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041 まだまだ先は長く

セシルがローザと結婚して王に即位ってあまりにも唐突すぎる気がするんで、他のエンディングを考察する話。
オリキャラ(モブ)出てくるんで、苦手な人は読まないように。
主役はローザ セシロザじゃない。 悲恋かな

あの…世界、いや星を巻き込んだ大きな戦いが終わって1年がたとうとしている。
エッジはエブラーナで王位につき、リディアは幻獣界へと向かい…仲間たちはそれぞれの場所で頑張っているようだ。
バロンもまたまだまだ復興には長い時間がかかるだろうが、少しずつ落ち着きを取り戻している。
カインは青竜騎士の団長から竜騎士の総括へ出世し、パラディンとなったセシルは新設の聖騎士団と古巣の暗黒騎士団を率い、彼ら二人は戦いで大幅に人員を減らしてしまった兵士たちの指導に当たっている。
そして彼女…ローザは戦いのあと傷ついた民たちの世話をしていたが、そのひとつの区切りがついた今、とある結婚話が持ち上がっていた。

 *

ローザは城壁にもたれ、バロンの街並みを見下ろしていた。
彼女は憂いたっぷりのため息をはくと、ふと見えた兵士に目をやった。
城壁に立つ兵士…。おそらく新人だろうが、彼女はそれに自分の思う人を重ねてため息をついた。
彼女の思う人…それは言わずもがなではあるが、セシル=ハーヴィである。
バロンの懐刀、誰もが恐れる冷酷非道の暗黒騎士が長を務め、ミシディアにおいてはその残虐さを存分に発揮した男。
しかし、後にそれを悔い改め、パラディンとなって世界が敵を討った勇士が一人だ。
彼がいたからこそ、危機を脱することができたといっても過言ではないが、バロンやその他の国の彼に対する感情は複雑だ。
ローザは気にしなかったが、戦いが終わって少しして…彼から距離を置きたいと言われてしまった。
ローザは傷ついた、絶望に目の前が真っ暗になった。だが、それでも彼女は諦めなかった。
セシル=ハーヴィは悪い噂はあっても、今は勇者なのだ。世界を救ったのだ。
ほとぼりがさめれば…きっとまた…そう、思いをつないでいたのに…。

「ローザ様」

ハッと振り返るとそこにはセシル…ではなく、彼女の婚約者となっている男の姿があった。
彼は、今は亡きベイガンの息子だ。
あの戦いで、ベイガンはいつの間にか悪魔と擦り変わっていた。そしてすり替えられたベイガン自身は誰にも知らずに死んでいる。
だが巷では、最後まで悪魔に抵抗し、我が身を巣食う悪魔に身を乗っ取られる前に悪魔を道連れに自決した…というような美談になっている。
そのベイガンは薄くではあるが、バロン王家の血を引いた大貴族だ。
元々バロン王にはこれといった後継者がいなかったことから、ベイガンの息子であるアルベールが次期国王として急浮上。その王妃にとローザは望まれていた。
ローザの家、ファレル家もまた大貴族。しかも世界を救った勇者の一人だ。
バロン王家の血をひき…また悲劇の騎士であるベイガンの息子でアルベールと、ファレル家の一粒種で、しかも勇者であるローザの結婚。
バロンを背負って立つ、若き王とその后…それは国民に希望を与えるものだ。
だが…

「ごめんなさい」

アルベールの姿を見た途端、わかっていたはずなのにセシルではないことに落胆してしまったローザは泣きそうな顔をした。
アルベールは何も悪くはない。
彼だって突然王に祀り上げられ、他に好いた女もいただろうに、ローザを押し付けられようとしている被害者だ。
「やはり決心はつきませんか」
「……」
ローザが何も言わずに目を伏せると、若き日のベイガンにそっくりだと言われるアルベールは悲しそうに微笑んだ。
「やはり、彼が忘れられないのですね」
「すみません…」
「いいんです…」
当たり前のことですから。
アルベールはそういってローザに並んだ。
ローザはアルベールの横顔にベイガンの面影を見つけ、目を細める。
「本当は…わかっているんです…。私だってファレル家の人間ですもの。結婚がどういうものかくらいわかっています」
貴族の娘の結婚がどういうものかくらい知っている。
「私が子供じみたわがままを言っているのはわかっているんです」
だけど…そんなものをすべて無視して彼女は情熱的に彼を愛した。それこそすべてを捨て、命をかけて…。
母や家のものに大反対されながら…ただの孤児でしかなかった…そして人に忌まれる暗黒騎士になった男を…。
その時の情熱が冷めたということはない。
今も愛している。
だけどセシルは彼女に距離を置きたいと告げてからは、彼女と一線を引いてしまった。
そして婚約の話が出た時、「僕は祝福するよ」とまで言ったのだ。
微笑んで。
その時の瞳には、とても強い決意が宿っていた。
「彼は…貴女を愛していると思いますよ」
「…かもしれません。ですが、彼は私よりもバロンをとったんです。私と彼が一緒になっても…何の利益もないんです。それよりも、ファレル家の娘であり世界を救った勇者…という私の価値を重んじた」
そしてそれが正しいとローザは知っている。
バロンは疲弊している。国民も疲弊している。なにしろすべての元凶はバロンとまで言われているのだ。
その中で、少しでも国民に希望を、明るい話題を…と願うのは当たり前のことだ。
二人が一緒になれば、きっとバロンの人々は一丸となって未来を見てくれる。
「アルベール様はどう思っているのですか?」
ローザが聞くと、アルベールは「そうですね…」と小さくつぶやいた。
「正直にいって…迷っています」
「迷っている?それは王位につくことをですか?」
「いや、そうではない。そちらについては…腹をくくりました。だけど、貴女を王妃に迎えることについては悩んでいます。貴女はファレル家のご息女で、また勇者の一人。王妃となるには貴女以上にふさわしい人はいないだろうと思っています。だけど、それは貴女の意思を無視してまですすめるべきかどうか…」
「優しいのね…。貴方の父上なら、断行していたでしょうに」
「そうですね。だから優しいのではなく“甘い”のでしょう」
父にもよく言われたと苦笑するアルベール。
確かに甘いのかもしれない。だがやはり“優しい”のだとローザは思った。
彼は良い人だ。とても。
きっと彼は王としても夫としても申し分ない人になるだろう。
少し線の細いところがあるようにも見受けられるが、大きな戦いのあとだ。彼くらいの人がちょうどいいだろう。
「煮え切らなくて…ごめんなさい」
「それはこちらのセリフですよ」
微笑むアルベールにほのかな笑みを返し、ローザはハッと何かに気づいたように空を見上げた。
つられるようにアルベールも空を見上げ…
「竜ですね」
そこに編隊を組んで飛ぶ竜を見つけ、目を細めた。
「カイン…ではないわよね」
「そうですね。彼は近頃竜に乗る暇もないほど忙しく駆けまわっておられますから」
仕える部下に対しての堅い口調は癖ではあるのだろうが、ローザはそれを好ましく思った。
本当に良い人だ。
……愛することはできないだろうが。
彼女はしばらく空を見つめ、やがて「もう少し待ってください」と口にした。
そしてアルベールをまっすぐに見つめて言った。
「私、諦めの悪い女ですの。だから…彼にはっきりとピリオドを打ってもらってきます」
驚くアルベールに彼女は晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「きっと後悔するでしょう。でも、どちらに転んでもきっと後悔をするなら…私は最善をとりたいと思います」
そしてほんの少しの寂しさをにじませる。
アルベールは彼女の本心を慮って、胸を痛めるが…同情の言葉を口にすることは出来なかった。
同情は彼女への侮辱だ。
アルベールはただ「待っています」といって微笑み、また空を見上げた。
竜はいつのまにかずいぶん高くに昇っている。
「がんばりましょう」
アルベールがぽつりとつぶやくと、はいとローザが返事をした。

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