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毒杯をかかげて 02

読み返さない

遅れてやってくると言っていた二人は、結局その日は姿を見せなかった。
二人の分まで考えて夕食を作っていたフランシスは文句を言っていたが、俺とフェリシアーノは内心ほっとしていた。
たとえ今回はストッパーがついていようが、やはりギルベルトが恐ろしい男であることには変わりないし、出来れば会いたくはない。
事故ってればいいのに。
言葉には出さないが、弟も同じ気持ちだと思う。

 *

翌日、弟に起こされた俺は、玄関口に見知らぬ男がいるのに気づいて大いにビビった。
「な、なんだよてめぇ!!!」
半身を起こして声を上げると、その男は眉間に皺を寄せた。
「お前誰だよ!!」
「はぁ…お前も裸か。服を着ろ、服を」
「寝るときは裸って決まってんだよ!コノヤロウ!大体、なんでてめぇにそんなこと言われなきゃいけねぇんだ!」
噛み付く俺。
「兄ちゃん!」
慌てたように弟が割って入り、俺に彼が“ルートヴィヒ”だと教えてくれた。
「こいつが?」
ギルベルトが溺愛している弟で、唯一にして最強のストッパー?
「そう、でも、なんかいいやつだよ」
へらっと笑うバカ弟。
改めてそのルートヴィヒという男を見ると…浮かべている表情が全く違うから別人に見えるが、顔の造形自体はギルベルトに似ているような気がする。
背もギルベルトと同じか少し高いくらいだし…でも、どう見ても弟が言うように『いいやつ』には見えない。
ギルベルトが頭がプッツンしているチンピラだが、こっちはマフィアの用心棒って感じだ。
ギルベルトは傷めつけるのを楽しみにしているようなやつだが、こいつの場合は一発で鼻とか顎とかの骨をおって沈めちゃうタイプ。
どっちにしろ恐ろしい。
そう言う俺に、弟は「でもいいやつだよ」と言った。
「朝食ができてるからおいでって、わざわざ迎えにきてくれたんだー」
「あぁ、早くしてくれ…まぁお前らがふたりだけで来るって言うなら別だが…」
二人で行くことの何が問題なのか、何故お前に恩着せられてまで待ってもらわなきゃいけないんだ…と考え、ギルベルトのことだとすぐに思い至る。
確かにふたりだけでギルベルトも待っているであろうフランシスの部屋に行くのは勇気がいる。
「…すぐに着替える」
ものすごく不本意だが、彼に一緒についてきてもらったほうが絶対にいいだろう。

 *

短い間に何があったのかは知らないが、バカ弟はルートヴィヒのことを「ルート、ルート」と呼んで慕っているようだ。子犬のように彼にまとわりついて、ルートヴィヒの肩のあたりにゴスゴスと頭突きをするバカ弟。
着替えながら俺はいつ殴られるかと気が気ではなかったが、彼は最後までバカ弟に暴力を振るうことはなく、それどこか弟が結べないといった靴の紐を結んでやっていた。
なんなんだあいつは。
よっぽどのお人好しか…いや!
ムキムキ野郎め、単純な弟をたぶらかしやがって…!
俺はだまされないぞ!と睨みつけると、ルートヴィヒは不思議そうに首をかしげた。

 *

長屋になっているモーテル。
フランシスの部屋はすぐ隣で、部屋に入ると良い匂いが鼻をくすぐった。
「朝からは簡単に済ませるつもりだったんだけどね」
フランシスはそう言いながら、昨夜彼らの腹に入りそこねた料理をテーブルの上に並べ立てている。
サラダにスープを始め、パンに肉料理、そしてデザート。
当然ワインもチーズもついている。
モーテル備え付けの粗末なキッチンでよくもここまで作ったものだと思う。
「しっかり食ってもらうからな~」
フランシスから目を離すと、彼を不機嫌そうに睨みつけるギルベルトがいた。彼はカツカツとフォークでテーブルを叩いていたが、俺たちが入ってきたのに気づくとコチラを見てニヤリと口角を上げた。
その瞬間、背中の産毛がぞわりと逆立つ。
「よぉ、久しぶりだな」
そういうギルベルトに俺とバカ弟は咄嗟にルートヴィヒの背中に隠れた。
するとケセセセセっと特徴的な笑いが聞こえてきた。
心臓がバクバク言っている。
「兄さん、脅かすのはやめてくれ」
「別に、ちょっとからかっただけだろう?」
「ではからかうのも禁止だ」
「ちぇっちぇー、ったくルッツは真面目なんだからなぁ~」
「はいはい」
二人の“和やかな”会話をルートヴィヒの背中越しに聞きながら、俺とバカ弟は思わず顔を見合わせていた。
もう…なんと言っていいかわからなかった。
彼が機嫌が良さげだとか、意見されて怒らないとか、素直にそれを聞いているとか、あのメロッメロの笑顔とか…うわぁ…。
「どうした?さ、席につこう」
そして、遠ざかった背中の向こうに俺とバカ弟は、機嫌良さそうに鼻歌を歌いながらサラダに手を伸ばすギルベルトを見て、あやうく卒倒しかけた。

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