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コーラルグリーン

続き 読み返してない。

魔術書の目録を作っていると、フィレス様…俺の養い親でもある王妃がやって来た。
王妃でありながら自由奔放な所のある彼女は、供を一人もつれていない。
そして俺に向かって片手を上げ、「や、セルヴィア」なんてまるで男みたいな口を利くのだ。
「どーぉ?進んでる?」
「えぇお陰さまで。と、言いたいところですが魔術の研究もありますからね。なかなか…」
「もう、そうじゃなくって!アルムちゃんの事よ」
アルム…ちゃん…。
彼女だけに許された…というか、彼女以外には口にする事の出来ないアルム様の愛称だ。
一度俺が呼んでみようかとしたときには、その空気を感じ取ったのか、鋭く勘を働かせたアルム様に焼き殺されそうになったっけ…。
「あぁ…そっちでしたか」
その彼女は、俺がアルム様に執心しているのを知っている。
だから時々こうやって話を聞きに来るのだ。
まぁ応援してくれているというよりは、面白がっているのだろうが…。
「で?この間はお菓子作って上げたんでしょ?」
「はい…でも燃やされちゃいました」
「あらあらあら」
せっかく何度も何度も試行錯誤を重ねて、あらゆる素材を練り込めたというのに…
「アルム様ったら“なんでクッキーから緑色の炎が出るんだ!俺を殺す気か!”なんて言うんですよ」
「緑の…?」
若干、フィレス様の顔がひきつったように見えるが…きっと俺に同情してくれているんだろう。
「本当にひどいですよね」
「えっと…まぁそうね…」
「“お前は今後一切料理は作るな”って…俺の料理って悪くないですよね?」
「えっと…そうね」
フィレス様には何度か手料理を振る舞ったことがある。アルム様に振る舞ったものに比べれば、完全な“手抜き”料理だが。
フィレス様は気の毒な俺にかける言葉がないようだ。
「えっと、えー…、あっそうだ。“竜の日”にはアルムちゃんを助けてあげたんでしょ?」
「あ、はい。よくご存じですね」
俺は少し照れ臭くなった。
あの日はアルム様に見つからないように、朝早くに彼の宮を出た。本当は『俺が貴方を助けたんですよ!誉めてください!認めてください!そして愛してください!』と言ってしまいたい気持ちが強かったのだが、それをやると嫌われてしまいそうなのでものすごーく我慢して、自分の胸だけに秘めていたのだ。(鋭いアルム様が気付いてくれていないかなぁ~なんて程度の下心は許してほしい)
「衛兵の一人が見てたんですって。朝早くにアルムの宮から出ていく魔術師をね。それと、発作があったにしては屋敷とアルム自身への被害が少なかったって話しもね」
「…そ、そうだったんですか」
その話はアルム様には伝わっているだろうか?
そんなことを思うと、それを願っていたにもかかわらず無性に気恥ずかしくなる。
でも…それより…
「…発作のこと、ご存知だったんですか?」
少しだけムっとして言うと、彼女は困ったように肩を竦めた。
「そう責めないで頂戴。私だって今回はじめて知ったのよ。シフェルやアルムちゃんの周りの人間には暗黙の了解だったらしいから…私にはわざわざしらせてなかっただけで…」
「そう…なんですか」
「…そう…って、ところアルムちゃんの方は貴方が“竜の日”にやってきたのは知らないわけ?」
「は、はい。俺が行ったときには眠っていましたし、俺が起きたときにも…」
「あらあら」
「ほんと、あらあら…ですね。でも、まぁそんなものかと」
知ってほしいけれど、知られるのはちょっと恥ずかしい。
我が事ながら、恋する男ごころは複雑怪奇だ。
「でも一体どうやってアルムちゃんの発作をとめたの?」
「あー…とめたというか、流したというか」
「流した?」
「えぇ、アルム様は…その、本人に言ったら怒られますけれど、魔力を解放するのが少し苦手…というか、溢れ出る魔力を制御する事ができない事があると思うんですよ」
「えぇ…わかるわ。オーバーロードね」
「えぇそうです。きっと竜眼のせいなのでしょうが、無限にこんこんと湧き続ける魔力を制御する事ができないんです。…って、これは、きっと他の人間にも言えることで、アルム様はよく制御している方だと思うのですが」
「わかってるわよ」
フォローを入れる俺を微笑ましげに見るフィレス様に、俺はなんだか気恥ずかしい。
でも仕方がないではないか。俺はアルム様のことを愛しているが、それと同じくらい尊敬もしているのだ。
「とにかく…制御できないほどに魔力が溢れ出す事があって、それが発作なんだと思うんです」
「うんうん。それで?」
「それで、そういう状態になった時、アルム様は上手くその魔力を解放することができなくなるんですよ。それをやろうとすれば…」
「オーバーロード…自身も傷つくし、周りにはそれ以上の損害がある」
「…です。まぁ、内に閉じ込めようとしても、溢れです魔力でいろんなモノが傷つけられるわけですけど、アルム様はそちらをこれまでは選んできてたんですね」
「みたいね」
フィレス様はそういって少し遠い目をした。
「シフェルに聞いたけれど…ひどい時には宮を半壊させたり、血まみれで骨を何本かやっちゃてるコトもあったらしいわ」
「そんな…ですか」
それは…ちょっと予想していたけれど直接話に聞くと、その凄まじさに体がふるえる。
「いつか、自分の魔力に殺される……そんな事だってポツリと漏らしていた事があるらしいわ」
「アルム様…」
「……それで?一体どうしたの?」
「あ、ですから…私が中継をしてその魔力を解放したんです」
「中継って…?」
「そのままです。アルム様の手を握って、魔力を自分に流し、そして解放する」
簡単に言ってしまえばそんなものだ。
だけど…
「それって…簡単にいうけれど…むずかしくない?っていうか、負担大きくない?」
「そうですね」
そう。かなり難しいし、負担も大きい。
「他人の魔力を使うのは実は結構たいへんなんですよね。それに、他人の魔力ってものは、人に使われるのを嫌うし…」
実は結構大変でした。
そう言うと、彼女は苦笑しそれからよくやったと褒めてくれた。
「助かったわ。あの子の義理の姉としてセルヴィアには感謝するわ。ありがとう」
「そんな…。だって当たり前ですよ。アルム様のことですから」
「あははは、そうだったわね」
彼女は快活に笑い、「アルムちゃんもさっさと落ちちゃえばいいのにね」なんて言った。
「本当にそうですね」
俺が心から言うと、彼女はお腹を抱えて笑い出した。

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