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不倶戴天 02

FT 魔王と元人間
かきたいとこだけかく

「さぁて、どちらへ歩き出すか」
言いながらとりあえず正面へあるきだす。

境界を出たそこは森の中だった。適当に歩いていると森を抜け街道に出た。
まぁどちらにいっても何処かにはつくはずだ。急ぐ旅でもない。ゆっくりと歩いて行くことにした。
「それにしてもなんと眩しい昼間だ」
私は青い空を見上げて呟く、魔界では昼間でも太陽は顔を半分ほどしか出さず地を這うように進むので薄暗い。
赤から黄身を帯びた薄い青空しか見たことのない私には、目に痛みすら感じる青だった。
「ジン、お前の世界の昼もこのように明るかったか?」
横を歩くジンに聞くと、彼はこっくりと頷いた。
「そうだ」
「懐かしいか?」
「そう…だな。懐かしいといえば懐かしいが…、俺は何度かこちらには出てきているし」
「そうだったのか」
「忘れたか?俺は何度かお前から逃げ出してこちらに転がり込んだ。そして、今の俺になってからは仕事でも幾度か」
「ふむ。あまり覚えてはおらなんだ」
私の言葉に彼は肩をすくめた。
「それよりアカシャ、お前、金をもっているか?」
「金?持ってはおらんが?」
「だと思ったよ。こちらでは生きていくのに金がかかるんだ」
「それくらいは承知している」
魔界でも金銭はあったし、国民には税を納めさせていた。
ばかにしているのかと思ったが…
「ではアカシャ、お前は自分の金を使って何かを購入したことがあるか?洋服を買ったことは?食い物を買ったことは?」
ジンに問われて、私はむぅと唸った。
「…なるほど、私は金についての知識はあるが、実際にはまったく知らぬようだ」
「そうだろう」
「それで、ジンは金を持っているのか?」
聞くと彼は胸元から金で出来たネックレスを取り出した。
「なんだ、金ではないじゃないか」
「事情はアカシャと同じだ。俺にはあんたの血が1/3流れている。それに引きずられて死んだというような処置をしてきた。故に最低限のものしか持ち出せなかったんだ」
「それでそれがなんになる?」
聞くと彼は少し呆れたような顔をした。
「これは、昔領内を荒らしていた盗賊をこらしめたときの戦利品。俺以外にこれを知るものはいない」
それでもいまいちピンとこない。そんな私に彼は心底呆れたような顔をした。
「魔王…アカシャ…あんた本当に世間知らずだな」
「…よくそんな口がきけたものだな、ジン」
恨みがましく睨むが、彼は怯えた様子は見せず肩をすくめるだけだった。
まぁここで怯えられて平伏されたところで、そちらのほうが私にとっては居心地が悪いのだが、それでも魔界にいた時とは全く違う彼の態度に戸惑いを覚える。
いや…昔は生意気だったこともあったような気がする。
だとすればこれこそが本来の姿だったということか。
「何を考えている?」
「ん?あぁ、お前を俺が呼び出した時の事をな」
「…覚えてるのか?」
「いやあんまり」
実をいうとほとんど覚えていない。
何しろそれもまた大体500年ほど昔の話だからだ。それにそのあと400年は忘れてたし。
まぁそのあたりの経緯は後々話すとして…
「それよりその金のネックレスをどうするんだ?」
「だから…これを金にかえるんだよ」
「どうやって?」
「…換金屋というのをアカシャはしってるか?」
「換金屋…あぁ、なるほど、そういうことか」
私はようやく納得した。
「そういうことだ。これを売ればある程度の金になる。それでとりあえず剣や食べ物を買うことにする」
「それで?」
「…アカシャ、貴方、何もかんがえてなかったのか?」
「馬鹿にしているのか?」
「してはいない。だが、疑いたくもなる」
なんと上手い言い回しか。私は少し感心し、同時に自分の世間知らず具合を思い知った。
しかしそれを素直に認めるのも癪だから、不機嫌にもなる。
じっと私の表情を見ていた彼は、しばらくしてはぁっとため息をついた。
「なんだ?言いたいことがあるならはっきり言え」
「…とりあえず、ここに来た目的などを聞かせてもらいたいな…と」
「目的?そんなものはない」
「ない?」
驚く彼に逆に私が驚く。
「なぜ驚く?ただ私は500年も働き詰めだったからな、そろそろ休んでもよかろうと思ったのだ。これからは自由にやってみようかと」
「はぁ…」
「間の抜けた声を出すな」
「はぁ」
注意をしたというのにジンは相変わらず間の抜けた声を上げ、黒く短い髪をガシガシとかき回した。
「じゃぁとりあえずの目標は人間界の散策みたいな感じか?」
「まぁそんなところだな。出来ればゆっくりした旅をしたいな」
「しかしそれには先立つモノが心もとない」
「そうか?」
「あぁ、このネックレスを換金した所でゆっくりできるのは3日がせいぜいだろう」
「そんなものか」
私にはやはり金銭感覚を始めとした一般知識が欠けている。
それを改めてつきつけられた。
「というわけで、アカシャ。とりあえず冒険者になるのはどうだ?」
「冒険者?」
「あぁ」
そういって彼が話してくれた内容は、魔物を倒したり、野盗を倒したり、キャラバンの護衛をしたり、もしくは遺跡を探索したり、貴重な薬草なんかをとってきたりして金を稼ぐ連中らしい。
なぜ彼がそんなことを知っているのかは知らないが、冒険者という職業は魔王なんかより100倍は楽しそうだ。
にっこりと笑って「それは面白そうだな」と私が言うと、ジンはなんとも言えない複雑な顔をして肩をすくめた。

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