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煙炎 08

「右舷!回りこめ!!!!」

「おら!何してる!!!どてっぱら見せてんじゃねぇ!撃たれるぞ!」

「よし!あてろ!乗り込むぞ!!!!」

白猟のスモーカー。
その名の示す通りに、スモーカーの体を真白な煙が包んだかと思うとそれは甲板を飛び、敵船へと向かっていった。

「おうおう、これじゃぁどっちが海賊だかわかりゃしねぇなぁ」

エースは己の大将の暴れる様を見て、獰猛な若い狼のように笑った。
そしてあちこちから上がっている煙(これはスモーカーのものではない)を見ると「おい」と後に控えていた部下に声をかけた。
「ちゃんとあのおっさん見とけよ。時々、ドジ踏むからなぁ」
足踏み外して海に落ちるかもしれない。
「はぁ」
返事に覇気がないのは、そんなことは無いと彼が信じているからだ。
「どちらかっていうと、俺はあんたの方が心配なんですけどねぇ」
「俺か?俺は大丈夫に決まってんだろ」
「とかいって、こないだも落ちたじゃないですか」
「…そうだったか?」
覚えてないな。
そらぞらしく言って、彼は狙いを定めるように海賊船群を見た。
「出ますか?」
「あぁもちろん…と言いたいところだが…出遅れたな」
すでに戦いは乱戦に入っている。
派手な戦いを好むエースとしては、敵味方が入り乱れた状態はあまり得意じゃない。
やってやれない訳じゃないが、大多数の敵を相手におおたち回りをやるほうが好みだ。
様子を見渡していたエースはチッと大きく舌打ちをした。
やはり出る時期を逸している。
「いっときますけど、乗り遅れたのはあんたが島で食い意地をはったせいですからね」
「はっ、わかってるよ」
あーくそ、あの漁港の食堂は旨かった。
あの魚のあんかけ。それに食いでのあるばかでかい肉…。
思い出して舌なめずりしたエースはふと自身の空腹に気付き、
「ちょいと飯くってくるわ」
と、まだ喰う気かと驚く部下を背に悠々と船の中に入っていった。



ゴンッ!

頭に落とされた拳骨に「いってぇぇえ!」と悲鳴を上げ、持っていた伊勢海老を殻ごと口に放り込んだ。

「エース!」

ゴンッ☆

今度は先程よりももっと力のこもったげんこつが落ち、エースはピラフの中に顔を埋め、しばらくして「アチチチチチッ!」と言いながら顔を上げ後ろを振り返った。
「おぉ、スモーカー大佐!お勤めご苦労様でッす!」
米粒を顔からパラパラ落としながら敬礼をする。
その姿を見て、10も20も言いたいことのあったスモーカーはそのすべてを飲み込み、代わりにため息をついた。
「ったく…姿が見えねぇと思ったら…」
言いながら隣に腰掛けるスモーカーにエースはビールのたっぷりと注がれたジョッキをスモーカーに渡す。
「お前はさっき飯を食ったばかりじゃなかったのか?」
「はは、すぐに腹がへるお年ごろなんだよ」
「なにがお年ごろだ」
アホウと言われてエースは笑い、グラタンのような料理を手づかみで口へと運ぶ。
もちろんクリーム性の料理なので、手はベタベタだ。
「きったねぇ食い方だな。相変わらず」
「腹に入りゃ一緒だよ。それに少しくらい汚れてた方が、体が強くなるってもんだ」
「まぁ多少はな」
「で、何かあったのか?」
ただ居ないから探しに来たというわけでもないだろうとエースが話を向けると「あぁ」とスモーカーは言っていくつか咥えている葉巻のうち、燃え尽きた一本をねじ消すと新たな一本を咥えた。
エースはその新しい一本にごく自然な動作で火をつける。
「ちょいとな。面白い報告が入った」
「面白い報告?」
ぐるりと目を回すエース。
頭の中にあるのは、先ほどやりあっていた海賊だが…
「さっきのやつらじゃねぇ」
口にする前にスモーカーによって否定された。
「先ほど、連絡がはいったばかりだが…この近くに裏切り者が潜んでいるらしい」
「裏切り者…?」
不穏な言葉にエースは料理に伸ばしかけていた手を引っ込め、スモーカーを睨むように見た。
「あぁ。脱獄を幇助したやつがいる」
「脱獄を?」
「あぁ、その件で出動命令がきた。…俺たち海軍が一番嫌うのが裏切りだ…わかるな」
「あぁ…」
海軍に所属していながら、海賊と通じるなんて言語道断。
いかなる事情があれど、許せる行為ではない。
そんな奴らは…無論、捉えられ正統な裁判にかけられることになるが…捕まえる際には、死なない限りの私刑が許可されている。
裏切り者には、死を懇願するほどの恐怖が待っているのだ。

「明日から狩りが始まるぞ」

スモーカーの言葉にエースは喉を鳴らした。

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