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背中あわせ、だから見つめ合えない。

注意:捏造スコットランド

BGMは女性ボサノバ歌手の歌うジャズ。
これがなかなかにいい。
小粋なリズムに伸びやかなアルトサックス、甘い歌声。
時折ノイズが入るのは、これが古い蓄音機で再生されているからだが…これがまたいい隠し味になっている。
俺は鼻唄でメロディをなぞりながら野菜をザクザクと大胆に切り、大きなチキンが沈んだ大鍋にいれる。
これから半日かけてゆっくりコトコトと煮込み、万能スープをこしらえるのだ。
これはそのまま飲むのもいいが、冷やしてとっておくといろんな料理に使える。
俺は簡単に後片付けをし、最後に忘れていたとガーリックを放り込んで火の調整をした。

リビングに戻ると安楽椅子にスコットランドが座っていて、“小さい”イギリスは彼の足元で丸くなって眠っていた。
イギリスは泣いたのだろう。閉じられた目から頬にかけて濡れたあとがあった。
「少しくらい優しくしてやったってばちはあたらないぜ」
俺はイギリスを抱えあげると、ソファに寝かせ膝掛けを毛布代わりに被せてやった。
小さいイギリス。
なぜこうなったかといえば、例の「ほわた☆」だ。
アメリカを小さくするはずが、鏡によって遮られ、ついでに魔法(?)が跳ね返ったらしい。
アメリカは笑いながら俺の家にイギリスを連れてきて、俺にイギリスを渡すとさっさと帰ってしまった。
精神年齢まで退行してしまったらしいイギリスは“兄”スコットランドを求めて泣き出し…俺は彼を家に招待したというわけだ。
だけどその身内は、イギリスを見た途端ムスッとして…もうずっとしゃべっていない。もちろん泣いているイギリスを抱き上げることもしなかった。
全く…彼はイギリスの兄だけあって、イギリスよりも更に意地っ張りだ。
スコットランドにも、プロイセンのドイツに対するような愛情表現が少しでも出来れば…彼とイギリスの関係は随分と変わっていたに違いない。
それに、昔はどうであれ…今はもう、それほど関係が悪いわけでもないのだから、もう少し優しくしてやってもいいのに。
「一応、一週間もあれば勝手に元に戻るってさ」
返事はない。が、スコットランドの視線がこちらに向いた。
「それでね、俺、家にはいるんだけどちょっと立て込んでるんだよ」
「…そうは見えない」
「今はね」
肩をすくめて見せる。
「でも明日一番に大量の書類が届く予定でね、はっきりいってイギリスの面倒を見ている時間なんかないんだよね」
ほら、今EUが大変なのはお前も知ってるでしょ?というと、ユーロを導入していない彼はフンっとバカにしたように鼻を鳴らした。
「少しでも書類が遅れるとドイツがうるさいんだよ。あいつ、頭にクソがつく真面目ぶりだからね」
だから…言いかけた俺に「悪いが」とスコットランドは言葉を重ねた。
「他を当たれ。俺はコイツの面倒は見ない」
「そんな事言わずに。可愛い弟だろう?」
「お前は…俺がコイツに何をしてきたか知ってていっているのか?」
今では児童虐待で訴えられるところだと自嘲する男の所業は…確かに褒められたものではなかった。(とはいえ、時代が時代であったから、その頃の子どもは多かれ少なかれ親に“そういう”しつけをされていたのだが)
「殴って、蹴って、打って、真冬に放り出したこともあったな」
「でも、憎らしかっただけじゃないだろ?」
「憎かったさ」
「それだけじゃないだろ?」
彼の仕打ちはけっして一定のラインは越えなかった。
素っ裸で真冬の海に放り込むなんてことはしなかったし、焼けた火掻き棒を体に押し付けることもしない。馬車で引きずることも、変態趣味の豚野郎に売り付けることもしなかった。
もちろんそれをやれば、俺たちは黙っていなかっただろうが…本当に憎らしく思っているだけなら、彼にやってやれないことはなかったはずだ。
だが、彼はそれをしなかった。
彼は…確かにイギリスをいじめてた。嫌っていた。憎んでいた。しかし、
「それだけじゃないはずだ」
俺が断言すると、スコットランドは忌々しげに舌打ちをした。
俺は彼の横顔を見つめ、席を立った。



キッチンに戻りスープをかき回していた俺は、いつのまにか気に入りのBGMが終わっているのに気づいた。
いつ切れたのだろう。

スコットランドがイギリスに抱いている思い。
それが憎しみだけでないことは、イギリスに振るわれる彼の暴力が一定のラインを越えないからってだけじゃない。
あれでスコットランドは面倒見がよかったりもするのだ(といっても、それはイギリスがとことんスコットランドになついてたからってのもあるんだが…)。
なにしろ彼らは一緒に暮らしていたのだ。
ごく一般的な住居にふたりだけで。
もちろんスコットランドは最低限の面倒しかみていないようだったが、それでもベッドを与え、本を与え、食事を与えていたのだ。
それに…ごく、ごく稀にではあるが、イギリスに笑いかけ、優しくしてやっていたことだってあるのだ。
本当にごく稀なことではあるが…。
その時の光景を思い出すと…

「まったくね」

泥沼に嵌りそうだ。
俺は頭を振り、キッチンを出た。

 *

リビングに戻ると、スコットランドは小さいイギリスの眠るソファの前に立っていた。
両脇に降ろされた彼の手はぎゅっと強く拳を握っている。
俺は何をする気かと一瞬緊張したが…彼の握られた手はすぐに解かれ、そして腰を屈めたかと思うと…眠ったままの小さいイギリスの体を慈しむようにそっと抱き上げた。

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