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恋愛氷河期

火村がにょた 火村←森下
読み返してないな。

捜査に協力をしてくれる火村英生という人は、男のような名前だが立派な女性で、大学の准教授もしている。
女性にしては高い170近くの身長。
モデルといってもいいようなプロポーション。その上にのっている顔もまた美しく、ほとんど化粧をしていなくても見栄えがする。
府警の中でも彼女に憧れている警官、刑事は数知れず。
かく言う僕もまたそんなファンの一人で、彼女に淡い思いを抱いている一人だ。

そんな彼女は府内の事件で遅くなった時、決まって“アリス”という人の家に泊まる。
ちらっと耳に入れた話によると、大学時代からの友人らしい。
かなり仲が良いらしく、特に用事が無くとも互いの家を行き来しているらしい。
女同士の友情ってものに憧れを持っている僕としては、二人の関係がとても微笑ましい。
それにアリスという名前。
なんて可愛らしいんだろう。
まだ見たことは無いが、きっと名前に似つかわしい愛らしい人なのだと思う。
さすがにエプロンドレスなんてことは無いだろうが。

 *

「火村さん、今お帰りですか?」

僕は署を出ようとする火村さんを見つけて声をかけた。
振り返った火村さんの口には火のないタバコが一本。
女性はあまりタバコは吸わないほうがいい…と、僕は常々思っているが、彼女の場合はそのタバコがやけに似合っているので野暮を口にしたことはない。
「今日もご友人のところに?」
小走りに追いついて聞くと、彼女は頷いた。
「えぇ、お互い独身ですから気楽なものです」
その言葉に僕はなんて言えばいいか咄嗟に浮かばず、曖昧に笑って誤魔化した。
「僕もちょうど仕事が終わった所なんですよ。良かったらアリスさん…でしたっけ。彼女の家まで送りましょうか」
「彼女…?」
「えぇ、この近くにお住まいなんですよね?」
聞くと彼女はなぜか口元に軽く手を当てて笑った。
「…?あの?」
「あぁ、いえ、そうですが…今日は迎えに来てくれると言ってたんですよ」
「え、ホントですか?」
ドキンっと胸がひとつ跳ねた。
彼女を送っていくことができないのは残念だが、それよりもアリスという人に会えるかもしれないという期待の方が大きかった。
“アリス”という存在は、署の中でも興味の的になっている人物だ。
一体どんな人物なのだろうかと誰もが気になっている。
まだ見たことすらないのに、「火村さんはライバルが多そうだから、俺はアリスさんに…」なんて事をうそぶく奴もいるくらいだ。
ちなみに…船曳警部は見たことがあるらしいが…なぜか、どんな人物なのかは教えてくれない…。
「気になりますか?」
「え、あ、はい。そうですね」
僕は火村さんの言葉に頭を掻いた。
「名前はよく聞くのに、姿は見たことがありませんから…。僕だけやなくて、結構気になってる人いるんですよ」
「へぇ」
面白そうに笑った火村さんは、手首の時計を見た。
「そろそろ時間ですので、やってくるはずですよ」
「あ、じゃぁ挨拶だけでもしてええですか?」
「もちろん」
にっこりと笑った彼女に顔がカッと熱くなるのを感じながら僕は火村さんの後に続いた。

署の外はかなり冷え込んでいた。
そういえば天気予報で、明日はこの冬一番の冷え込みになるとか言っていたのを思い出す。
「寒いですね」
「大丈夫ですか?」
「えぇ」
白い息。
僕たちは二人で署の入り口の方を見た。
「明日もお仕事なんですか?」
「はい。ですが、午後からですので」
「そうですか。でも大変ですね」
「そうですね、確かに少し。ですが、これは私がやりたいことなので」
「かっこええですね」
「そう言われると嬉しいですね…あ、来たようですよ」
見ると、一台の車が入ってきたところだった。
近頃は少なくなってきたセダン。女性が乗るにしては珍しいな…と思っていると、それは滑りこむように玄関…つまり僕達の前に止まった。
旧式のブルーバードだ。これまた珍しい。
父親のお下がり…と言ったところだろうか。
そんなことを思っていると、すぐに運転席の扉が開き…。

「え」

僕は固まった。
なぜなら…降りてきたのが男性だったからだ。
いや、まさか彼がアリスさん…ではあるまい。何か署に用があった一般の人だ。
そう思ったのだが…

「アリス」

隣で火村さんが、その男性に向かって手を上げたことで、僕は顎が落ちるかと思った。

嘘…だろう?

「時間ぴったりだな」
「時間配分してきたからな」
ニカッと笑う男性は…中肉中背で、カッコイイというよりも可愛らしい…というような形容詞が似合う人だった。
少し長めのふわりとした癖のある茶の髪、少しだけ目尻の下がった優しげな笑顔。
二枚目とはいわないが、女性ならまず好感をもつだろう顔立ちをしている。
だが…
「え、あの…彼が“アリスさん”ですか?」
僕が声を出すと、二人の視線がコチラにむいた。
「えぇ、“彼”がアリスです。アリス。こちら森下刑事。捜査では何かと世話になっている」
「あ、そうなんですか。俺、有栖川有栖いいます。火村が世話になっているみたいで」
「え…あ、いえ、こちらこそ。火村さんのお陰でこちらも随分助かってますから」
「そうですか、それやったらええですけど」
聞き心地の良い関西弁。
微笑むと愛嬌が出て、女性の母性本能をくすぐるタイプかもしれない。
「では、私は今日はもう失礼します」
「あ、は、はい。ご苦労様です」
ひきつった笑みしかでない僕に、火村さんは微笑み助手席に乗り込み、アリスさんも会釈をして運転席に乗り込んだ。
そしてまもなく署を出ていく。
僕は唖然と二人の乗った車を見送り…そして崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。

「………」

“アリス” が女性ではなく男性だった事実。
いや、それよりも火村さんが男性の家に泊まるという事。
いや…いつだってそうやって泊まっていた事。
話の中でしか聞いたことがないが、随分仲がいいらしい事実…。

「なんやこれ」

色々ショックで頭が上手くうごかない。
僕は頭をぐしゃぐしゃとかき回し、うぅっと唸声を上げた。

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