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ガラス越しに覗く空 02

アリス視点
説明ターン!

事件現場に連れ出された私に、森下さんが紹介したいと言った男は、なんとも見栄えのする男だった。
一瞬俳優か何かかと思ったくらいだから、本当に格好いい。年齢は私と同じくらいだろうか。キリッとした顔立ちに、鷹のような…というのだろうか、強い持った目。高い身長に、なにかスポーツでもやっているのか程良く筋肉がついているのが服の上からでもわかる。
そして、にじみ出る色気。
男である私がくらっときそうになるくらいだから、女性ならひとたまりもないだろう。
唯一の欠点といえば…微妙な服のセンスだろうか。黒いシャツに白いジャケットは、悪趣味とまでは言わないが、少々いただけない。
そんな彼の容姿に気を取られていて、森下さんの紹介をあまり聞いていなかったが、名前は火村ナントカというらしい。大学で助教授をしていて、ナントカの専攻で犯罪・事件をその対象としているらしい。
フィールドワークとして事件現場には頻繁に姿を見せているらしく、その鋭い観察眼と推理能力でいくつもの事件の解決に導いているらしい。
その実績もあり森下さんや船曳刑事らは、彼を“名探偵”として頼りにしているのだとか。

「名探偵、そんなのほんまにいてるんですねぇ」

本気で感心して言ったのだが、彼には馬鹿にされたように聞こえたのだろう。
彼は小鼻を掻いて苦笑した。
「あの、馬鹿にしたんやないですからね」
「あぁ、別に気にしてませんから」
そうして片方の口角だけをあげて笑う姿にドキリとした。
この男、心臓に悪い。
私が引きつった笑みを返したとき、森下さんは先輩刑事に呼ばれてどこかへ行ってしまった。
彼の上司はなかなか人使いが荒いから大変だろう。だが、優秀な刑事であることは間違いない。
きっと森下さんもあと数年すれば優秀な刑事になるはずだ。
彼を見送った所で、火村さんが「ところで、未解決事件の担当をしていらっしゃるとか?」と話を切り出してきた。

話してみて気づいたのは、彼は一見とっつきにくそうな外見とは裏腹に、とても面白い人間だということだ。
もちろん面白いといっても、コメディアン的な面白さではない。
なんというのか話がとても面白いし、ウマが合う。とにかく言葉の応酬の一つ一つが私を楽しませる。彼は話しをさせるのが上手く、そしてまた話をするのも上手かった。
言葉の選択も、コメントも、エピソードもすべて私の中でしっくりくる。
今日の事件のことはもとより、これまで彼が関わってきた事件、そして解決に導いた事件、決め手となった証拠、そして矛盾した証言、そして私が今手がけている過去の事件、20年越しに新証拠を上げた案件、見落とされていた証言…。
私たちはいつの間にか敬語を取り払い、昔からの友人であるかのように互いを気安く呼び合い親しくしゃべっていた。
そして気づけば同僚たちは皆撤収しているという始末。
空も赤く、見事な夕暮れだった。

「なんや、森下くんも声をかけてくれたらよかったんに」
来るときはパトカーで来たものだから足がない。
まぁ幸いここから私が住むマンションまではさほど距離がないので、どうにでもなりはするのだが。
「挨拶はしてたぜ。俺たちが話してたから頭だけ下げてったが」
「あ、そうなん」
ならば許してやろう。などと、偉そうに考えていると「もしかして足がないのか?」と火村が見透かしたように言った。
話している内に気づいたのだが、彼はイチイチ意地悪というか…意地が悪いと言うか、毒舌というか。
「そうやねん。まぁ、近くやから別にかまへんけど」
「署には帰らないのか?」
「ええねん」
別に誰が待っているわけでも、誰に報告するわけもない。
あえて言えばいくつか調べたい事柄がないでもなかったが、それは明日でも十分に間に合う。
「直帰するわ」
「そうか。だったら贈ろうか」
そう言って彼がちらりと見せたのはドイツの高級車、メルセデス・ベンツのロゴが入った車のキーだった。
「へぇ」
さすが。やはりいい男は乗っている車まで違うらしい。
内心唸っていると、火村は意味ありげに私に笑みを見せた。

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