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ゼロの夜想曲 34

「彼女は・・・その、どうかしたのかね?」

オオールド・スマンが困惑したように言う。が、それも致し方ないだろう。
何故なら彼女・・・“ルイズ”は大事(?)な杖を俺に持たせ、両手で自分のほっぺたをぎゅーーーっと左右にひっぱっているからだ。
ルイズのやわらかそうなほっぺたが左右に伸び、彼女の目には涙が潤んでいる。
何故こんなことをしているのか・・・というと、理由は一つ。
そうやっていないと、彼女の顔が一人でににやけてしまうから・・・だ。
「・・・・気にしないでください」
というか、気にしないであげてください。俺の言葉にオールド・オスマンは訝しいような顔をしたがやがては納得してくれたようだった。
「まぁいい・・・でしょう」
いや、考えるのを諦めたのか・・・。
ちなみにこの部屋には、俺とルイズ、そしてオールド・オスマンの他に、昨日、フーケが“宝”とやらを盗んだ現場を目撃していたキュルケとタバサ、そして数名の教師もいる。
つい先ほどまではミス・シュヴールズという女と、ミスタ・ギトーとかいうやつが責任の擦り付け合いをしていた。
それをオールド・オスマンが宥めたところだ。
彼の話によると、盗まれた宝というのは“破壊のピラミッド”と言われるものらしい。
その様子を語れといわれて、キュルケが大きな胸を突き出すようにして説明を始めた。っといっても、至極簡単な説明だ。
突然、巨大なゴーレムが現れ、塔を破壊せしめ宝を奪って逃げた。
たったそれだけ。
塔を破壊したのが半分はルイズの責任だった・・・ということを口にしないのは、巨大な魔力を使ったルイズだということが彼女のプライドに触るのか、それともルイズをかばったのかは分からない。だが、とりあえず、その説明だけで大人たちは納得してくれたようだった。
「・・・あとには土くれしかのこっていませんでしたわ。ゴーレムの肩にローブを羽織った人影が見えたのですが・・・男か女かも不明でした」
「ふむ・・・」
オールド・オスマンは髭を捻るように撫で、厳しい顔を見せしばらく考えていた。が、ふと気付いたように顔を上げると、
「そういえば、ミス・ロングヒルはどこかね?」
っと辺りを見渡した。それに教師たちも口々に、そういえば姿が見えないだの、この非常時に・・だのと声を上げる。っと、そのタイミングを待っていたかのようにバンっと乱暴に扉が開き、ミス・ロングヒル(中庭での決闘でみた女教師だ)が顔を見せた。
「遅れてもうしわけございません。朝から早速調査をしておりましたものですから」
「調査・・・?」
「えぇ、学園の宝物庫がかの大盗賊、土くれのフーケに狙われ、その宝を奪われたというじゃないですか!その調査をしていたのですわ」
「ほぉ・・・さすが、ミス・ロングヒル」
髭をなでるオールド・オスマン。その横にいたミスタ・コルベールが慌てたように「それで・・・・!」と調査結果を促すと、ミス・ロングヒルは真剣な顔でコクリと頷いた。
「えぇ、フーケの居場所がわかりました。」
「な・・・なんと!!!」
「本当かね!!!!」
「えぇ。ゴーレムが向ったと思われる方角・・・そこにある村々に聞き込みをしたところ、森の奥に続く小道をローブ姿の男が走っていくのを見たと・・・・」
「それは・・・・」
「詳しく聞くと、森の奥には随分前に誰もすまなくなった廃墟があるとか・・・・。もしかしたら、そこが彼の隠れ家ではないかと思うのですが・・・・」
「間違いないわね」
キュルケがミス・ロングヒルの言葉に声を上げると、一同の視線が彼女に集まる。
「私やタバサが見たフーケの影も黒いローブを羽織った人物でした。ミス・ロングヒルの目撃した人物が土くれのフーケだと断定して間違いないと思います」
断定的に言う彼女に、オールド・オスマンが頷く。
「なるほど・・・それで、その森の廃墟とやらは此処から近いのか?」
「そう遠くはありません。徒歩で半日・・・馬なら4時間といったところでしょうか」
「今すぐ王都に応援を頼み、追撃隊を編成させましょう!!!」
「バカモノ!!!!!」
ミス・ロングヒルの言葉に勢い込んで言葉を発したのはミスタ・コルベール。そして、その彼を怒鳴りつけたのは、オールド・オスマンだ。温厚な顔だちの彼が一転して怒りに顔を染め、カッと目を見開いてミスタ・コルベールを一喝したのだ。
部屋の中が一瞬シンと静まり返る。
「し・・・しかし・・・・」
「そんな悠長なことをやっとる場合か!!!!そんなことをやっとる間にフーケは何処かへ逃げてしまうわ!それに、此処は貴族の集まる魔法学院だぞ!その宝が盗まれただけでも、恥じだというのに、その尻拭いを自らできないとあっては恥じの上塗りだ!王都になんぞ助けを求められるわけがあるまい!これは我々だけで解決する問題じゃ!」
オールド・オスマンが言い切ると、ミス・ロングヒルはその答えが出るのを待っていたかのように微笑み、他の教師たちは打たれたように息を飲んだ。
「では、これより捜索隊を編成する!我と思うものは杖を上げよ!」
オールド・オスマンは杖を振り上げるようにして叫んだ。
それに、すぐに続き名乗りを上げるかと思われた教師たちは何故か沈黙したまま・・・。
部屋の中にしらけたような空気が流れる。
「どうした!おらんのか!フーケを捕らえ!名を上げんとする貴族はおらんのか!!!」

オールド・オスマンの声がわんわんと響く中、俺はルイズに腕を肘でつつかれた。
ほっぺたを両側で引いているその肘で・・・だ。
視線をルイズに落とすと、目の端に涙を浮かべたルイズが何か言いたそうに俺をじっと見ている。
彼女が何を言いたいのかは・・・大体分かる。しかし・・・と渋い目を送り返すと、彼女はせいいっぱい俺を睨み、また肘で俺をつつく。俺はそれに首を小さく振り・・・・ルイズがそれにまた肘でつつき・・・・・。結局俺が折れた。
自覚はあるのだが・・・どうも俺は女に甘いような気がする。
大きくため息をつき、
「俺が行きましょう」
ルイズの杖を軽く持ち上げて言うと、一同の視線が俺へと集まった。

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