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ゼロの夜想曲 37

ドガーーーンという耳が痛くなるような音共に天井が吹っ飛んだ。
青空が見える・・・と、次の瞬間に目に入ったのは巨大なゴーレム。
10メートル・・・いや、それ以上あるだろうか?イメージとしてはとにかくでかい土人形、アーシーズというところか。
アーシーズの弱点は・・・っと、いや、のんびりとそんなことを考えている場合ではなかった。
天井を無理やりにはらったものだから、折れた丸太だとか、屋根の間に敷き詰められていた藁だとか石だとかが降ってくる。
俺はとっさに他の3人の位置を確認する。キュルケは位置的に恵まれていたようでおそらく大丈夫。タバサは驚愕の表情からすぐに立ち直り杖を構えているのでまず大丈夫だろう。俺はルイズだけを懐に抱き寄せて彼女を守った。
バラバラと落ちてくるものは大して痛くも無い。
一通り収まってから顔を上げると、キュルケが炎、そしてタバサが風をつかってすでに抗戦をはじめていた。
タバサが小さく何かを呟き、杖をふると巨大な竜巻が巻き起こりゴーレムを吹き飛ばそうとし、キュルケが大きな胸を揺らしながら杖を振り下ろすと杖から炎の玉が飛び出しゴーレムにぶち当たる。
しかし・・・
「・・・くっ!」
「まったく歯が立たないわ!」
最初に呻いたのがタバサで、あせったように叫んだのはキュルケだ。
確かに彼女たちの攻撃は全くゴーレムに響いている様子は無い、これは・・・っと口を開こうとした時、
「退却」
俺の言葉をタバサが代弁してくれた。
そう、この場合はそれが利口だ。生き延びたいならば。
キュルケとタバサが逃げ出し、俺も続こうとしたのだが・・・
「ルイズ!?」
いつのまにか、胸元にいたはずのルイズの姿が消えている。
何処にいったのかと顔をめぐらせると、なんと、ルイズはゴーレムの背後に回って杖を構えてぶつぶつと何かを唱えているではないか。
あの馬鹿・・・っと口の中で小さく呟いた時、ルイズの詠唱が終わったらしく、杖から小さな光の玉が飛び出し、ポンッと可愛らしくゴーレムの表面ではじけた。
俺は思わず額にペチンと手のひらを当てた。
彼女はきっとあの時の術を試そうと思ったのだろう・・・否、術を試したのだ。だが・・・
「ルイズ!!!逃げろ!!!!」
まだまだ彼女はその術を我が物としていない。ついでに言えば、俺が無理やりに引き出した魔力はまだ回復しきっていない。
ゴゴゴゴゴっと低い唸りを発しながら、ゴーレムがゆっくりとルイズのほうを振り返る。
ルイズはその鈍い格好にもう一度っと杖を構えなおす。
「ルイズ!!!!無理だ!逃げろ!」
だが、先ほども言ったとおり、今の彼女には無理がありすぎる。
俺が叫ぶと、彼女は怒ったような顔で俺を睨んだ。
「いやよ!」
「嫌じゃねぇ!さっさとこっちに来るか向こうに逃げろ!」
「嫌!!!昨日の術を使えばこんなやつ、すぐにやっつけちゃうんだから!」
「昨日の術が使えれば・・・だな!だが、今のお前には無理だ!さっさと逃げろ!」
「嫌だって言ってるじゃない!逃げるなんて・・・逃げるなんて!もう嫌なのよ!」
そう叫んだルイズの目が潤んでいるように見えて思わずギクリとする。
「まぐれだなんていわせないわ!ゼロのルイズをプライドに変えるには、絶好のチャンスなのよ!」
「・・・今じゃなくたって挽回できるだろうが!」
「今よ!今じゃないと!それに、敵に背中を見せるなんて・・・そんなの貴族として許されないわ!!!!!」
そうルイズが叫んだ時、ようやくもたもたとしていたゴーレムがルイズを振り返った。
ルイズはキッとそのゴーレムを睨みつけ、もごもごと口の中で詠唱をすると杖から魔法を放った。
それは先ほどの光の粒よりもさらに小さな金平糖ほどの光の粒。もちろん練られた魔力もスカスカ。ゴーレムに向かってヒュンと飛んだそれはその表面でポンッとはじけた。おそらく、赤ん坊がもみじのような小さな手でパチンと叩いた程度のダメージも与えていないだろう。
「ルイズ!!!」
かまわず足を大きく振り上げ、一気に踏み潰そうとするゴーレム。
仕方なしに背負っていた剣に手をかけながら走り出した俺は、ゴーレムの脚がまさにルイズに襲い掛かる瞬間、滑り込んで彼女を胸に抱きそのまま転がった。
刹那、一寸前まで彼女が立っていた場所にズーーーンとゴーレムの足が落とされる。
「馬鹿!さっさと逃げろっていっただろうが!」
ルイズに向かってむしゃくしゃとした思いをぶつけた。
「だって・・・・!」
「だっても何でもねぇ!お前死ぬってことが・・じゃなくて!お前は曲がりなりにも俺の主人だって周りからは認められてるんだぞ!お前が簡単にくたばったら、使い魔のこの俺の実力が疑われるだろうが!」
「そ・・・そんな言い方することないじゃない!私だって必死なんだから・・・!必死で・・・!」
言いかけてルイズが言葉に詰まったのは彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ、嗚咽に言葉が出なくなったからだ。
ゼロのルイズ・・・みんなに笑われないように・・・みんなが笑えないように・・・俺の主人としてふさわしく・・・・か。
彼女は涙に潤んだ目で暫く俺を睨みつけていたが、やがて耐えられなくなったのか両手で目をこすりながら子供のように顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めた。
そのルイズに重なるようにして浮かんできたのは・・・気の強い幼馴染の女のことだった。
彼女は誰よりもプライドが高く、全てが自分の言うとおりにならないと気のすまない女だった。
だから涙なんてめったに見せることは無かったが・・・心の片隅にとても弱いところを持っていて、それを突かれるとちょうどルイズのように正体もなく泣いたものだった。
彼女は彼女なりに必死なのだ。
みんなに認められようと・・・そして、俺に認められようと。
彼女の震える肩に手を伸ばそうとし・・・慌てて彼女を抱き寄せると、押し倒すようにしてまたもや転がった。
途端、俺たちの立っていた場所をブンッとゴーレムの腕が舐める。
あぁ、もう!
「・・・ッとに!少しは空気読めよ!」
俺は一回転するとすぐさま立ち上がり、ルイズを横抱きにして踏み潰さんと追っかけてきたゴーレムから逃げ出した。

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