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生誕よりも近く終焉よりも深く 02

悪人であるギルベルトを書きたいってのが最初。
よみかえしてない。気が向いたら続く

国の東に広がる森は、昼でも暗く魔物たちの領域となっている。
30メートル以上にまで育った大きな針葉樹の森は別名迷いの森。
人々から敬遠されるその森は、腕の立つものでなければけして足を踏み入れることはない。
その森を今、十人程の騎兵を従えた馬車が辺りを警戒するように少し早足で進んでいる。
目に眩しい真白な鎧をみにつけた騎士たちは国王直属の近衛のもの。そして美しい装飾の施された馬車は、高貴な人が中にいることを物語っている。
中にいるのは、この度魔王ギルベルトへの輿入れの決まったルイーゼロッテと、唯一の同行者となった侍女のエリザベータだ。
輿入れ…と言っても、所詮は魔王への供物。
花嫁もその侍女も一様に自分たちの収まるべき墓穴を前に佇むように表情は暗い。

森にはいって数時間後。
魔物の襲撃を恐れてそれまで一度として止まらなかった隊群がにわかに停止する。
少しでも体力を温存しようとでもいうように目を閉じていたルイーゼロッテはそっとまぶたを上げ、目の前に座っていたエリザベータと目を合わせると小さくうなづいた。
「姫様、到着しました」
外からかけられた声にエリザベータが応じると、扉が開く。
二人が外に出てみると、そこは泉の前だった。
ちょうどひょうたんのような形をした静かな泉。
淡く浅葱に輝く泉の上には薄いベールのように霧がかかっており、とても幻想的で息を呑むほどに美しい。
だが、
「周囲に異常はありません」
のんきにそれを鑑賞しているような時ではない。
騎士団の隊長の言葉にルイーゼロッテはひとつ頷くと、エリザベータの差し出した銀の腕輪を手に取った。

 *

謁見の間。
円柱がいくつもたつ広いそこに男は一人玉座に座っていた。
闇を重ねたかのような黒い服、長く伸びた白金の髪、頭の両脇についた捻くれた黒い角…。
その顔は、文句のつけようがなく整っていたが…本来鮮やかに輝いているはずの紅い眼は曇っており、生気が感じられない。
まるで死人のような彼はしずかに玉座に座り続けていた。
大きな両開きの扉が開かれて尚。

謁見の間に入ってきたのは、これまた美しい男だった。
波打つ金髪を肩のあたりまで伸ばした貴族風の男。
なにかおかしなことでもあったのか…それとももともとそういう顔立ちなのか、彼は柔和な笑みを浮かべ、弾むような足取りで玉座へ向かって歩き、
「や、ご機嫌うるわしゅー、ギルちゃん」
ゆるい口調で玉座に座った男…魔王ギルベルトに声をかける。
一つ瞬きをしてギルベルトの視線が男に向けられる。
「フランシス…か」
砂漠のように乾ききった声。
どろんとした目を向けられたフランシスは肩をすくめ、「いよいよだね」と声をかけた。
「…ぁ?」
「あ?って忘れたの?花嫁だよ、花嫁」
「花…嫁?」
ぼんやりとよくわからないと言うようにつぶやくギルベルト。
寝ぼけているのかとも思われるような態度だが、魔王ギルベルトはいつもこんな感じだ。
それは禁忌に禁忌を重ねた結果…と言われている。
いつも半覚醒のような状態で、彼の精神は霧の迷宮をさまよっている。
「覚えてないのか?わざわざ呼び寄せただろう。ルイーゼロッテ姫だよ」
「ルイーゼ…わからない」
「そう」
少し残念そうにフランシスは呟いた。
「お前が久しぶりに正気になった時に言ったんだよ、鏡に彼女をうつして“この女が欲しい”ってね」
「俺が…?覚えてない」
うつろに答えたギルベルトは、長く伸びた髪を指ですくいクルクルと巻いて遊ぶ。
「ルッツを失った俺は…もう、欲しいものなんて…」

無い。

無感情に言い捨てるギルベルト。
その横顔を寂しそうに見つめ、フランシスは「そうだね」とだけ言葉を返した。

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