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カサノヴァ

彼がジリジリとしているのを肌で感じる。
彼が好む破壊行動ですら満たされない衝動。
彼はそれを俺で埋めたいと望んでいる。

それはよくあることで、気が向けば俺はそれに応えてきた。
今もまた…俺が手を伸ばせば、彼はたやすく…望んで落ちるだろう。
だがそれを許すほどに俺は甘くはない。
一方的に求められて与えるほどに甘くはない。
それが逆ならまだしも…。
プライドばかり一人前に高い彼の事、すがるを屈辱とするならばわざわざ俺を求める必要はない。
ならば何故俺なのか。
ナンバーの低いものには身を任せたくはないという気持ちはわかる。
だが他にも適任者はいたはずだ。
彼よりもナンバーが上の男ならば、俺のほかにも…それにそう…市村様がいる。
あの人は何を考えているかわかりにくいところがあるが、少なくとも市村様はグリムジョーのことを気に入っているように思う。
もちろんそれは彼の望む形で。
ただの遊びならば、彼で十分に満たされるはずだ。
俺である必要はない。

俺がグリムジョーが相手である必要がないのと同じように。

そう言ったら、彼はどんな表情を見せてくれるだろうか。
少し気になるような気がしたが、自分の感情というものをうまく捕まえることの出来ない俺は、それを口にすることはしなかった。
そしてそんな俺なのだから、“そうなるよう”仕向けた女ならまだしも、これまで感情を無視し続けてきたグリムジョーを推し量ることなど出来はしない事に気づいた。

黙っている俺を見て、何を思ったのか彼は悔しそうに唇を噛む。
トムが。
今日はやけにいじましい態度を見せてくれる。
嗜虐趣味があるわけではないが、そんな顔をされると応えてやりたくなる。

「グリムジョー」

名を呼ぶと、彼は思い切り顔をしかめて俺を見た。
濡れたような青い目。揺れる。
憎しみ、怒り、そして…。

「ウルキオラ」
「なんだ?」
名を呼ばれてまっすぐに彼を見返すと、グリムジョーはなぜか戸惑ったように目を泳がせた。
そういえば、こいつは俺の視線が嫌いだったな…と想い出す。
目をまともに合わせると、睨み返されるかそらされるかのどちらかなのだ。
「手…」
「手?」
「手、出せ」
なんだと思いながらも、言われたとおりに手を出すと「もっとだ」と言われて仕方なく彼の方に手を伸ばした。
するとその手の上に彼の手が乗った。
「何のつもりだ」
質問に答えずグリムジョーは俺の手をぐっと握りこむ。そして「引け」とまた命令した。
俺はしばらく黙って、彼が手を放すのを待っていたが…グリムジョーは動きそうに無かった。
少しだるくなった上げたままの腕。
仕方なく手をひくと、グリムジョーは抵抗もなく一歩を踏み出し…そして俺の胸に倒れこんだ。
とんっと軽い衝撃とともに胸に頭を預けたグリムジョーに、俺は柄にも無く慌てた。
思わず飲み込んだ息に気づいたのか、グリムジョーは身動ぎし、つながったままだった手に力を込めた。
そして彼の名を呼ぼうと口を開くその前に、
「抱け」
一言だけの要求をグリムジョーが口にした。

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