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ゼロの夜想曲 36

細い獣道を歩いてしばらく。
私たちは少しだけ開けた場所に出た。魔法学園の中庭ほどの大きさがぽっくりとあいていて、その中央にはなるほど確かに廃屋があった。
元は、猟師や木こりなんかが住んでいたものなのかもしれない。
丸太でつくられていて、傷みがひどい。
先導していたミス・ロングヒルが振り返り、
「わたくしの聞いた情報だと、あの中にフーケが身を隠しているという話です」
廃屋を指差しながら言った。
シンと静まり返った廃屋は人の気配が無いように思え、
「本当にここにいるのかしら?」
私が疑問を口にすると、玲治が何故かはしらないがとてもつまらなそうに鼻をならした。
「何よ」
小さく聞くと、彼はあくびでもしそうな顔をしながらなんでもないと首を振った。
その様子に引っかかるものを感じながらも、タバサがぺたりと地面に座り込んで木の棒で地面に図面を書き出すのに顔をそちらに向けた。
丸い円を書いて、その中央に四角。
「まず、一人、偵察にいく」
円の一部から一本の道をずずっと引き、建物の四角を一周させる。
「もし、いたら、挑発して外に出す」
とっても簡潔な説明。
「出てきたところを一網打尽ってことね!」
キュルケが言うと、コクンっとタバサが頷いた。
それにまたフンっと鼻を鳴らす音、振り返ると玲治がケチでもつけたそうな顔でその図面を覗き込んでいた。
しかし、口に出したのは作戦への不満ではなく、
「で、偵察兼囮は誰がやるんだ?」
という台詞。
それに他の人間はみんな玲治を見つめた。
玲治のほかは女性ばかりだし、それで玲治が折れると思ったのだが、彼はとても不満そうな顔をして私の顔を見て
「ルイズ、行ってこいよ」
「はあああ?!な・・・なんで私がいかなきゃいけないのよ!!!!!」
「大丈夫だから」
「だ・・・大丈夫って!あんた・・・じゃなくて、玲治がいけばいいじゃない!」
「いいから行ってきなって、ご主人様。危なくなったら助けてやるから」
こんな時ばかり都合がよすぎるわよ!!!と思ったけれど、ご主人様という言葉にすっかりほだされている私。
クッと小さく喉を鳴らして、大人しく廃墟へと向き直った。廃墟を向き直る瞬間にキュルケが笑いをこらえたような顔をしているのがチラリと目に入ったが・・・まぁいいわ。
だって、ご主人様なんて言葉・・・気分がいいじゃない。

私はそろそろと小屋の傍に寄りつき、窓の中をそっとのぞいてみる。
ガラス窓は長年放置されていたせいか白くにごっていたが、中が見えないほどではない。
小屋はどうやら一部屋のみ。部屋の真ん中にテーブルと転がった椅子。左の奥に崩れかけた暖炉、テーブルの上にはワイン瓶が一つ、部屋の隅には薪が積み上げられていて、その隣に木のチェスト。大き目のものだが奥行きはそれほどなく、人が隠れるほどではない。
ガランとした室内。ここにはいない・・・?
いや、相手は土くれのフーケ、メイジの盗賊なのだ。
私は窓から離れると、念のために小屋の裏側にそっと回った。
小屋の裏にも別段変わったところは無い。目に付いたものといえば・・表よりも幾分じっとりとしてて壁材の腐敗がすすんでることくらい。それと、裏側の窓のほうが幾分上につけられている。
そのままでは覗き込むことは少しきつかったのだが、おあつらえ向きに丸い石がちょうど窓の下に踏み台にしてくださいとでも言うように置いてあったので、遠慮なくその上に立たせてもらって中をうかがった。
先ほど私が覗いていた窓が正面少し下に見える。
此処から見てもやはり人がいる様子は無い。
やはり骨折り損だったのかもしれない。
少し残念に思いながら踏み台にしていた石から飛び降りると、表に回り、待機していた玲治たちのほうに両手で丸を作って合図を送った。

パタパタと駆け寄ってきたのはキュルケとタバサで玲治とミス・ロングヒルは少し遅れてやってきた。
「中には誰もいないわ」
報告をすると、そう・・とキュルケは頷き、タバサがドアに近づき杖を軽く振った。
「ワナはないみたい」
小さく呟いて、ノブに手をかけ開いた。
キュルケがそれに続き、私も入ろうとしてふと玲治を振り返ると、玲治はなにやら意味ありげにミス・ロングヒルに向かって目を細めていた。
「何か・・・?」
不振そうに言うミス・ロングヒル。
「いや、あんたは此処はいいからその辺を偵察したほうがいいんじゃないか?」
それは別におかしくもなんともない言葉だったのだが、ミス・ロングヒルは何故かぐっと詰まって顎を引き、睨むように玲治を見て、そうしますと小さく行って走り去った。
「何なの・・・?」
彼女を見送ってから聞くと、彼はおかしそうに口元にこぶしを当ててくつくつと笑い、中に入るようにというように私の背中を押した。

「やっぱり誰もいないわね」
中に入ると、一通り見てしまったらしいキュルケがテーブルの傍で腰に手を当てていた。
「そういわないで、何か手がかりがないか探しましょう」
私が言うと、彼女はつまらなそうにしながらテーブルの上の置かれたワイン瓶に手を伸ばし、持ち上げると銘柄に目を流した。
タバサがチェストのあたりにいたので、じゃぁ私は薪ね・・・とそちらに近寄ろうとして・・・
「あった」
タバサがチェスとの中からなんともあっけなく『破壊のピラミッド』を見つけた。
一片が15サントくらいの正四角推。
その上部、1/3くらいくらいが不思議な黄金色に輝いている。ところどころに溝のようなものがあって、複雑なパズルが組み合わさって形作られているようにも見える。
「なによ、もう見つけちゃったの?」
タバサが破壊のピラミッドを持って振り返ると、呆れたような声をキュルケが出した。
私もそれに賛同しようとして・・・
「嘘・・・だろ・・・・・」
玲治がかすれた声を出した。
振り返ると、彼の表情はローブでよくわからないが、それでも衝撃を受けているのはわかった。
「何なの・・・?」
「まさか・・・そんな・・・・何故・・・」
息をするのすら苦しそうにうめく玲治。
「玲治?」
不思議そうにそれぞれが顔を見合わせたとき、にわかにズズズズズっと地面が震えだした。

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