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031 あの日の思い出

よみかえしてません…orz
設定適当

「王もそろそろ新しい王妃を迎えられればいいのにな」
「あぁ、**伯爵あたりが乗り気だって聞いたぞ」
「あそこの娘さんか。確かにちょっと行き遅れじゃぁあるが綺麗な人だからな」
「それにしても王も義理堅いというか…こういってはなんだが、王としての役割を…」
「おいおい、言葉がすぎるぞ」

食堂でセシルと向い合って座って食事をしている時、ふと後ろにいる男たちの会話がカインの耳に入ってきた。
彼らの話題はすぐに次に(城にある牢屋で見かけた幽霊の話)に移ってしまったが、カインの頭には王が后を取らないという話題が残っていた。
現在のバロン王に后はない。以前はいたのだが、子のないまま病死しており、それ以来王は独身を貫いている。
現バロン王は在位20年を越え若いとは言えぬ年齢ではあるが、まだまだ男盛り。大陸最強とも言われるバロン帝国にめぼしい継承者がないのだから、国内外の有力者から数多く輿入れの話がやってきていると聞く。
だがめぼしい継承者がいないのは、彼に后がないからだけが理由ではない。
現在のバロン王が即位する際に、血なまぐさい継承争いがあったらしく、現在のバロン王の一族はことごとく死んでしまったことにもある。
バロン王の側近の者たちはうるさくバロン王に結婚を迫り、またあてがっているようだが、未だバロン王にはその気がないという噂。
一介の兵士でしかない彼らが世継ぎを心配するのも無理のないことかもしれない。
下世話な話題だが、実際、よく出る話題ではあるのだ。

セシルはどう思っているのだろうか。

ふと気になったカインが顔を上げると、思いがけず優しく微笑むセシルと目があった。
「なんだよ」
驚いて聞くと、彼はふふふっと笑った。それは暗黒騎士にはおよそ似つかわしくない…近頃は陰り気味だった彼本来の笑みだ。
「セシル?」
「あぁ…うん。なんだかちょっと思い出しちゃって」
「何をだ?」
自分がもっていこうとしていた話から離れてしまうのは少し惜しかったが、セシルの話も気になった。
カインが水を向けると、彼は「昔城を探検したこと…」と言った。
「二人で色々と走りまわったよね」
言われて思い出すセピア色の思い出にカインは目を細めた。
「あぁ…そうだったな。宝物庫…にはさすがに入れなかったが、牢屋やら侍女たちの休憩所に洗濯部屋…」
そんなものに一つ足を踏み入れるだけで大冒険の気分を味わっていた。
「秘密の通路を探したこともあったな」
「見つからなかったけどね」
その通路を今の彼らは知っている。無論全ては知らされていないだろうが…幾つか人目につかずに城下町に出る通路があるのだ。
「それより、覚えてない?後宮」
いたずらっぽいセシルの目。
カインはそれを受けて「なつかしいな」と答え、そしてセシルもまたカインの背後にいた男たちの会話を盗み聞いていたのだと気づいた。
そしてその会話から連想したことの違いに苦笑した。
「カイン?」
「いや…なつかしいな」
もう一度言って、もうずっと使われていない…現在は封じられている後宮を思い出した。
あの頃は…まだいつでも姫を迎えられるようにと、人は居ないがとても綺麗で整えられていた。
歴代のバロン王の中には漁色家も数多くおり、10人、20人と側室を迎えるものも少なくはなかった。
だからその後宮というのもまた広く、華やかで美しかった。
もちろん子供とはいえ、後宮は男が気軽にはいれるような場所ではなかったが…当時は囲う姫も無かったことから警備は軽いもので、彼らが兵士たちの目を盗むのもそう難しいものではなかった。
「今も花は咲き乱れているんだろうか」
セシルの言葉にカインは首を傾げる。
「あそこはもう閉じられて久しいからな…庭師も入ってはいないんじゃないか?」
姫君たちが暮らす後宮とあって、部屋はもちろんだが庭もまた美しかった。
色鮮やかな花々、蝶が舞い、鳥が歌う…。
真っ白な噴水の中央には翼の生えた女神いて、水瓶からたえることなく豊かな水を注いでいた。
「あそこで時々お昼寝をしていたの覚えてる?」
「もちろん。つい寝過ごして大騒ぎになったこともあった」
「懐かしい。また行きたいな」
「…さすがにそれは無理があるだろう」
彼らはもうあの頃のような子供ではない。
そこに囲われる姫がおらずとも、宦官でもない…警備を任されたわけでもない二人が入れるはずがない。
しかも、バレなければいい…というような立場に二人はない。
「少し寂しいね」
「そうだな。今の立場に不満を覚えるわけじゃないが…あの頃に戻ってみたいな」
暖かな日差しの挿し込む綺麗な庭で、二人して転がってうたた寝をしていたあの頃に。
だけどそれはもう望んでもかなわぬことだろう…。
叶うとしたなら…
「お前か俺がバロン王にならない限りは無理だろうな」
ニヤリと笑うカイン。セシルはそんな親友を「不謹慎だよ」と咎め、それから楽しそうに笑った。

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