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Amann 03

ごめん…ひどい orz

「何かいいことがあったのね」

明るい昼間にカーテンを閉めて、眠る前の彼女は言った。
その瞳はいたずらっぽく光っていて、楽しそうで…それでいてほんの少し寂しげだった。
俺はその小さな寂しさに気づいたから優しく微笑んで、ベッドに入る彼女の頭にそっと手をのせた。
「どうなの?フランシス」
「ん。ちょっとね」
「ねぇ、あててみようか」
「ん?」
「あのドイツ人でしょう?」
ふふふっと笑う彼女に、俺はにっこりと微笑むだけの返事をする。すると彼女は「やっぱり」と言って笑った。
「あなた、前からあのドイツ人に夢中よね」
あのドイツ人…とは、間違いなくルートヴィヒの事だろう。
「そうだったか?」
「そうよ。全く正反対のタイプだと思うんだけど。不思議ね」
「違うからってのもあると思うけどね」
「あぁ…きっとそうね」
相手を意識するということは、つまり“相手と自分は違う”ということを認識するということだ…と俺は思っている。
そして相手との“違い”を探して楽しみ、受け入れるのが恋愛ってやつだ。
「ねぇフランシス。私を捨てないでね」
その言葉に俺はクスリと笑った。
「それは俺のセリフ。お前だって、良い人いるんだろ?」
「わかる?」
「わかるよ」
近頃の彼女はあまり寂しそうじゃない。一人でいる時だって鼻歌を歌っていたりする。
少し前までは、少し一人にしてしまっただけで精神の均衡を崩して、泣いたり怒鳴ったり、皿を投げたりとひどかったのだが…。近頃じゃ、一人にしても何も言わないどころか…今のように俺の気持ちが他に傾いているのを面白がることすらする。
「どんな人なんだ?」
だから彼女に誰か大切な人が出来つつあるということは、まぁ予測の範疇だった。
「聞いてくれる?」
「もちろん」
にっこりと微笑んで頷くと、彼女はそれこそまさに“恋する乙女”のバラ色の微笑を見せてくれた。

「あのね、その人ね…」

と、話し始めた彼女の言葉を要約すると、夜の街でのトラブルから救ってくれたのがきっかけで知り合ったその男は、職業が大学の教授で…52歳。既婚者。コブ付き。しかも、お腹が出ているハゲ…らしい。
それを聞いたときはすこしばかりクラッとしたが、彼女はそもそもファザコンが入っていて、彼女が好きになる男はかなり年齢が離れた男ばかりだ。
では俺はなんなのか…というと、彼女にとっては本当に寂しさを埋め合わせるための身代わりで…多分、弟みたいなものなのだと思う。
体の交渉だって、一緒に暮らし始めた頃に数回あっただけで、それ以降は全くしていないのだから間違いない。

「でもね、すごく素敵な人なのよ。すっごくやさしくてね、愛されてるなっていうか」
「…包容力がある?」
「そう!そうなの!」
うれしそうに笑う彼女。そんな彼女に“不倫なんてやめとけ”なんて事、ヒモの俺には言えるわけがない。
「彼ね、奥さんと離婚して私と世帯を持ちたいなんていうのよ」
「へぇ」
「私、娼婦なのにね。それでもいいっていうのよ。変でしょ?」
「変じゃないよ。君はカワイイし、素敵だよ」
「口が上手いのね」
「そんなことはないさ、俺は本当の事しかいわないからね」
パチリと片目をつぶってみせる。
「…フランシス、私ね、今度こそ上手くやれそうなの」
「うん。そしたら俺は捨てられるね」
内心そうはならないだろうな…と思いつつ言う。
というのも、同じようなことが以前にもあったからだ。
相手は同じく妻子持ちで…離婚して結婚しようなんて甘い事をいっておきながら、直前になって彼女を捨てた。
捨てられた彼女は手首を切ってしまうほどに打ちひしがれて…。
はぁ…。
今回は上手くいってほしいけれど…だけど、敗戦の色は濃い。
それでも俺は彼女の恋を応援している。ヒモの立場としては当然かもしれない…いや、それとも妬かなければいけないのだろうか。
「大丈夫よ」
「え?」
少し考えに沈んでいた俺は、彼女の言葉にハッと目を見開いた。
「あなたにはあのドイツ人がいるでしょ?もし、私に捨てられたら、彼に拾ってもらえばいいじゃない」
「…簡単にいうねぇ…」
君はあのカチコチの男をしらないから…なんて思うが、「フランシスなら大丈夫よ」と彼女に素敵な笑顔で言われた俺は頑張ってみようかな…なんて単純に思ってしまうのだ。

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