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足りない背伸び

ドイツとロマーノ
友達から少しだけはみ出した感情をいだき出してる頃…かもしれない。
好きなように解釈してください。

その日の夜、俺はドイツの家にいた。
弟に引っ張られてきた。

俺は冷たいリビングに一人で居て、ラグの上にぺたんと座り込んでいた。
弟はいない。多分ドイツの寝室にいると思う。
“一緒にいこうよ~” なんて言われたけれど、さすがにそれはごめんだった。
帰ろうかと思ったけれど、来るときに感じた夜風の寒さが嫌で動かない。
暗い部屋で息を殺してみる。
昼間は暖かな日差しが投げかけられる窓には厚いカーテンがかかっている。
時々甘い匂いをさせているキッチンの火は消えていて、犬たちは何処に居るのか気配がない。
耳をすますとカチッカチッと時計が規則正しく時刻を刻んでいた。
「さみぃ」
ブルリと震える。
闇の中にずっといたせいか、少しずつ目が慣れてきた。
光源はカーテンの隙間から差し込む街灯の光と、待機中のDVDデッキ、そしてデジタル時計。
モノクロの世界で、俺はハンドクリームの入った楕円のケースをテーブルの上に見つけた。
多分白いと思われるキャップをくるくる回してあけると、闇色のクリームが見えた。
イマイチどれくらい入っているのか目測がつかなくて、入れた右手にベッタリとクリームがついた。
左手に持っていたケースをぼてっと落として…横に倒れて中身がこぼれたような気がしたけれど気にしないで、両手でクリームをぐりぐりした。
クリームは多すぎて、俺の手はべちゃべちゃになってしまった。
ほんの少し香るハンドクリームの匂い。
何度も何度も手をこね合わせて、それでも全くどうしようもなくべちゃべちゃで、体温が奪われて指先がつめたくなった。
そんなことをしてたらだんだん悲しくなって、全然自分でも意味が分からないのだが涙が出てきた。
俺は一瞬泣くまいと思ったのだが、すぐになんで我慢しなきゃいけないんだと思って、素直に涙をポロポロ流すことにした。
そしたらおどろくべきことに、涙は次々にあふれてきた。
「ふ、ふぇ…」
嗚咽をあげて泣いて、手で顔を覆いたいと思ったら手がべちゃべちゃなのに気づいて、それでまた悲しくなった。
わんわんしばらく泣いていたら、リビングの扉が開いてドイツがやってきた。

「何を…してるんだ?」

驚いたようなドイツの声。
それでも構わず泣いていたら、ドイツは近寄ってきて「うわっ」と声を上げた。
多分、こぼれたハンドクリームを踏んでしまったのだと思う。
ざまーみろ。
だけどドイツはそれについては何も言わずに、俺の傍にしゃがみ込むと「どうしたんだ?」と心配そうに言った。
だから俺は言ってやった。
今、俺が置かれている切実な状況を。
何故か夜中に弟に起こされたところから、手がべちゃべちゃになって涙が拭えないって所まで。
全てを話し終わると、ドイツはため息をついて「それなら電気をつければいいし、俺を起こせばよかったし、手は洗えばよかっただろう」と言った。
そういうことじゃねぇと、とりあえず叫んでいつものようにムキムキだのジャガ野郎だのと罵声を浴びせかけた。
そんな俺をドイツはいつものように怒らず、寧ろ困ったような目で見つめると「とりあえず手を洗おう」と言って俺のべちゃべちゃの右手を握って立ち上がると、次に俺を引っ張って立ち上がらせた。
その時のぬちゃっとした感触が気持ち悪くて、俺はまた大声をあげて泣いた。

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