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消化不良の悩み

火村→←←←←←←←←←←アリス
モブ名波視点。

火村の期限が急速に悪化しだしたのは飲み会の半ば、それぞれの腹が膨れ、またいい具合にアルコールが体に回ってきた頃の事だった。
火村の隣に座っていた俺は、少しずつ深くなっていく火村の眉間の皺に口元を引きつらせ、逆隣に座っていた女の子との会話を打ち切ると「どうしたよ」と他には聞こえぬ程度の声で話しかけた。
だけど…
「………」
返事はない…どころかこっちをチラとも見ない。
「無視かよ」
がっくりと半ば本気で肩を落とし、箸で冷えたすり身揚げを大皿から取ると口に運んだ。
うん…微妙。
すり身揚げってのは、どうしたって揚げたてが一番美味くて、冷えると微妙なんだよな。
「何、ヤニ切れ?」
と言ってもシカトで。
なんだよ、つめてぇなぁなんて一人でいじけてみせて…で、火村の視線の先に気づいた。
斜め向かい。入り口付近で飲んでいるアリスのそばには、ふわっとした髪の女の子がいて…二人はなにやら楽しそうに話している。
へー、ふーん、ほー。
俺は火村とアリスを見比べて思わずニヤリとしてしまう。
なんだ。
アリスにしつこく言い寄られて迷惑そうにしてたくせに…意外に脈ありだったのか?
自分でも自覚のあるニヤニヤ。
ふいにこちらを向いた火村が俺を見て気味悪そうな顔をして、チッと舌打ちをした。
いつもすました色男がこんな風に苛立っているとなんだか親しみを覚えてしまう。
酔った勢いで…普段なら絶対にしないが…火村の肩に手を回した。
「おいッ!」
「なんだよ、アリスが他の子と仲良くやってんのが気にくわないのか?」
「…そんなわけないだろう」
言いながら胸を押し返した火村だが、俺がしつこくしがみつくと身体を引いて酒に手を伸ばした。
「またまた。なんだよ、火村はアリスが嫌いじゃなかったのか?」
「嫌いだが?」
「おいおい、いまさら誤魔化すなよ、そんな顔しといて」
「そんな顔ってなんだよ。俺は迷惑してるんだよ、毎日毎日学部も違うのにやってきては好きだとか愛してるとか…」
ウザイ。
ぶすっとした顔をしてはいるが、この苛立ちはアリスが付きまとう事に関してではないだろう。
「照れちゃって。まんざらでもないくせに」
「いい加減な事をいうな!それに放せ!」
声は大きかったが、それ以上に周りがうるさくて俺以外だれも火村の剣幕には気づいていない。
ギロリと睨まれて、俺は降参と両手を上げた。
「そんな怒るなよ」
「怒らせてるのはお前だろう」
「いてっ」
肘で腹を付かれた。
ふとった奴なら何でもないんだろうがヒョロヒョロ体型の俺には結構痛い。
「でも、アリスが女の子とイチャイチャしてんのがムカつくんだろ?」
「なんで俺が」
「二人の方見てイラついてたくせに」
ビールを飲みながら火村を見ると、さっきよりもぶすっとした顔をしている。
もしかして自分の気持ちに気づいていないのかと思ったが、どうやら気づかない振りをしていただけらしい。
女にモテまくってていけすかない奴だと思っていたが、案外可愛いげがある。
さっさとアリスに堕ちちまえばいいのに。
そうしたらかわいい女の子がこっちにも回ってくるかもしれない。
「呼べば?アリス。喜んでこっち来るぜ」
「べつに…いいんじゃねぇか、あの女で」
“あの女”ね。
「でも彼女、結構遊んでるって噂あるぜ」
ってのは嘘。
本当は彼女の顔は今日はじめて見た。
だけど俺はアリスの味方なので援護してみたりして。
「…男に走るよりましだろ?」
「そうか?俺はあんな女よりはお前を推すけどね」
「推すなよ」
「いや、だって、アリス、あぁ見えてマジなんだぜ?あいつ普段お前の話しかしないし」
「どんな話なんだかな」
「どんなにお前が素晴らしいかって話だよ。アリスはお前意外目に入りませんって感じだ。他の女の子への牽制とかリアルに怖いから」
これはマジ。
アリスは女の子と何度か喧嘩してたりするし…中学生女子のいじめっこがやるような嫌がらせをしたりもしてる。
大抵ものを隠すとか、足を引っ掻けて転ばすとか、お茶をひっかけるとか、呆れるような事ばかりだが中には結構えげつないのもあって、一部の女の子はアリスを怖がってたりする。
もちろん火村には絶対にばれないようにやってるが。
「どうだかな。現に今、他の女ばかり見てるじゃないか」
火村の言いように俺は心の中で笑った。
なんだそれは。自分をみないアリスに拗ねてるのか?嫉妬か?独占欲か?
「だーかーら、腹立つなら呼べって」
「別にいいっていってるだろう」
意地っ張りだなぁ。
でもまぁ、これ以上つっつくのは良策ではなさそうだ。
ここは俺が助け船を出してやろうと「アリス!」と大きな声でアリスを呼び、左手を上げた。
「おーい、アリスー」
するとこちらに気づいた二人が同時に振り返り、そしてアリスは俺の横に火村を発見して満面の笑みを浮かべた。
なんて分かりやすい男だろう。
火村の顔を見た途端、アリスの顔がトロンととろけやがった。
わざわざ口を開かなくても、アリスは全身で火村が好きだと告げている。
火村もアリスを見習ってもう少し素直になればいいのに。
「こっちにこいよ!」
誘って、火村の表情を確認しようと横を見ると、なぜかすごく怖い顔をしていた。
あれ?なんでだ?
驚いてアリスの方を見ると、立ち上がりかけていたアリスの腕に女の子がしがみついていた。
「えー、いかないでよー」
声は聞こえないけれど、多分そんなふうなことを言っている雰囲気。
珍しい。
アリスは火村以外眼中にないので、女の子に好かれそうな顔をしている割に、モーションを掛けられることは少ないというのに。
だが、のんきに見物している場合じゃない。
もう一度アリスを呼ぼうと口を開きかけた時…
「アリス!」
「え」
火村がアリスを呼んだ。
火村を見ると、彼は腰を浮かせかけていて「帰るぞ」とアリスに言った。
え。なにそれ。
唖然としている間に火村はずんずんと歩いて部屋を横切っていて、で、アリスがそりゃもう尻尾をちぎれんばかりに振りながら、女の子を振りきって火村の後を追いかけていた。

「あらら、意外にこれは早いかもね」

ぽかーんとしている俺に、隣に座っていた女の子がニヤニヤしながら言った。
どうやらいつからかは知らないが、俺たちの会話を聞いていたらしい。
「火村君って意外に可愛いよね」
とビールを飲みながら言う彼女に俺も同意。
もちろん俺はノーマルなので、手を出す気は一切ないが。

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