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マオさんとユウさん

FTほのぼの系

暖かで穏やかな日、マオさんは今日もポクポクと畑仕事をしていました。
彼の家は小さなく…こちらでいう所の英国の田舎風。
こじんまりとした二階建ての三角屋根。
壁には植物の“つる”が巻いていて、その家の前には野菜や穀物の植えられた畑が2つあります。
マオさんは人里離れたここに一人で畑を耕しながら暮らしているのです。

「さてさて、今日もいい天気だね」

凝り固まった腰を伸ばしながら空を見上げて、
「そろそろ昼時か」
真上になった太陽に目を細めます。
そうして汗をぬぐっていると「おう」と後ろから声をかけられました。
マオさんが後ろを振りかえると、そこにはユウさんが立っていました。
「おや、ユウさん。お久しぶり」
マオさんが微笑んでいうと、あまり愛想がいいとは言えないユウさんはまた「おう」と言いました。
「今からお昼にしようと思うのだけど、君はもうたべたかい?」
「いいや」
「なら一緒にどうだい。といってもたいしたものじゃないけどね」
マオさんはそういってユウさんを誘い、お昼にすることにしました。
マオさんが作った昼食は玉ねぎとじゃがいも、そして少しのベーコンの入ったスープ。それから少し固くなった丸パンです。
質素な食事ですが、マオさんの食事はいつだってこんな感じです。
二人は台所にあるテーブルに向かい合って座り、ぱくぱくと食べました。
「うん。少し味が足りなかったかな」
「足りないなんてもんじゃない。ベーコンについてる塩っけしか味がしない」
「そういえば、味付けはしてないな」
「お前はいつもそうだ」
「そうだったかな」
ぶっきらぼうなユウさんの言葉に、マオさんは首をかしげ味のしないスープを口に入れました。
味はやっぱりしませんでしたが、まずいわけではありません。
味がしないほうが、味がしないよりマシです。
二人は知っていましたからそれからは無言で食事を続けました。

「それで何かご用?」

食事を終えてマオさんがきくと、うんとユウさんは頷いた。
「実はロマティ王国の侍女に呪いをかけてほしいんだ」
「呪いを?それは穏やかじゃないね」
「まぁね。ところでお茶はでないのか」
「あぁはいはい」
マオさんは立ち上がってお茶を入れるためにヤカンコンロにかけました。
コンロといっても私たちが知っているIHでもガスでもありません。中に火の魔石を入れた魔法コンロです。火の調整が難しいのが難点ですが魔力が無い人にも簡単に使え、この世界では一般的なコンロです。
「それでどうして呪いをかけるの?」
「うん。俺はね、彼女をロマティ王国の王子さまとくっつけたいのさ」
「ユウさんは相変わらずだね」
「王子さまは侍女を気に入ってる。だけどね、侍女は王子を嫌いなんだ」
「それはまたどうして?」
「王子が、殿様ガエルにそっくりだからだ」
「へぇ」
「すごく太ってて、唇が厚くておおきくて、顔には吹き出物があって、汗でてらてらしてて、手が短くて、指が短くて、足も短くて、頭が大きくて、首がないけど、顎がみっつくらいある」
三重あごということでしょうか。
マオさんは殿様カエル王子を想像しました。その結果、なんだかとても可愛らしい王子様がマオさんの頭には浮かびました。
「ユウさんが彼を応援するくらいだからいい人なんだろうね」
マオさんが言うと、ユウさんは不機嫌な顔でコクりとうなずきました。
不機嫌な顔ですが、ユウさんは別に怒ってやいません。ユウさんはとても照れ屋なのです。この場合は別に照れてはいませんが。
「王子は生まれたときから不細工だった。みんなに不細工だと嫌われていた。だけど腐らなかった」
「ふぅん」
「いいやつなんだ。アホみたいにやさしいやつで、頭だっていい。みんなに誤解されてるだけなんだ。侍女も含めて。だから応援したい」
「その侍女はどんなひと?」
「うん。外見は可愛らしい。そして野心たっぷりだ。彼女は王子の兄、次期国王の側室になりたいと思っている」
「ふぅん」
「まぁ性格はおよろしいとは言えない。だけど、本当はいいこだ。今は家が傾いてて回りの事が見えなくなってるけど…。きっと二人ならうまくいくんだ」
ユウさんは難しいの顔をして唸りました。
マオさんは、本当を言うと彼の話はよくわかりません。
とうの殿様ガエル王子と侍女を直接は知らないのだから当たり前です。
ですが、マオさんはユウさんをとても信用していました。
だから「わかったよ」と彼の頼みをすぐに聞いたのです。
「でもどんな呪いをかけたらいいだろうね」
「それだ。それが問題だ」
そういったところで、やかんがピーとなきました。
「濃いめにたのむ」
立ち上がるマオさんにユウさんがいうと、マオさんは「あいわかった」と楽しげにいいました。
そうしてマオさんが入れたお茶はとってもどろどろとした緑色のお茶でした。
「これはなんだ」
ユウさんがきくと、「柿だよ」とマオさんはいいました。
「自家製の柿の葉茶さ。他にもいくつか薬草をいれたスペシャルブレンド」
「飲めるのか」
「失礼だなぁ。飲めるよ」
マオさんはそういってどろどろを一口飲むと「やっぱり飲めないよ」といって、お茶を入れ直しました。
今度はほとんど色がついていない白湯に近いものでしたが、ユウさんは文句はいいませんでした。
少なくとも今度のものは飲めそうでしたから。
「そうだ。彼女をカエルにかえちまうのはどうだろうね」
ずずずっと白湯…お茶をすすってマオさんは言いました。
「カエルに?」
「そう」
「それでどうする」
「一言でいえば、カエルの王子さまの逆をやるのさ」
童話、カエルの王子さまを知っていますか?
知らない人は、目の前にある箱に聞いてください。
それすら嫌だという方の為にあらすじをのべますと、わがままなお姫様の元に、ある日カエルが友達になってほしいといいます。そしてすったもんだの末、カエルにお姫様がキスをすると呪いをかけられていたカエルが王子さまになって、二人は結婚する話です。
だいぶ端折っていたり、小道具が足りなかったりしますが、まぁ大体こんなかんじのお話です。
このお話の場合、わがままお姫様はイヤイヤカエルの友達になって、ついにはキスをするという流れなのですが…
「なるほどね」
ユウさんはマオさんの言いたいことがわかったように言います。
「きっとしゃべるカエルなんて酔狂なもんを囲ってくれるのは、カエル王子だけだろうね」
「そう。それで侍女がほだされればいいじゃないか」
「ほだされるというのは言葉が悪いぞ。マオさん。侍女は王子の内面の美しさに惹かれるんだ」
「あぁそうだろうとも。では、ちょっとまってて」
そう言って立ち上がったマオさんは隣の部屋にいくと、すぐに可愛いコブタをつれて戻って来ました。
コブタは酔狂なことにベビードールのような服を着ていて、頭にはお城に仕えるメイドがつけているようなレースつきのカチューシャをはめています。
「なんだ、お前はいかないのか」
ユウさんが言うと、「一応立場があるからね」とマオさんは言い、コブタをユウさんにもたせました。
「呪いならリュディヴィーヌは得意だからきっと役にたつと思うよ」
「それで?呪いを解く方法はやはり思いの通じ合った相手とのキスか?」
「うーん。カエル王子の恋がかなったら?っていうのは?」
マオさんの言葉にユウさんはいい考えだと頷きます。
「そうだな。それでいいだろう」
そしてすこしばかり意地の悪い笑みを見せます。
「では、リュ…」
「リュディヴィーヌ。ルディでいいよ」
「じゃぁルディを借りていこう」
ユウさんは立ち上がると、「じゃぁまた来る」と言って帰っていきました。
マオさんはユウさんを手をふって見送ると、後片付けを後回しにして畑をポクポク耕す仕事に戻りました。

※マオさん = この世界の魔王様。
 ユウさん = この世界の勇者様。

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