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トラップ

かきたいとこだけかく

世界と言うものは奇妙な具合にできているらしい。

環境ホルモンだのなんだので、女…雌がとても多く生まれるようになって百年。
それからはなぜか逆に男ばかりが生まれてくるようになった。…らしい。
女が多かった頃は、妊娠率が高かったことや、人工受精なんかの技術を利用して、女の数は多いけれど男が少なすぎるということにはならなかった。
だけど男ばかりが生まれるようになると、今度は問題が山のように積み重なった。
何しろただでさえ受胎率が下がった上に、人工受精を行って雌になるべき精子を受精させても、細胞分裂を繰り返すうちに何故か殆どが男性化してしまうのだ。
そうして男ばかりが増え出して百年がたったころ、少ない女をめぐって大きな戦争が起こった…らしい。
話によると極端に減った女性の中でもアジア系民族は本当にひどい有り様で、アジア系諸国が欧米諸国に仕掛けたらしい。
その後の100年~200年くらいのことはよくわからない。
わかるのは、文化や技術なんかを失った俺たち人類というやつらは中世あたりまで一気に退化してしまったという事実だけだ。
女性の出生率は相変わらず低い。
だけど最悪期は脱したとは言われている。


俺が暮らしているのは、パライソ(楽園)と名付けられた国だ。
少ない女性たちは、女ばかりの地区…というより村か?でくらしていて、許されたものしか彼女たちに会うことは出来ない。
よって俺たちが暮らしている普通の世界には女が一人もいないことになる。
移動手段が徒歩か馬車程度しかなくなり、インターネットなんてものが死滅した世界だからすべてを知ることなんて出来ないが、俺が知る限りにおいては周辺国も大抵女性を隔離して管理しているらしい。
そしてまた、その少ない女性をめぐっての争いが絶えない。



俺の名前はカリエ=アキラ。
母親の名前を名字に持ってくるというのが決まりだから、俺の母親はカリエということになる。
といっても、おぎゃぁと生まれて数日しか一緒に暮らしていない相手だ。覚えているわけがない。
俺は現在21で、16の時に選ばれて作った現在四歳の息子がいる。
息子の名前はモニカ=アベル。
つまりモニカと俺は寝たわけだが、彼女の顔は知らない。
おかしな執着を生まないためにお互いにマスクをして事にあたったからだ。しかも真っ暗闇の中…、ただ突っ込むだけの種馬扱いで。
ちなみに子作りの相手に選ばれるというのはかなりラッキーなことだ。普通はお偉いさんにならない限りまず女にふれあう機会はない。だから俺は本当にラッキーなケースだ。
モニカは若かったように思うが、今では記憶は曖昧だ。
子供のアベルについては、俺(父親)に養育義務があるが、基本的には育成施設に預けっぱなしで週に一度くらいで会いにいく程度だ。
冷たいなんて言わないでほしい。
大抵の父親たちはそんなもので(ちゃんと手元に置いて養育するやつもいるにはいる)、中には全く会いにいかない父親も珍しくはない。
ちなみに俺の父親は完全に後者で、名前こそ知っているものの顔は知らない。
それに性に関してはかなりふしだらな世界だから、子供のうちは小綺麗な場所で過ごした方がいい。
ここまで書くと、かなり特殊な世界だとあっけにとられるかもしれないが、もうこれが普通になってしまった俺から見ると、そう特殊にも思えない。



「アキラ」
呼ばれて振りかえると、ハヤトがこちらに手を振って駆け寄ってくるところだった。
ハヤトは俺の三つ下で、18歳。同じ養育施設出身であり、後輩、現在では軍の部下でもある。
ハヤトと旧アジア圏の名前を持つが、見た目は旧欧米系だ。
白い肌に薄い茶の髪、そして髪と同じ茶色の目だ。
身長は180ある俺よりも少し小さい。背は低くはない、いや高い方だが、やせ形で目尻の下がった優しい顔立ちのせいか“女の変わり”に見られることが多い。
そう、この悪習ともいえる話題にも触れておかなければならない。
男しかいない世界に生きているから仕方がないともいえるが、普段、人々は同性を相手に“そういう事”を行っており、恋人同士な奴等もいる(といっても固定の相手を作ることは少ない)。
男ばかりの中で生まれ、育つので、その事に対するタブー意識はなくごく普通のこと。
女しか相手に出来ないなんてやつはまずいない。
10歳~15歳くらいに手術を受けて男性器をとり、胸を膨らませ疑似子宮を持つやつもいるが、何しろ技術が中世あたりまで下がっているので危険が大きすぎる上、万年戦争中なので推奨はされていない。
ただし手術が成功すれば、一晩で億を越える金を手に入れることも可能だという噂はある。
俺についていえば、もちろん男でもOKだ。
東洋人系の黒目黒髪が珍しいせいかガキの頃こそよくケツを狙われたものだが後ろは守り抜き、現在は時々ネコを誘われるものの所謂タチ専門で恋人関係を結んだ相手はいない。
ハヤトとは時折寝る仲で、彼の言葉を信じるならハヤトがネコをやる唯一の相手であるらしい。
「どうした?」
そのハヤトに声をかけると、ハヤトは俺にへにゃっとした笑みをみせ肩に軽くふれた。
彼はスキンシップが好きな男だ。腰に軽く手をあててやると、嬉しそうに体をよせぎゅっと一度抱きついてから「それがさ」と口を開いた。
俺たちは恋人同士のようによりそって兵舎に向かう。
「メトロへの入口がみつかったんだって。落盤でいけなかったフラニー駅の先なんだけど」
「へぇ?」
「多分、明日にでも正確な報告が入ると思うけど、二駅くらいは繋がってるみたいだって」
「ほー、何かいいものでもあるかな」
「さぁ…」
俺たちの日常任務は戦争(近接国との小競り合い)と、遺跡の探索だ。
遺跡は数多く存在しているが、戦争中に金属腐食剤が大量に散布され大戦前のものは殆どが土に返ってしまっている。
役に立たないものばかりが大量にあるごみ捨て場みたいなもんだが、タバコやら酒やらポルノ雑誌なんかはいい金になる。
「トレジャーハンターのやつにあらされたあとじゃないのか?」
「それは無いらしいよ」
「何故?」
そりゃ化け物が住み着いていたからさ」
「そりゃ…厄介だな」
化け物。
それはまったく“化け物としか言い表せない”連中のことだ。
核の産物やら、動物実験の成れの果てともいわれているそれらは、今では不完全ながら食物連鎖の一部に入っており、大戦前の生物辞典にはのっていない新種が数多く報告されており、また増え続けている。
中には可愛らしい無害なのもいるが、人間を好んで襲う奴等も多い。
「どんなやつらか聞いたのか?」
「さぁ。大蜘蛛あたりじゃないか?」
「蜘蛛か。俺たちに話がまわってくるかな」
「かもね。俺たちが掃討係、そのあとで上の部隊が戦利品をたんまりいただくってシナリオだろうね」
「余裕があれば酒瓶を少しくすねられるかもな」
蜘蛛は人ひとりを丸のみできるほどに大きい。
大戦前の兵器があれば、簡単に殺せたかもしれないが、金属の使われたものはすべてだめになっている。
剣や弓、槍や斧を使っての戦いはかなり苦戦を強いられるし犠牲も付き物だ。
「ところで、アキラ」
「ん?」
「これからどう?」
そういってハヤトは好色に笑った。
それはとても魅力的な誘いではあったが、俺は首を横に振った。
「悪いが先約がある」
「え?誰?」
いきなり機嫌をわるくするハヤトだが、そういう約束ではない。
「今日は“お泊まり日”なんだよ」
「お泊まり日?」と不思議そうな顔をしたハヤトだが、やがてそれがアベルを部屋に泊める日だという事を思い出すと「あー」と言って機嫌を取り戻してくれた。
「月に一度のお泊まり日か~。ってことは今日は兵舎にもいないんだ?」
「あぁ」
普段は殆ど兵舎に寝泊まりしている俺だが、市井にもアパートを一室かりている。
あまりきれいではないし、広くもないが割に居心地のいい場所で非番の時などはそこにいることもある。
「じゃぁ、アキラの部屋は今日はトーチカが一人か」
ニヤリとする。
トーチカは俺と同室のやつだ。
年はハヤトと同じ。
小柄で可愛らしい顔立ちで小動物を連想させる。
自然、男どもからは大いにもてている。…が、彼はそういう事が嫌でしょうがないらしい。
一度強姦されそうになっていたところを助けて以来妙になつかれてしまい、今では俺が保護者がわりになってやってる。
その俺が一晩帰ってこないとなると…妙な気を起こすやつは多いだろう。
トーチカも強姦事件以来警戒心を強め、護身術もやっている。実力はかなりのものだが…
「それはやめてくれ。だが、部屋に泊まってくれると嬉しい」
俺の言葉にハヤトは苦笑し、まぁいいよと了解してくれた。
トーチカは咄嗟の時に体がかたまり、実力の半分も出せない事がままある。
そもそも内職希望だったらしいが…彼は上下が厳しく荒っぽい軍職は向いていない気がする。
来期は異動を希望しているらしいがどうなることやら。

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