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027. 彼氏は先生だと彼女は言う

題名全く関係ないけど…
セシルの性格がアレなのはデフォ。
何気にカインも性格悪いです。

同級生に子供が出来たらしい。
…いや、出来たというより、性格には生まれた…かな。
俺達はまだ17歳で、産んだ人は付き合っていた大学生なんだそうだ。
それを聞いた時点で、うわぁ…って感じだけれど、彼らの両親は意外と二人のこと、そして子供の誕生の事を喜んでくれているらしい。心の広い親だ。
そんなわけで俺はママになったらしい大学生の実家に、クラスメイトたちと一緒に赤ん坊見物にやってきた。
俺は乳臭いガキなんて興味なかったが、クラスの女子は大張り切り(母性本能が大盛なところを見せたいのか?)。
セシルもはた迷惑なことに前日に眠れなかったというくらい楽しみであったらしい。
彼はローザに作って貰ったという赤ん坊用の手袋を携え、満面の笑みをたたえてクラスの女子ときゃっきゃっと歓声を上げている。

「なーんか、かなり意外だわぁ」

そう言ったのは、目当ての女子につられてやってきたクラスメイトだ。
「子供好きに見えて、子供嫌いだと思っていた」
その視線の先はセシル。
彼は今、赤ん坊の顔を女の子たちに混じって覗きこんでいる。
小さな手に持ってきた手袋をはめてやり、ふっくらとした頬をつついている。
汚れのない赤ん坊のくせに、汚の塊がわからないとは将来が不安だ。
俺達はは少し離れた場所でロールケーキを食べていて、正面には父親になった同級生が座っている。パパになったからか、少し大人びて見える。
「な、お前、学校やめるってマジ?」
隣の男がきくと、新米パパは苦笑しながらうなずいた。
「うん。幸いうちは商売やってるから、それ手伝って養うつもり」
そういう彼の顔に悲哀はないようだが、隣の男…俺もだが…は信じられないというような顔をした。
さすがに言葉には出さなかったが、17で家族を持つなんて愚行としか思えない。
若い身空で見を売り渡すとは…一人の女に縛られるとは…信じられない。
「…まぁ、大変だよな」
「そうだね。でも子供のために頑張るよ」
にっこりと微笑む彼に、俺は吐き気を覚えた。
それは最初、俺が理解することのできない相手への嫉妬かと思ったが、感じているのは嫌悪の方が近い気がした。
だがそれは目の前の男に対してだろうか?
よくわからない。
「まぁ、大変だよな。俺は応援するよ」
まったく本気に聞こえない白々しい台詞。
それでも新米パパは嬉しそうに笑うので俺はなんだかいたたまれなくなって、見たくもないガキの顔を拝みに席を立った。

「あー、ねちゃったぁ」
女の子の残念そうな声。
見ると確かにガキは目を閉じていた。
よくよく見てもやはり可愛くは見えない。
それでも世辞で可愛いというべきかどうか考えていると、セシルと目があった。
「なんかさ、この子、ヨー…」
その瞬間、嫌な予感を感じた俺は、彼が言葉を言い切る前にあわてて彼の口を手で塞いだ。
むぐむぐというセシル。
クラスメイトたちが不思議そうな顔を向けてくるのに俺は愛想笑いし、セシルの耳に口を近づけ「余計なことはいうんじゃないぞ」と脅しつけてからゆっくりと手を放してやった。
「余計なことって?」
首を傾げるセシルの頭を小突く。
「お前が今口にしようとしたことだよ」
「別に変なことじゃないよ」
「そうは思えない」
長い付き合いがあるからこそわかる。
絶対にセシルはろくでもないことを言おうとしていた。賭けてもいい。
「ひどいなぁ」
「ひどくない」
つまらなそうに口を尖らせたセシルは立ち上がり、新米パパの方へと向かうが…これにも嫌な予感をビシバシと感じた俺は、慌てて彼の腕を掴み引き留めた。
「もー…なに?」
「…いや、そろそろ帰らないか?」
人の幸せに水を差すことには天才的な才能をみせるのがセシルである。
そしてその最大の被害者である俺の勘が、そろそろ“限界”、潮時だと告げていた。
「どうして?」
「そうだよ、まだいいじゃん」
「まだ20分もいないじゃん」
上がるブーイング。
予定ではもう少し滞在して、帰りにカラオケでも行こうって流れだったのだ。近頃セシル意外と遊んでいなかった俺には、なかなか魅力的なプランだったが…やっぱりだめだ。
これ以上セシルが此処にいると、友人関係にひびをいれることになる。
下手したら、幸せな家庭すら崩壊させかねない。
「…もう満足したろ?」
「えー…もう少しいいじゃん」
セシルに賛同する声が上がるが…別にお前らには言っていないと少々ムッとする。
だったら一人でも帰ろうかと思い荷物を引き寄せると、セシルもまた帰る支度を始めた。
「カイン君って横暴」
女子からのブーイングにイラっとくるが、事情を知らない者が見れば、確かに俺はセシルを振り回しているように見えるかもしれない。
だとしたら、俺はどうあっても彼の被害者からは逃れられないということかと考えて悲しくなった。
俺たちにつられて女の子も立ち上がりかけたが、そこは新米パパが「みんなはもう少しゆっくりしていってよ」と引き留めてくれた。
そしてまたその横で、先程話していた男が「ごくろうさん」みたいに笑っていた。
彼は少しだけセシルの黒い所がわかるらしい。いい友達になれるかも…しれない。セシルが邪魔をしなければ。

帰り道、セシルはもう少し拗ねているかと思ったがそうでもなく。むしろ機嫌よさそうに鼻唄を歌っていた。
やはり限界、潮時だったのだ。
あれ以上放置していたら…きっと大変なことになっていたにちがいない。
そんなことを考えていたら、一歩先を歩いていたセシルが振り返り、俺をみてにっこりと微笑んだ。
「赤ちゃんってあんまりかわいくないよね。これならカインの方がずっと可愛いよ」
「……全く嬉しくない」
俺は顔をひきつらせセシルにげんこつを落とした。

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