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ガラス越しに覗く空

パラレル。火村とアリスは二十代後半くらい。
警察の内情についてはよくわかってないのであしからず。
タイトルは無視(ぉ 読み返してない

近頃ようやく捜査現場にお呼ばれがかかるようになった火村は、事件現場に見慣れぬ男がいるのに気づいた。
府警の警官全てを把握しているわけでもないし、そんなことはままあることなのだが仕立ての良いコートに、顔を半分隠すマスクをした男はなんとなく陰惨な現場には似つかわしくない雰囲気を持っていた。
事件関係者かとも思ったが、警官達が彼に気を使っている様子から府警側の人間であることが知れる。
しかもそれなりに地位のある人物のようだ。
事件がさほど難しいものではなく、容疑者も絞られていた事から火村の注意は彼に向きがちだった。
地毛であろうか、それとも染めているのだろうか、日本人にしては比較的明るい髪をしている。身長は火村よりも少し低いくらい…といっても、日本人の平均身長よりは高い。
すらっとした体格でおよそ荒事には向きそうにない。年代は、顔が半分も隠れているのでよくわからないが、火村と同じくらいか。
周りに気を使われている割には、彼は偉そうじゃない…というか、お客さんのような態度で捜査に協力をしている風でもない。
あれはどんな立場の人間なんだ?
気になった火村は、コーヒーを持ってきてくれた新米刑事の森下を捕まえ、聞いて見ることにした。

「ちょっといいですか」
「はい。ええですよ。何か気になることでもありましたか?」
「えぇ。っといっても、事件のことじゃありませんが」
そういって火村が先ほどの男の方へ視線を流すと、その視線を追った森下が「あぁ」と言った。
「有栖川刑事ですね」
「有栖川刑事?」
「はい。そういえば火村先生は初めてお会いするんでしたっけ?」
「えぇ、見たところ階級は高そうですが…」
「はい、一応うちの課長なんですよ」
「部長?ってことは…警視ですか?」
いわゆるキャリア官僚というやつだろう。
しかも見たところずいぶんと若そうだし…キャリアの中でもまた出世頭といったところではなかろうか。
「でも…だったら、有栖川警視とは呼ばないんですか?」
「あぁ、それは本人が“刑事”の方がかっこええから言われまして」
「それで刑事なのか?」
変わった人だと目を丸くする火村に、森下は「そうですね」と笑った。
「変わった人ですよ。普段は資料室にこもっててめったに出てきません」
「資料室に?」
「えぇ、担当は未解決事件の解決らしいんです」
「へぇ…。確かにそんな専門チームを設立するというニュースを昔聞いたような気がします」
「さすがにお詳しいですね」
「ではその担当者が有栖川刑事?」
「はい。といっても、一人だけです。どこも人手不足で」
へぇ…と相槌を打ちながら、火村は有栖川という人間への興味を強くした。
「優秀な人ですよ」
「だろうな。そうじゃなきゃ、警視にはなれないだろう。…で、今日はもぐらのような彼が何故現場に?」
「さぁ。でも多分上からせっつかれたんやないですか?資料室にこもってないで時には現場に出てこいって」
うちの本部長、近頃奥さんと仲が悪いらしくて。
そういって苦笑する森下に、火村はよくわかるとうなづいた。
上司の不機嫌で被害を被るのはどこも一緒だ。
火村自信、つい先日上司が故意に会議の日程を教えてくれなかったせいで、ひどく慌てた経験がある。
その時、「へっち!」とおかしな声が聞こえて振り返ると、ちょうど有栖川がくしゃみをしたところだった。
おかしなくしゃみをする男だ。
「風邪ですかね」
「さぁ、いつもあんな感じなんで」
どういう意味なのかと火村が聞くと、彼はたいていいつも大きなマスクで顔の半分をかくしているらしい。
聞いたところによると、はじめは資料室の埃対策だったが、いつのまにかつけているのが普通になったとか。
今ではあれがトレードマークにもなっているらしい。
「ますます面白そうな人だな」
火村がひっそりと笑みを浮かべると、森下は自分が褒められたのでもあるまいに嬉しそうに微笑んだ。
「よかったら紹介しますけど、どうです?」
「そうですね」
火村は少しだけ考え、指で一度だけ唇をなぞると「よろしくお願いします」と口角を上げた。

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