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最後の夜に

普通に創生後…
元のままでは居られない玲治
よみかえさない

玲治の様子がおかしくなったのは高校二年の時だった。
それまでは人当たりが良くて、誰にでも優しくて好かれる性格をしていたのが一転。突然に彼は無口になって愛想がなくなって、人付き合いが悪くなった。
まったく…本当になんの前兆もないまま、ある日突然のことだ。
どうしたのかと聞いても「なんでもない」の一点張り。
何か悩みがあるようなのだが、私達には一言もない。
おかしいな…と新田君と私は二人で話していたのだけれど、彼は親しかった私達すら避けるようになってしまった。
急に変わってしまった彼に、私たちはもちろんクラスメートや担任も戸惑ったようだったけれど、彼はもう昔のように陽気に振る舞うことはなくなってしまった。

 *

卒業間近。
平均的な身長しか持たなかった彼はたくましく上背を伸ばし、また頼りなかった体には相応の肉がついた。
元々小さかった頭と、少し長めの手足も相まってモデルといっても通るほどに見栄えがする。
前のような笑顔は一切見せなくなったが、無表情に引き結ばれた一文字の口と、寄らば切らんとでもいうような鋭い目は一部の女性を強烈に引きつけてやまないらしい。
今もまた、窓に面した席に一人すわりぼんやりと外を見ている玲治を、女の子たちがきゃぁきゃぁと騒ぎ立て、男子生徒の顰蹙をかっている。

「なぁ聞いた?」

唐突に話しかけられて顔を上げると、前の席に新田君が座っていた(ちなみに彼の本当の席は別の場所だ)
トレードマークの帽子…と、少しだけ鼻が赤いのは風邪を引いているからだろうか。
ぐずっと鼻をすすった彼は寒そうに肩をすくめた。
「何を?」
「あいつ、進学しないって」
「あいつって…」
「玲治だよ」
半ば予想はしていたが、それでも驚いてちらっと玲治君の方を見てしまった。
「玲治くんに聞いたの?」
「いや、担任」
そういって苦い顔をした新田君。
彼は玲治君とまた話したい、仲良くしたいって感じだと思うのだけれど…肝心要の相手がその気がゼロなのだ。
可哀想に。
だけど、それは私も同じ。
「…『新田は何か聞いていないか』だって。聞いてるわけねぇっての…」
「そうよね」
「ってことは、千晶も聞いてない?」
「えぇ。というか、私も一緒よ。玲治君とはもうずっと話してないし…」
昔は一緒に帰ったり、遊びに行ったりしたものなのに…。
もう今ではどんな風に話しかけていたのかすらわからなくなっている。
「それで…玲治君、高校を卒業したらどうするって?」
「それがさ、世界旅行だって」
「世界旅行?」
子どもっぽい。
そう思ったけれど、今の玲治君の姿を見ると楽しい世界旅行ではなさそうな気がする。
なんというか…今の玲治君はとても危うい感じがするのだ。
なんだか危険。
触っただけで爆発…って感じではないんだけれど、何を考えているのかわからない。静かにずっと怒っているって感じで怖い。
多分それは私だけじゃなくて、みんなが感じているものだと思う。
悪ぶっている男の子たちも、玲治君にだけはちょっかいをださない。
「よく聞かなかったけれど、調べたいものがあるとか言ってたって」
「ふぅん…調べたいものね」
といっても、それが何かなんて私にはわかろうはずはない。
新田君の情報によると、彼は担任に先ずはアステカあたりに行こうと思っていると話したそうだ。
「金もあるし、父親にも了承をとったって」
「そう…おじさまが」
彼の家は父子家庭だ。
早くに母親を亡くして二人暮らし。
そんな玲治は少々ファザコン気味な所があったのだけれど…。
「なんか本当に変わっちゃったわね」
「…だな」
この一年半で思い知らされてはいたが、改めてつきつけられた気分だ。
なんとなしに私たちの視線は玲治の方に向く。
彼は相変わらず無表情…いや、怒りをこらえているような顔で外を睨んでいたが、やがてふと立ち上がるとふらりと教室から出て行ってしまった。
こちらを一瞥すらしない。
チリっとした胸の痛み。
胸元を軽く押さえ新田君の方を見ると、彼もつらそうに口元を歪めていた。

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