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生誕よりも近く終焉よりも深く

大好きなファンタジーパロディです。
ここに出てくる兄はギルベルトではなく、神ロのつもり。
ルートの名前はルイーゼロッテ 愛称はロッテ。
気が向いたら続きかく

「そんなことは出来ない!無理だ!!」

若き王。
つい先月25を迎えたばかりの若い獅子王は頬を蒼白にして言った。
「ロッテ…私の妹はイギリスの次期王、アーサー王子への輿入れが決まっている!それを破棄するなど…」
出来ない。
いいかけた言葉を王が飲み込んだのは、目の前の黒いローブの男がニヤリと口許を歪めよく尖った牙を煌めかせたからだ。
深く被ったフードの奥で煌めくそれはとても恐ろしく、まだ若い獅子の心臓を震え上がらせた。
「出来る、出来ないやあらへん。“やる”んや。この国を滅ぼされとうなかったらな」
人を恫喝するというより、からかうような口調でその人物は言った。
「かのイギリスかてわかってくれるやろ、なにせ魔王ギルベルトの思し召しや」
男の言葉に、起立していた獅子王は玉座に座り込んだ。
「イギリスがいくら強いいうても、我らが魔王軍の足元にも及ばへんわ。事情を話したらえぇやん」
「…しかし…ロッテ…ルイーゼロッテとアーサーは子供の頃からの許嫁同士。心も通じあって…」
「あんなぁ…」
苦しげな獅子王に使者の男は呆れたように言った。
「関係あらへん言うてるやろ。ギルベルトがお前の妹を妃に決めたんや。この決定はどうあっても覆らへん。どいあってもや」

*

突然、結婚の決まっていたアーサー王子との婚約を破棄され、代わりに魔王ギルベルトへの輿入れが決まったと告げられた王女、ルイーゼロッテは顔を真っ白にして震え、崩れ落ちるように椅子に腰を下ろした。
「私が…魔王の?」
呆然と呟くルイーゼロッテ。
彼女の前に跪いた獅子王は痛ましい目で彼女を見上げた。
「すまない…ロッテ…、俺が不甲斐ないばかりに…」
「そんな…いいえ……いいえ」
ルイーゼロッテは上手く言葉を紡ぐことが出来なかった。
「ロッテ…許してくれ…。本当に、本当にすまない」
ルイーゼロッテの手を取り口づけを落とす兄王に、ルイーゼロッテは何か言わなければと思ったが、頭が混乱して首を小さく振ることしか出来なかった。
そんな彼女を慮ってか、兄王は彼女をそっと抱き寄せると「また後で来る」と言い残し部屋を出ていった。



「姫様、お茶が入りました」

声をかけられルイーゼロッテが顔を上げると、側には彼女の専属の侍女であり、姉代わりでもあるエリザベータが立っていた。
「ミルクをたっぷりいれた紅茶です。心が落ち着きますよ」
「エリザ……」
「話は聞いております。お話は聞かせていただきますので今はまずいっぱいお召し上がりください」
にっこりと微笑む彼女にすすめられ、ルイーゼロッテはカップに手を伸ばした。
豊かな紅茶とミルクの香り。
甘く甘く淹れられたそれは、確かにルイーゼロッテの混乱した頭を落ち着かせてくれた。
「リンゴのタルトもどうぞ。シナモンが効いてとても美味しいですよ」
「あぁ、ありがとう」
きれいに飾り付けられたタルトは見た目からして美しく美味しそうだ。
ルイーゼロッテはこわばっていた顔から少しだけ力を抜き、フォークを手に取った。

「ねぇ、エリザベータ」
甘いタルトと紅茶のお陰か、ようやく頭が回転し出したルイーゼロッテは侍女に向かって口を開いた。
「魔王について何か知っている?」
「魔王について…」
聞かれたエリザベータは一瞬動きを止め、ルイーゼロッテを見、
「私も詳しくはわからないわ…」
ごめんなさいと目を伏せる。ルイーゼロッテはそんなエリザベータには弛く首を横に振った。
そしてテーブルに飾られた美しい花を見ながらぽつりと呟いた。
「魔界を統べる…魔物達の絶対的支配者…」
「そうね。そう言われているわ。魔物というものは本来普段は私たちの世界には干渉せず、こちらにいるごく一部の魔物達が悪さをしている。だけど過去には聖魔大戦を代表とする大きないさかいが何度も起こり、私たちは何度も滅ぼされかけている…」
「聖魔大戦…。あれはおとぎ話だと思っていた」
「残念ながら本当の事よ」
1000年前に起こったといわれる人と魔物の間で起こった最大の戦争…。
大戦で人類は1/10にまで人口を減らし、幾つかの種族は完全に滅びてしまっている。
「魔族はとても強いわ。屈強な騎士が三人で掛かってようやく一人を相手に出来るかどうか。魔法の心得のある上級魔族ともなればあっという間に村を一つ消し去ることも出来るらしいわ」
「そんなに…」
顔を青ざめさせるルイーゼロッテにエリザベータは頷く。
「受け入れるしか無いと言うことね」
自嘲するように言い、「だけど何故私?」と疑問を口にした。
「いや、そもそも何故魔王が“人”を妃に迎えるなど…」
まさか人と魔族との友好をねらっているわけでもあるまいに。
「そうね。それはわからないわ」
それにもし友好を考えているのなら、この国よりももっと適当な国がある。
もし戦いを望むなら、わざわざ妃を…などという事を言い出すのもまたおかしな話。
今回の話にはいくつもおかしな点がある。
「人の側から人質に私を送り込むというのならわかるが…」
魔族の考えなどわかるわけがない。
いくら疑問が湧き出ようがこれはもう覆されない決定事項である。
仮にルイーゼロッテが拒むなら、おそらくこの国はひとたまりもあるまい。
「アーサー王子には申し訳ないが…嫁に行くしかならないようだな」
切なさを込めたルイーゼロッテの言葉にエリザベータは何も答えることが出来なかった。
どんな化け物かもしれないおぞましい者に大切な姫を渡すのは本意ではない。
だがそうしなければ、多くの人々が無為に死んでいくことになる。
彼女にとってルイーゼロッテはとても大切な女性であるが、だからといってこの世界悉く全てを犠牲にできるかと言われれば頷く事はできない。
どうあっても受け入れるしかないのだ。
「姫様…」
ルイーゼロッテの不幸を思って涙を見せるエリザベータ。
女主人は彼女こそが涙を見せても仕方のない場面で気丈に微笑み、エリザベータの肩に手を置いた。
「大丈夫だ…。魔王の妃などときいて取り乱したが、私はこの国にとっての最善につくすために生まれ、生き、これからも生きていくんだ」
「でも…でも、それでは姫様があまりにも可哀想で…」
わっと泣き出したエリザベータをルイーゼロッテは慰めるように抱き締めた。
「大丈夫。仮にも私を魔王の妃として招くというんだ。無体はされないと思う」
本当の狙いは何か知らない。
だが少なくとも妃としての最低限の保証はされるはずだ。
「私も連れていって…いえ、ついて行きます!」
心強いエリザベータの言葉を断ることが出来ず曖昧に頷きながら、ルイーゼロッテは兄王に、自分は死んだと考えてもらうように進言しなくてはならないな…と考えていた。

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