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かくも身勝手に春は謳う

できてないけどいちょいちょしてる。
読み返してない…ごめんなさい。

飲み屋でのバイトを終えたマンションに帰ってくると、扉の前にはセシルがちょこんと座っていた。
季節は11月。まだ本格的な冬とは言えないが、それでも朝晩は冷え込む時期だ。
セシルはいつからまっていたのかガチガチと震えていて、彼女の見せた笑みは寒さにこわばっていた。
「セシル」
名前を呼ぶと、飛び上がるように立ち上がった彼女が俺に抱きつく。
そんな愛らしい姿に、俺の心臓は高鳴りっぱなし。傍から見れば恋人同士にしか見えない俺たちだろうが…
「あーーー、さむかったー」
残念ながら、俺とセシルはそんな甘ったるい関係じゃない。
俺的にはそうなりたい…なんて思わないこともないんだが、彼女が全くそういう気がないということを知っている“親友”の身としては、下手に一歩を踏み出せない。
俺は高鳴る鼓動をため息で紛らわし、「なにしてんだよ」とそっけなく切り出す。
すると彼女はあっさり俺から離れ、さっさとドアを開けろと催促する。
仕方なく俺は手に持っていたキーで部屋の扉を開ける…と、彼女は家主よりも先に部屋に入っていった。

勝手知ったるなんとやら。
彼女は歩く先々でパチパチ電気をつけ、いきあたった部屋の暖房までつけて、最後にテレビの電源を入れた。
そして彼女はソファに三角座りする。
さきほど玄関の前でそうしていたように。
「で?」
「あ、この映画、もうテレビでやるんだ」
違う答えに少しだけむっとしながらテレビを見た。
「あぁ、もうすぐ“2”が公開だからだろ」
「なるほどー。ところで、カイン。僕、おなかがすいたんだけど」
「俺はバイト先で食ってきたんだけど」
「僕には関係ないしー」
さっさと何かちょうだい。
そんな感じで手をふるセシルにまたもや少しだけムッとし、気づいた。
さっきから妙に此処にやってきた理由を避けたがっているのは…多分、彼女が兄と喧嘩したからなのだろう。
彼女は頭に馬鹿がつくブラコンで、そしてその兄は頭に大馬鹿がつくシスコンだ。
喧嘩したくらいで飛び出してきたんだな…という事実に少し呆れ、そして俺の部屋に飛び込んできたのが妙にうれしい。
きっと彼女の馬鹿兄は今頃頭が冷えて、必死になって彼女を探していることだろう。
そう思うと、またちょっと愉快になった。
我ながら性格が悪いと思う。
だがしょうがない。これが俺だ。
俺は「ちょっとまってろ」と彼女にいいキッチンに行くと、冷蔵庫の中から昨晩つくったチキンスープを取り出した。
これにラップにくるんでおいた冷や飯を入れて、雑炊もどきをつくる。
そんなことをしていたら、もうとっくに夕飯は済ませたはずなのに、小腹が減ってきた。
俺も少し食うかな…。そんな事を思いながら鍋ごとセシルの元に運んだ。

「おいしい!」
「うまいに決まってるだろ」
二人並んでソファを背にテレビを見る。
やってる映画は所謂SFもの。なんか…ゲームの世界が暴走して現実世界に影響がでてくるー…とかって話。
まぁ基本的には話の筋よりも、アクションを見せる映画だ。
割りとセシルが好きなタイプの映画。
ぼけーっと見ながら、チキンスープ雑炊もどきを食べていると、「あ」とセシルが口を開いた。
そして「カインの好みのタイプの子」と言って、画面を指さす。
そこにはゲームの世界の王女様がいた。
世界の支配者である女王の娘。
真っ白な肌に、波打つ長い銀の髪をした妖精みたいな美少女。
つまりどこかセシルに似た…女。
「カインってさぁ、なんかこう…人間の匂いがしなさそうな感じの子好きだよね」
ちらっとセシルを見ると、彼女はレンゲでうまそうにチキンスープ雑炊もどきを口に入れている。
それを見ながら「…そんなことはない」と告げる。
「うそだー」と笑って映画をじっと見つめるセシル。
雰囲気はいい…んだけど。
彼女が全く俺のことを男として認識していない以上、手を出すこともできない。
これは俺がヘタレとかいう意味じゃなくて。
友達としてしか見てくれない相手を口説く…なんて、並大抵の度胸があるやつじゃなきゃできないだろう。
それがマジな相手なら特に。
俺のように動けなくなるのは当然だと思う。
大きくため息をつくと、セシルは何を勘違いしたのか「もうすぐ兄さんが来るころだね」と笑った。

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