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天秤は揺れない

思いは通じた。
しかし…

「俺は王女様であるあんただから惚れたんだ。」

「そうね。私も空賊であるあなただからこそ、好きになったのかもしれないわ」

彼らは長く一緒にいることはできない。
そもそもそれを欲していない。
彼女は王女であることを望み、彼もまたそうあることを望んだ。
彼も空以外に生きる道を知らず、そうである彼を彼女は愛した。
気持ちは同じ。
だが同じだからこそ、共に在ることの出来ない二人。
一緒に在ることができるのはせいぜい半日がいいところ。
それは愛し愛される恋人同士にとっては悲しいことかもしれない。辛く苦しいことかもしれない。
だが二人にそんな悲壮感は一切無く、顔は意外なほどにスッキリとしていた。

「次は春になると思う」
「わかったわ。期待はしないで待っている。」
「浮気は無しだぜ。王女様」
「それはこちらの台詞よ。でも、そう言ってもあなたは守らないでしょうけど。」
「娼館くらい許せよ。」
「では、あなたは私が情人を抱えてもいいの?」
「娼婦と情人はちがうだろう」
「そうかもね。でも体を繋げるのには代わりないわ」
「俺にマスをかけってのか…」
「なに?」
「なんでも…」
「ちゃんとフランにも聞くわよ」
「おっかないね」
「おみやげも頼むわ。盗品でないものをね」
「欲張りなお姫さんだ。」

二人は笑顔を交わし、バルフレアは手を伸ばしてアーシェの頬に触れた。
アーシェがいとおしげに目を細めて顔を上げると、バルフレアはごく自然に彼女の唇に自分のそれを重ねた。

「時間だ。」
「そう。」
「恋人が行くっていうのにつれないな」
「泣いてすがって欲しい?」
「……いや、そうだな。それは勘弁してくれ。」

二人は抱き合い小さなキスを何度も繰り返した後、そっと距離をとった。

「行くのね」
「あぁ。」
「・・・あ、ねぇそうだ。私、欲しいものがあるの」
「土産のリクエストか?」
「そうじゃなくて・・・。ううん、いいわ。次にあなたが此処に来たときに言うわ。」
「…わかった。」

「じゃあな。」

男は軽く手を上げて言う。

「気をつけて」

女は笑顔で言い、二人は数秒を見つめあって同時に背を向けた。


アーシェは一人になった寝室のベッドに腰かけるとぼんやりと壁を見つめ、先程、男との別れ際の会話を思い出して小さく笑う。
そして、
「きっと、あなたは驚くでしょうね。それとも笑うかしら?」
彼女は右手をぺたんこのお腹にあて、くつくつと肩を震わせてしばらく笑い続けた。

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