馬を射よ…ってわけじゃないけど、ギルベルトを最初に説得できなきゃ、ロッテには近づくことすらできそうになかったからね」
「えっ…」
「まったく大変だったよ、俺がこの7年間、どれほど苦労したか…」
「な、7年?!」
7年前といえば、ルイーゼロッテはまだ16歳の頃だ。
まさか冗談だろうと驚くルイーゼに本当だとフランシスは頷いた。
「だから自棄を起こしてちょっと火遊びしたこともある……けど、そんなことやってる限りギルベルトには絶対に認めてもらえないと気づいてから、ここ3年ほどは全然遊びはしていない」
「嘘だろう?兄さんは相変わらずフランシスは特定の相手を作らず遊び回っていると…」
「それ、ウソだから…」
フランシスはぐったりと肩を落とす。
「本当にきっぱり身を洗いました!確かに未だに社交界でいくつか噂があるのは知っているけど、あんなのは事実無根。本当に!嘘だったら今此処で胸をついてもいい」
「なんというか…驚きの連続で、何がなんだかわからないんだが…」
ぼぅっとした様子のルイーゼロッテにフランシスは笑う。
「かもね」
「あぁ…と、待ってくれ。じゃぁ、兄さんは、私とお前の結婚を認めているのか?」
「そう…と言いたいところだけど、まだ」
フランシスの言葉にルイーゼロッテはホッとしたように胸をなでおろした。
ルイーゼロッテの兄であるギルベルトがシスコンなのは、先ほどの言葉でイヤというほどわかっただろうが、その影にかくれたルイーゼロッテもまたかなりのブラコンである。
認められたことに7年かかったということは置いておいて、認められたこと自体にすこしばかりショックを受けてしまったのだ。
「だがとりあえず、今度の視察の間にロッテを口説いてもいいって許可は得られた」
「く、口説く…」
兄とフランシスのガードのお陰で、口説かれたことのないルイーゼロッテは“口説く”という言葉だけで頬を赤く染めた。
「もちろん、手を出したら殺されるけど…」
「手…ッ」
初心な反応にフランシスは気をよくする。
そうだ、彼女は初心なのだ。
ギルベルトから許可をもらい、浮かれて思わず求婚してしまったが…そう、彼女は初心でなんにも知らないのだ。
彼女が顔を赤くして目を泳がせているさまを見ていると、フランシスの胸もまるで初めて恋をしった乙女のように高鳴った。
あぁ、やっぱり俺は彼女が好きだ。
フランシスは思った。
ギルベルトに邪魔されて、意地になっている所があるんじゃないか…なんて思ったこともあったが、違った。
彼はどうしても彼女に恋をしていて、どうしても彼女が欲しくて、どうしても彼女が愛しいのだ。
「ロッテ、覚悟してくれよ。これから一ヶ月半、ずっと君を口説くから」
フランシスがパチンとウィンクをしてみせると、ようやく彼が本当に本当に本気なのだと知ったルイーゼロッテは真っ赤になって俯いた。

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