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トロルクレイ

アイオーンの続きです

「セルヴィア様、なにしてるの?」

クリスはセルヴィアを探しまわり、彼の部屋に備え付けられている小さなキッチンの前で目的の人物を見つけ、冒頭の言葉を口にした。
「あぁ、クリス」
何かをこねていたらしいセルヴィアの顔には白い粉がついている。
「なにしているの?」
もう一度、クリスが子供特有の愛らしい声で尋ねると、セルヴィアはニコリと微笑み「お菓子を作っているんだ」と言った。
「お菓子?!」
びっくりしたクリスは大きな声を上げ、あたりを見回し…
「これ?」
真っ黒な物体を指さした。
それは…お菓子というよりも岩石のように見える。いや、どちらかというとトロルクレイに近いか。
手を伸ばし触れようとすると、「あ」とセルヴィアが声を上げ彼女の手を遮った。
「触っちゃダメだよ」

「下手すると死ぬから」

「え?」
不穏な言葉に、クリスの動きがピタリと止まる。
「死ぬ…?」
「うん。危ないから…ね」
ごく当然のように言うが、セルヴィアは菓子作りをしていると言ったはずだ。それで何故、死ぬ可能性のあるものができているのか…?まだ幼い彼女にも、それはおかしいということはわかった。
「えっと…これはセルヴィア様がつくったの?」
「うん。ついさっき焼きあがったんだけど、これは失敗だね」
さすがに死ぬ可能性のあるものを“あの人”に差し上げるわけにはいかないし…。
ぶつぶつとセルヴィアは言った。
クリスはパチパチと瞬きをし、黒い岩石のようなものの奥に、白っぽい鉱石のようなものがあるのを見つけた。
「セルヴィア様、こっちは食べられるの?」
クリスが聞くと、セルヴィアは「それもだめだね」と首を横に振った。
「それも失敗作なんだ。さっき猫に上げようとしたら、毛を逆立てて逃げて行ってしまってね。試しに武器防具屋にもって言ったら“これはすごい新作ができそうだ!”って言われたんだよね」
それもまた随分だ。
クリスはぽかんと口をあけた。
「あの…セルヴィア様?セルヴィア様はお菓子を作っているのですよね?攻撃系のアイテムじゃなくて」
「うん。そうだよ。そのつもり」
「あの…、あの…」
「ん?」
「セルヴィア様はお料理が上手ではないのですか?」
クリスが聞くと、セルヴィアは驚いたというふうに目を見開いた。
「そんなことはないよ。俺は、男にしては料理が上手いと思うよ」
フィレス様にも何度か振舞ったことがあるし、おいしいと褒めていただいたこともある…と、セルヴィア。
「え、でも…」
チラチラと失敗作の方を見ると、「これは別だね」とセルヴィアは言い、それをゴミ箱へと捨てた。
「どうしてかしらないけれど、愛情を入れようと思えば思うほど失敗しちゃうんだよね」
「あ、愛情ですか?あの…具体的に何を?」
「ん?愛情っていったら愛情だよ。まぁいろいろね」
そう言ってセルヴィアがチラリと視線を向けた先には、紫色の液体の入った小瓶だとか、髑髏のマークのついた赤い小瓶とか…。
クリスはそれを見てビクリと肩を震わせた。

“彼が込めているのは愛情ではなくて…殺意だ!”

「普通の材料はあんまり使いたくないからね。いろいろと取り揃えてみたんだけど…イマイチ思ったような効果がでなくって」
まだ幼い女の子ですらわかることが、どうしてだかセルヴィアにはわからないらしい。
クリスはよっぽど普通の材料で普通に作ったらどうだろうかと言おうかと思ったが、
「さて、今度はベラドンナでも入れてみましょうか」
というセルヴィアの言葉に、自分の無力を知った。
彼女は「がんばってくださいね」と消え入るような声で言うと、一目散に母のもとへと駈け出した。

 *

その後、アルムはフィレスから届けられたあらゆる解毒剤、ポイズンチェックなどのアクセサリーに首をかしげることになる。

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