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ゼロの夜想曲 31

説明部分が主
よみかえしてないのです。ごめんなさい。

トリスティンを荒らしまわる大怪盗フーケ。『土くれ』の名を持つフーケは北の貴族の屋敷から宝石がちりばめられたティアラを盗み、南の貴族からは先帝から賜ったという家宝の杖を屋敷を破壊して手に入れ、東の貴族からはアルビオンの細工師が丹精込めて作ったという真珠の指輪を我が物にし、西の貴族からは100年の歳月をかけて熟成されたというヴィンテージワインを頂戴していた。
トリスティンを股にかけるまさに神出鬼没の大怪盗。
フーケの盗み方は大胆にして不敵。人が全く気付かぬうちに目的のものを盗むこともあれば、建物を丸ごと壊して目的物を盗むこともある。時間も昼といわず夜といわず・・・。
しかし、盗み方に関して言えば、一つの共通項目があるといえる。
一つは、盗みに入る場合、それが綿密に計算された上でのものであれ屋敷を丸ごとぶち壊すものにしろ、『錬金』をたくみに使っているという点だ。無論、衛士隊や魔法衛士も馬鹿ではないので、それに対抗するために『固定化』という魔法を使いフーケの錬金によって物質が変容しないようにしている。
しかし、フーケの魔法はそれを軽く上回り、壁や扉といったものをただの土くれへと変容させてしまう。それがフーケの二つ名『土くれ』の由来でもあるのだが、もう一つ。フーケには最大の強みがある。
それは、山ほどの大きさのある巨大な土ゴーレムだ。
フーケの狙ったものを守らんと集ったものたちを蹴散らし、蹂躙する。まったく魔法を使わせる隙すら与えない無敵の土ゴーレムだ。
そんな土くれのフーケだが、その正体は誰もしらない。
人はその姿を遠目にちらりと見ることにしか成功していない。故にそのローブを深くかぶったフーケが男なのか、女なのか、大人なのか、子供なのか、全くわかっていないのだ。
ただわかっているのは、フーケがトライアングルクラスの『土』系統のメイジであること。
そして、『秘蔵の○○、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』といういささか古すぎるサインを残しておくということだ。加えてもう一つ付け加えるとすれば、マジックアイテムといわれる強力な魔力が付加された宝が何よりも好きらしいということだけか。

そのフーケが現在狙っているのが、魔法学院に貯蔵されているというある代物。
それが納められているという宝物庫の壁に手を付き、フーケは忌々しそうに舌打ちををした。
「なるほど・・・簡単にはいきそうにないねぇ」
1メートルほどもあるだろうか。
かなり厚い壁はそれ自体がかなり強固だ。そして、その上に『固定化』の呪文がかかっている。
普通の固定化の魔法ならばどこかに隙があり、そこを上手く突くのだが・・・この場合その隙が見つからない。
「・・・かといって、『破壊のピラミッド』諦めるには惜しいね・・・」
歯噛みしたフーケ。

それを、赤い瞳が見ていた。

「どうかしたの?」
中庭に出た玲治がふと足を止めているのに気付いて問いかける。
視線をたどっていくと、彼がいつも昇っているのだと言っていた赤い屋根。
「なんか見えるの?」
っと目を凝らしてみるが、特に何もない。
あぁ・・・とぼんやり答える玲治はやるきがあるのかないのか・・・と。そうそう。私たちは玲治が魔法の練習に付き合うというので中庭に出てきたというわけ。ま・・・余計なのが二人いるわけなんだけど・・・。
っと後ろを振り返ると、すぐに気付いたキュルケが無駄に大きな胸を反らし、その横でタバサがじっとこちらを見ていた。
本当は帰りなさい!っと怒鳴ってやりたいところなのだけれど、昼間に気を使わせたことを知っているからそれもいえない。でも、これで貸し借り無しなんだから!
「玲治!」
ぼんやりとしている玲治にもう一度声をかけると、今度こそ彼はこちらを振り返った。
相変わらずのフード姿だから彼の表情はイマイチつかめない。これだったら街で新しい服でも仕立てるんだったと思ったけれど、彼のあやしげな風体に似合うような服が果たしてあるかどうか。ま、今はそれよりも。
「さっさと始めましょう!」
杖をぶんぶんと振りながらいうと、玲治が苦笑した。
「打撃技を練習するわけじゃないんだが」
「わ・・・わかってるわよ!」
「まぁ・・・やる気があるのはいいことだな。まずは何かやってみせてくれ・・・。的はそうだな・・・俺でいい」
「お・・・俺でって・・・!」
驚く私に的は自分だともう一度玲治は言った。
「大丈夫だ。死にはしない。俺はこれでも丈夫に出来てるんだ」
「そ・・・そういう問題じゃないでしょう!」
「俺が目標だとやりづらいか?」
「あたりまえよ!攻撃魔法を人に向けて放つなんて・・・!出来るわけがないじゃない!」
そんなの、教えられるまでもなくダメに決まっている。火の魔法だったら火傷、風だったら切り裂く、水は溺れさせることだってできるし、土なら足元を崩して怪我をさせることになる。
それに、私に限ってはもっと危険なことだってありうる。
そんなこと教室での失敗で知っているはずなのに。
「大丈夫だ。」
「出来ないわよ!」
「出来るさ。魔法なんて人を傷つけるためのものだろう?」
「そ・・・それは・・・・!」
反論・・・出来ない。確かに土の魔法や水の魔法は応用によって人の役にたつものも多くある。しかし、基本的に魔法とは攻撃を主に研究されてきた分野だ。古来、戦争が起きるたびに一番の戦力として重宝されたのがメイジ・・・つまり魔法を納めるものたちだ。魔法を使いうる・・・ということは、つまり、人を殺しうる力を持つということに他ならない。
唇を噛み締めるだけで何も言い返すことが出来ない私をじっと見ていた玲治はふいに視線を転じ(おそらく私と玲治のいいあいをニヤニヤしながら見ていた)キュルケを見て口を開いた。
「キュルケ、悪いが見本を見せてくれないか?」
「み・・・見本!見本って・・・まさかダーリンに攻撃しろってこと?!」
ダーリンって誰の事よ!っと思ったが、玲治は平然と「そうだ」と答えた。
「そ・・・そうって!まともに当たったら火傷しちゃうわよ」
「大丈夫だ」
呆れたようにため息をつく玲治。
「さっきも言ったが、俺は丈夫に出来ている。」
「本当にいいの?」
「しつこい」
それでもパクパクと何か言いたそうにしていたキュルケだが、これ以上とやかく言っては玲治に嫌われるとでも思ったのかもしれない。不満そうな顔をしながらも頷き、杖を取り出すと小さくルーンを呟いた。私は止めようかどうか迷ったが、すでにそのタイミングを逸し、両手を胸のあたりでぎゅっと握り締めるしか出来なかった。
杖が鈍く光り、ブンッと杖を振ると同時にその先端からメロンほどの大きさの火の弾が現れ玲治に向っていく。
そして、それは玲治の胸のあたりにぶつかり彼の半身が一瞬真っ赤な炎に包まれた。
「・・・玲治!!!!」
恐怖が背中から駆け上り冷たい汗が噴出す。駆け寄ろうとした私の腕をキュルケが掴み引き止める。
「離してよ!玲治が・・・!」
っと振り返ると、キュルケが青い顔で首を横に振っている。
「そんな・・・」
キュルケのファイアボールはすでに熟練の域に達している。その紅蓮に燃える炎と、その炎の内包している熱は相当なものだ。それに対し玲治は生身。ローブではなんの防御にもならない。
ギーシュとの決闘で彼の強さは分かったが・・・あれをまともに受けていては・・・。
とめていればよかったと最悪の事態を想定して後悔に襲われる。
その時、
「あっ」
普段無口でとても物静かなタバサが驚いたような声を上げる。彼女はこれ以上ないというほど目を大きく見開き何かを見ている。
私とキュルケは彼女の視線を辿り、そしてアッと声を上げた。
パンパンッとローブの裾を叩く玲治。
全く無傷の彼は私たちの視線に気付くと顔をこちらに向け、それから私たちの顔を見比べ、
「何かあるのか?」
後ろを振り返った。

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