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諦めてはいけません

それなり男 と 俺様美形不良?

俺は楓に99回目になる愛の告白をした。

好きだ。愛してる。付き合ってくれ。

決まり文句と共に右手を差し出し頭を深く下げる。
それで楓が手を握ってくれれば、大団円。晴れて俺達は恋人同士!っということになるのだが、98回目に引き続き今回もまた例によって例のごとく。

「お前、頭おかしい」

氷のような言葉とともにバッサリと切り捨てられた。
見事99回目達成。
俺は大きくため息をついた。
楓に惚れて約二年。
長いようで短かった。
世の中には101回プロポーズした男もいるらしいが、俺にはもう今回が限界だ。
「西野?」
いつもは振られてもしつこく言い寄るはずの俺が大人しいせいか、楓が不審な顔をする。
美人ではあるが間違いなく男である楓は、俺よりも5センチ背が低いだけで175センチ身長がある。
喧嘩っぱやくて、この辺りじゃ知らぬものはいない不良。
対して俺は、ちょっと背が高いだけの普通の男。
はじめからわかっちゃいたけど釣り合いなんてとれないし、楓が俺に惹かれるような要素だってひとつもない。
99回の失恋か。
これでも頑張ってきたつもりだけど…もう無理だ。
失恋を三桁に乗せる前に俺は…きっぱりと彼を諦める。
「どうしたんだ?西野?」
心配そうに近づいてくる楓。
いつもなら嬉しすぎて抱きついて…で殴られるところだけど、今はもう胸がキリキリと痛むだけ。
俺は一歩下がって精一杯の微笑みを浮かべた。
すると楓は驚いたように目を見開いた。
「楓…いや、藤川。今まで付きまとって悪かった。何度も振られてるのに諦めきれなくて…ほんと反省してる。今までごめんな。あと…これまでありがとう。これからはもう今までみたいに必要以上に話しかけないし、近寄らないから普通のクラス…」
クラスメイトとして仲良くやりたい…そういうつもりだったのに…。
台詞を言いきる前に、俺は楓のフルスイングの右ストレートを食らってよろめいた。
な、なんで…
そう思う間もなく、次は左、蹴り、パンチ、倒れても降り注ぐ暴力の雨あられ。
俺は振られてメンタルボロボロ…以上に体をズタボロにされた。

なんでだ?

三日後。
投稿してきた俺を見て、クラスメイトが固まった。
そしてすぐに女が悲鳴みたいな声を上げて、で、親友の拓也が走りよってきた。
「うわ、お前…なに、どうしたんだよ、それ」
「あぁ…」
「あぁじゃなくて…お前わかってる?フランケンシュタインみたいになってんぜ?」
「あぁわかってる」
何しろ、助骨に二本ヒビが入ってるし、右足は傷口に変な雑菌入ったらしく腫れ上がって歩きにくいし、左目のまぶたも腫れて目が見えない状態だし、縫った場所は七ヶ所にも及ぶし…今朝もまだ微熱あるし。
拓也は俺の体に触れようとしたが、下手にふれるのを恐れてか触れる寸前に手を引き心配そうに俺を見た。
「まぁ…理由はあとでな」
俺だって実は何故ここまでボコボコにされたのかまだよくわかってない。
一番可能性があるのはこれまでの迷惑料を一気に支払わされた…って線だろうか。
クラスを見渡すと楓…いや、藤川は登校していないようだった。
諦める前は彼の姿が朝から見えないと心配でたまらなかったものだが、今日ばかりは少しホッとしている。

机に伏せって授業時間を過ごし、昼休み。
まだ熱があるのか体は重い。やはり今日まで休むべきだったろうか。
ゆっくりと体を起こし…
「な…に」
拓也と学食に行こうとしたら、何故か目の前にか…藤川の友人である伊吹がいた。
俺にとっちゃ、いつも藤川の横にいた伊吹はお邪魔虫いがいの何者でもなかったが…よくみると切れ長の目をしたかっこいいといっていい容姿をしている。
「なんか用」
「あぁ、ちょっといいか」
「いいっちゃいいけど…飯」
「購買のパンならある」
そういって伊吹はかなり膨らんだビニール袋を持ち上げて見せた。
そこまでされちゃ行かないわけにはいかないだろう…。
俺はボロボロの体をゆっくりと持ち上げ、伊吹に続いて教室を出た。

廊下でも俺はかなり目立ったようで、いたいほど視線を感じる。
どうしても遅れがちな俺を気遣ってか、ゆっくりと歩く伊吹。
時折、振り返る彼に俺は苦笑を返す。
つれていかれた先は、校舎の端にある美術室の裏。
汚れた板や、空のペンキ缶、壊れた椅子なんかが置かれたそこはぽかぽかと暖かかった。
伊吹はまだ使える椅子を2つ引き出すと、ひとつを俺にすすめてパンの袋を開いた。
暴力の申し子と言われる藤川の親友伊吹は、当然ながら他の生徒達に遠巻きにされる存在だ。
たしか藤川が総長を勤めているチームのナンバーツーでもあったと記憶している。
全く…公私ともに(?)楓…いや、もうそれはいいんだった。
「はぁ…」
「おい、いらねーのかよ」
「あ?」
「さっきからどれ食うんだってきいてんだろうが」
「あぁ」
全く聞いてなかった。
伊吹が広げた袋の中を覗くと、惣菜パンを中心にチョコパンやメロンパンなどぎっしり入っていた。
買いすぎだろ…。
あきれながらも俺はカツサンドを手にとった。これは購買では結構な人気商品で、なかなか手に入らない惣菜パンの一つだ。
ちなみに伊吹は生クリームが挟まってて、チョコのかかったパンを手にとっていた。甘味が苦手な俺からすれば信じられないチョイスだ。

「一応きくけど」

しばらく無言で飯を食っていたら伊吹が口を開いた。
「その怪我、楓がやったのか?」
「…あぁ」
頷くと、伊吹はタンスに小指をぶつけたみたいな痛い顔をした。
「やっぱりか…。なぁ、一体、お前なにをやらかしたんだ?」
「なにって…別に」
「別にじゃねぇだろ。じゃねぇと楓があんな荒れるかよ。あいつ…街でめちゃくちゃ暴れて大変だったんだぜ?」
「え?」
伊吹が言うには、楓は街の粋がった他校生や酔っぱらったサラリーマン、他のチームのやつらと喧嘩を売りまくり買いまくりでかなりバイオレンスらしい。
まぁ、かえ…藤川のことだから負けるなんてことはありえないだろうが。
「すっげぇキレてて俺でも怖くて近寄れねぇ…。っで、何があった?」
「だから何もねぇって」
「何にもねぇわけがねぇだろうが!あいつがあんなに荒れてんだ。お前以外にどんな理由があるってんだよ」
「あ?」
それはどういう意味だ?
俺はかなりムッとした。
俺はそんなに嫌な奴か?
俺はそんなに気に障る奴か?
俺はそんなに楓の神経を逆なでする男か?
「なんでそんなに原因を俺にしたいんだよ」
「お前以外に理由がねぇからだよ」
そういって俺を見た伊吹は、俺の機嫌がかなり傾いているのに気づいて苦笑を浮かべた。
「別にお前をけなしてるわけじゃねぇよ」
「そうは聞こえない」
「それは悪いな。それより何かあるだろ、お前がそんなにされた理由が」
なぁ、と言われても…。
「俺のは…ツケを払わされただけだ」
「ツケ?」
俺は息を吐いた。
なんでこいつにこんなことまで話さなきゃいけないんだ…。
そう思いつつ、しつこそうな伊吹に仕方なく俺は99回目の告白をしたのだと言った。
すると伊吹は目を丸くして驚いた。
「へぇ…99回目かぁ…とうとうねぇ」
「とうとうって…。お前だって俺が毎回振られてんのは知ってんだろうが」
嫌みか?
「あ、じゃなくてとうとう99回目かと思って」
「ばかにしてんのか」
「だから違うって。感慨深いなって」
違う?感慨深い?
やっぱり馬鹿にしてんじゃねぇか、チクショウ。
「それで?」
「…別に。いつも通り振られた。で、殴られて…このざまだ」
「それだけか?」
「あぁ」
「ボコられるまえに、お前なんか他に言わなかったか?いつもと違うこと」
「違うこと…っていうか…」
俺は頭を掻き、99回目で楓…藤川への思いを断ち切った事を話した。
「…で、これまで悪かった、それからありがとう…って伝えたらいきなり…。って、どうした?」
伊吹が間の抜けた顔をしているのに気付いて問いかけると、彼は金魚があえぐみたいに口をぱくぱくと動かした。
「伊吹?」
「…西…野?お前…マジでそんなこと言ったのか?」
「?…あぁ」
「99回も告白して…っていうか99回目で?」
ぽかんと口を開ける伊吹。
「なんだよ」
三桁、同じ相手に振られ続けるとかみっともないし。
「今まで藤川にも随分迷惑かけてたって気づいてたし…だから潔く…」
と、そこで俺は思いっきり伊吹に殴り付けられた。
あれ?この展開、つい近頃もあったような気が…っなんてのんきに思っている間に、完全にふいをつかれた俺はふっとんで、後ろに積み上がっていたがらくたに頭を強打した。
「ぐぁ…ッ」
がたがた、バターン…いろんなモノが頭の上に降ってくる。
そして…
「なんで99回目で諦めるんだよ!このバカが!あい…は、100回…なら…って……!あい…お前を……とは……」
伊吹のよくわからない怒鳴り声を聞きながら、俺はゆっくりと意識を手放した。

なんなんだよ…いったい…

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