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ゼロの夜想曲 27

ルイズ・キュルケと合流して入ったトリスティンの城下町(というらしい)はこじんまりとしていた。
道幅は5メートルほどで車(もちろん此処にはないが)がすれ違うのせいいっぱい・・・いや、軒先に物が溢れている場所も多数あるので、一方通行が精一杯といったところか。
生活につかれた・・・とまではいかないが、ちょっとみすぼらしいような格好をした人々が目立つ。
石畳の町、高い建物でも3階建て程度。東京にあるビルのようなものは一切なく、レンガ造りや土壁、三角屋根の建物ばかりが軒を連ねている。
店屋の前には看板が立てられており、その図柄で何を扱っている店なのかが分かる仕組み。
ワイングラスとビンを掘り込んであるものは酒場で、糸を巻いた筒と針は手芸店、同様に魚をかたどったものは魚屋で葉っぱとフラスコを描いた店は薬草でも扱っているのだろうか?
真っ赤に熟したリンゴが山のように詰まれていたり、レモンがすっぱい臭いを運んできていたり・・・2階の窓からまだ若い女の子たちが興味深そうにこちらを見ていたり、店の脇で小さな子供がメンコに似たような遊びをしていたりする。
まるで、昔、人間だったころによくやったRPGの世界に飛び込んできたような錯覚を覚え、興味深くきょろきょろと見渡していると、ルイズが田舎物に見られて恥ずかしいといったのでなるべく前だけを見るようにした。

「この街はね、ブルドンネ街っていうの。トリステインで一番大きな通りよ。」
自慢げにルイズが無い胸を張る。
「これで一番か?」
「そうよ。賑わってるでしょう?」
「賑わってはいるが・・・」
東京の街で育った俺にとっては・・・片田舎。村といってもいいような街だ。
渋い声を出す俺には気づかずに、
「この先にはトリステインの宮殿があるのよ」
と教えてくれた。
「そこにいくのか?」
「女王陛下に拝謁してどうするのよ」
「女王が治めているのか」
なんとなくヴィクトリア女王や、エカチェリーナなんかを思い浮かべてしまう。きっとごうつく張りのばーさんに違いない。真白な髪を結い上げて、真っ赤なドレスを着ている。けばけばしい化粧をして臭いばーさんだろうと勝手に決めつめる。
っと、「つまらない話はその辺にして~」とキュルケが腕にまとわりついて、帰りにはケーキを食べていこうと甘えたような声で言う。その際俺の腕に胸を押し付けるのを忘れない。流石は夜魔見習いだ。
なんでもストロベリー・ブルーベリー・クランベリー・ラズベリーなどのベリー系の果物をふんだんに使ったタルトが今大人気なんだそうだ。そういえば・・・"彼女"もそういったものが好きだった・・・っと思い出したとき、俺に捕まっているキュルケの横を通り過ぎようとした男の手がすばやく動いたのが眼に入った。

“スリ”思考がそう判断する前に俺はキュルケの腕をすり抜け、男に足払いをかけうつぶせに押し倒していた。

「うわっ」という男の悲鳴を黙殺し、両手を左手一本で纏め上げると、腰の辺りに膝で体重をかけて逃がさないように押さえつける。
右手で彼のボディチェックを行い、2本のナイフとコインが入っているらしい麻袋を回収。
「何か縛るものを」という言葉に最初に反応したのは、青い髪の少女タバサで道端においてあった藁を積んだ荷馬車の傍にあった2本の細いロープを持ってきた。
1本は短かったので、男の親指同士をきつく後ろ手に結び付け、もう一本で男の両足首を縛り上げる。
我ながらなかなかの手際だった。男はうつぶせになったまま「一体なんなんだ!」「俺は名にしてねぇぞ!」と騒ぎ立てる。
その男を放って立ち上がると、麻袋を手の平でひっくり返す。
中には古い指輪が1つと、銅貨が3枚、銀貨が1枚がはいっていた。価値はわからないが、おそらくはした金だろう。中身は回収。袋は捨てる。
男がぎゅんぎゃん言っているのをうるさいと見ていると、タバサがブツブツと何かを呟いて魔法をかけ男を静かにさせた。(おそらくクローズ系の魔法だろう)
あうんの呼吸で事を成し遂げタバサと眼をあわせたとき、ようやく事態に追いついたらしいルイズが「何してるの!」と声を上げた。
「突然、人を押し倒して・・あんた何してるのよ!」
非難するルイズに俺は冷静に告げる。
「こいつはスリだ」
「スリ?!」
「あぁ、キュルケの財布をすろうとしていたぞ」
俺の言葉に驚いたような顔をするキュルケ、胸元を押さえてそこに入れていたらしい財布を確認する。
盗まれてこそいなかったが、眉をひょいと上げたところを見るとおかしな点があったのかもしれない。
「本当なの?」
「あぁ」
「・・・・確かに、此処はスリが多いことでも有名だけど・・・武器を奪うのはいいとしても、財布を奪ったのはやりすぎじゃないの?」
ルイズの言葉に俺はたぶんかなり微妙な顔をしたのだろう、ひるんだような顔で「何よ」とルイズが問い返す。
「・・・スリを相手に同情してどうするんだ?バカらしい。スル相手を選ばなかったこいつが悪い。命をとられなかったことを感謝されこそすれ、非難されるのはお門違いだ。此処がこの世界ではなく、俺がいた世界ならば間違いなく命をとられているところだ」
あの世界では、確実にしとめなければ寝首を掻かれていた。
至極まっとうなことを言ったつもりだ。
しかし、それでもルイズはそれを素直には認めたくもなかったのだろう。「それでも・・・」と口を開きかけたルイズに叩きつけるように
「お前にとやかく言われる筋合いは無い」
と吐き捨てた。口にした途端、少し言い過ぎたとは思ったが口に出してしまったものはもう取り戻せない。
ルイズはショックを受けたように眼を見開き、それから下唇を噛んでうつむいた。
キュルケが気の毒そうに彼女を見、
「仕方ないわよ、スリだったんだから。」
「貴族に手を出そうとしたんだからあれくらい当たり前よ」
「平民にはちょっと高い授業料だったっていうだけよ」
とフォローを入れる。
しかし、キュルケのその言葉は彼女を傷つけることでしかなかったようだ。
「うるさい!さっさと行くわよ!」
っと彼女の手を振り払って歩き出した。
タバサは黙ってそのルイズに続き、キュルケは困ったものねっというように肩をすくめてタバサを追い、俺はため息をついてキュルケの背中に続いた。

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