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紅蓮灰雨 02

人間誰しもそうだが、生きるためには金が必要で、たった一人の俺が金を稼ぐ一番手っ取り早い方法が傭兵になることだった。

 *

俺が初めて戦場に立ったのは15の時だった。
初めて死にかけたのもこの時で、初めて人を殺したのもこの時だった。

俺は傭兵団に所属し、いくつもの戦場を渡った。
無論最初は危ない事が何度もあった。
俺よりも強い奴らに上前をはねられることだってあった。
しかし…俺には学はなかったが、剣に関しては天賦の才能ってやつがあったらしい。
俺はメキメキと腕を上げ…そして気づけば、俺はその傭兵団の幹部にまで上り詰めた。
金に困らなくなると、俺が戦場に立つ理由が変わった。
強くなりたい。
誰よりも強くなりたい。
強い奴と戦いたい。
強い奴を殺したい。
所属していた傭兵団を抜けたのはこの頃だ。
敵方にスカウトされ、傭兵団を辞め、その翌日に所属していた傭兵団を殲滅させた。
そして俺は一人の傭兵になり、一人で戦場を闊歩するようになった。
敵対する兵士、傭兵、騎士はもちろん、そいつらに言い様に使われていた奴隷や落とす事になっていた城にいた非戦闘員の老若男女…本当に数えきれない程に殺してきた。
戦場にいる時、俺は強烈に『生』というものを感じられた。
俺はきっと戦場でしか生きられない。戦場を走り抜けるために生まれたのだ。
黒刃のアドニス…そう呼ばれだしたのはこの頃からだと思う。
そうして日々戦いを求め歩いていた俺に次の変化が起こったのもこの頃だ。
きっかけはとある女が死んだ事。
娼婦の女だった。入れ込んでいたわけではないが、それなりに気に入っていた女だった。
その女あがある日、街で惨たらしく殺された。
別に、それだけの話だった。
確かに気に入ってはいたが、執着はなかった。殺されたと聞いても「そうか」という程度の感想しか抱けなかった。
死んだ女を見ても同じだっただろう。
俺は黙って通り過ぎたか、さもなきゃ真っすぐ歩いて臓腑を踏みつけていたはずだ。
だから何故それがきっかけになったのかはわからない。
今でもわからない。
だが、その日から俺にはシャイターンがとり憑いたのだ。
金から力…そして死への戦いの目的が変わった。

殺す、殺せ、殺してくれ、殺してみせろ

俺の死に場所は何処だ。
俺の墓標は何処だ。
俺を殺すのは誰だ。
俺を殺すに値する者は誰だ。

ただでは殺されてやらない。
この俺を殺しうる相手。
この俺を満足させうる相手。
最高の敵手。

探して…探して…探して…そしてそれは叶ったはずだった。
なのに…気がつけば俺はまた重い体を引きずっている。
俺の肩に手を置きシャイターンが笑う。
英霊となり、オーディンと戦い、それでもまだダメだというのか。

平和になった世界。
戦場は数少なく、そのどれもがごく小さい。
俺はこのまま朽ちるのか。

 *

剣を地につきたて柄に額を置いた。

頭がグラグラするのは、三日間何も食わず、飲まず、眠らず戦い続けていたからだろう。
周りには無数の魔物たちの亡骸がある。
懐かしい血と死の匂い。
しかしそれも今はただ虚しい。
もう限界なのかもしれない。
俺はこんな風に朽ちるのか…。
もう俺を殺しうる相手が居ない。
俺を満足させることのできる相手が居ない。
俺には消耗し、死んでいくしか道が残されていない。

シャイターンが笑う。

馬鹿みたいにでかい声で笑う。
ざまぁみろと笑う。
俺には何も与えたやらないと、お前ののぞみは何ひとつ叶うことはないと笑う。

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