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人形をやめたお姫様

NL予定 続きかきたいなぁ…

これまで親の言いつけ通りに…一度も逆らったことのなかったヒマリは、来年に国の王子と結婚する事が決まっていた。
ヒマリは現在15才、そして王子は18才。ヒマリは金の髪が美しい少女、王子のアルベルは王位の継承権は低いものの、武に優れ将来は将軍職を嘱望される軍人。
二人の結婚は両家の望むもので、当人たちも特に反対をしなかった事から着々と準備が勧められていた。…のだが…。



これまでお母様やお父様の言う通りにダンスやピアノなんかのレッスンをやってきたわ。礼儀作法は完璧だし、貴族の娘でありながら料理だってお裁縫だってできるわ。
一度だって逆らったり、悲しませたりしたことはないわ。
だから二人とも私のことを自慢の娘だと言って下さる。
アルベル様との結婚を楽しみにしてくださっている。
それでいいのだと思っていた。
一度も疑問を持たなかった。

だけど…。

彼女は手元にある本に目を落とした。
それは市井にある大きな本屋で見つけたものだ。
題名は『プリンセス・リリアナ』。愛らしい題名に惹かれ、内容も確かめずに買った本。
それは愛らしい姫が、魔女か何かに意地悪をされて、そこを素敵な王子さまが助けてくれる……というものではなかった。
その本のお姫様は、“お姫様”としての自分に嫌気がさしメイド一人を共に城を抜け出し大冒険をする物語だった。
ヒマリは最初こそ姫の行動に眉を潜め、なんて乱暴な…とあきれ返っていたが、やがて自分がどんどん姫に惹かれていくのに気づいた。
なんて素敵な女性かしらとヒマリは思った。
彼女の性格や行動は、理想と聞かされてきた女性像からは離れていた。
しかしそんなものよりも何百倍も彼女は素敵だとヒマリは思った。
そしてそんな彼女が毛嫌いしていた“お姫様”にぴったりと自分が当てはまることに気づいて恥ずかしくなった。
“世間知らずで無知なお人形なんてごめんだわ”
彼女の言葉は、ヒマリの胸に痛かった。

ヒマリは何度も何度も本を読み返し、そしてある日、彼女は決心した。
“私はお人形さんはやめるわ”
そう決めた彼女は早速行動を起こすことにした。
参考にするのはもちろん『プリンセス・リリアナ』だ。
お姫様は市井に出て、自分の姿が豪華過ぎることとお金のことを全く知らないことに驚いた。そして、一目見てお金持ちの子どもだとわかるお姫様はその時、悪い人にさらわれてしまう。
自分はそんな失敗はおかせない。
ヒマリはぎゅっと拳を握り締めると、女中たちの洗濯物の中から洋服を数着くすねた。
かなり罪悪感のあることで、悪いことを一つもしたことのない彼女にとっては人殺しにも等しい恐怖だったがなんとかやってのけた。
これでなんとか普通の町娘に見てもらえるだろう。
そう安心すると、今度はお金を調達したいと思った。
だが残念ながら貴族の子女である彼女には現金を所持することは許されていない。だがヒマリには秘策があった。
それは彼女の持っているアクセサリーなどを市井で売るということだ。
それでお金が調達できる…はず。
次に考えたのは協力者だ。
物語のお姫様はメイドを連れに選んでいる。
幼なじみ同士でもある二人は、一緒にいろんな苦難を乗り越えていくのだ。
だが彼女には幼なじみはいない。それにもう一つの理由もあってメイドを共につれていくのはやめようと思っていた。
その理由とは、物語の中でメイドが悪党に捕まり、ムチ打ちにされたことにある。
もちろん自分の冒険でもそんなことが起こるとは思わない。それに十分注意するつもりではある…。だけど、万が一そんなことになったときに女性を共に選ぶのは少し問題があるような気がしていた。
そんな彼女が自分の共に…と目をつけたのは、自分の護衛をしてくれている騎士の一人だった。

 *

「あの、ねぇ?」

声を掛けられたリオンは驚いた。
彼は彼女の護衛になって三年。その間、ヒマリから直接声を掛けられた事はなくこれがはじめてのことだったからだ。
リオンは目を見開き、そっと部屋の中を見渡して侍女が席を外しているのに気づくと少しだけ気まずくなった。
「あの」
もう一度声を掛けられ、あわてて「はい」と返事をすると、彼女は何かを口にするのを憚るように口許に手を当てた。
「ヒマリ様?」
愛くるしい少女が自分の前で顔を赤くしてもじもじとしているのを見ると、まだ若いリオンとしては自然と体温が上がってしまう。
そしてありもしない想像を働かせてごくりと唾を飲んだ。
「あ、あの…」
「は…はい」
緊張するヒマリにつられるように、リオンの声が上ずった。
― まさか愛の告白…なんてことはないよな。彼女はそりゃ愛らしい人だけど、王子との結婚がすでに決まっている。
― それに第一、まともに話した事もない相手だし…
「お、お願いがあるのですが…」
「お願い?」
― まさかまさか…私を此所から連れ去ってください…なんて言う気じゃないだろうな?王子様との結婚が嫌だから連れ去ってくれ…とか…いやいや、ヒマリ様に限って…!
― あぁでも言われたらどうしようか。
彼は焦った。
それというのも彼、リオンが騎士の道を歩むことになったのは、物語の中の魔王の花嫁になる娘をさらう騎士に憧れたからなのだ。
もちろんヒマリの場合は魔王ではなく、家臣らからの評判がよく国民からの人気も厚い人だと言うことはリオンも承知している。
そしてそんな中、彼女を連れ去ってしまえば、自分が悪役になってしまうことも…少し考えればわかったはずだ。
だがこの時、リオンはヒマリに触発されてひどく混乱していたし、彼女のなにやら必死な様子に婦女子は守る…という騎士道精神をひどく刺激されていた。
だからこそ彼は言ってしまったのだ。物語の中の英雄になったつもりで。
「なんなりとおっしゃってください。私にできることならば何でも叶えてみせます」
後々何度も思い返しては後悔することになる言葉を。

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