スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

022. コントローラー持ち寄って

珍しくセシル視点

珍しく苛立っているなぁ…と気づいたのは、二時間目のお昼寝から帰ってきた後だった。
何があったのかは知らないけれど、眉間に渓谷を築いて口を一文字に結んでいるカインは結構怖…いや、面白い?
うん。面白い。

「ねぇ、カイン!悪徳金融業者ごっこしようか?」

前の席の椅子に逆向きに座って背もたれに腕を置き、カインの顔を覗き込むようにしてニッコリ言うと、彼は冷たい目で僕を見、そしてフイと視線を逸した。
やはり機嫌が悪いのだ。
確信して考える。
さて、どうしよう?
放置するのもなかなか面白い。
煽ってやるのも楽しい。
だけど今回はかまって欲しいから、三番目を選ぶつもり。
つまり適当にはぐらかす方向で。
実は四番目にストレス解消ってやつもあるんだけれど、それはまた今度。
「やろうよ。教頭あたりの家の玄関でガンガンやるの」
「ガンガン?」
「そう」
ちらりとこちらを見たカインににっこりと微笑んで見せる。
カインはますます機嫌が悪そうな顔になったけれど、僕の話は聞いてくれるようなので話を続ける。
「あのね、『おら、出てこんかい!』とか『いるのはわかってるんだ!』とか言いながら、玄関のドアをガンガン叩いたりけったりするの」
僕の言葉にカインは間髪入れず「アホか」と返してきた。
「なんで?楽しそうじゃん」
「そんなこと楽しいわけ無いだろう」
「楽しいよ、きっと。ほら、カインが黄色のアロハ着てさ、僕が赤のアロハ着てさ、サングラスかけてたるたるなズボン履いてー…」
「やんねーって」
呆れたようにため息をつく彼からは少しだけ不機嫌が抜けている。
そんなことに気づかない僕ではない。
まぁ悪徳金融業者ごっこができないのは少々残念なんだけれど…。
絶対面白いと思ったんだけど…。…っていうか、たいてい僕が面白いと思う事はカインに却下されるんだよね。
なんでなのかさっぱりわからないんだけれど。
「じゃぁ…あれ、やろうよ。壺売る奴」
「壺?」
「絵画でもいいよ」
「デート商法ごっこかよ」
「そう!やろ…イタッ!」
デコピンを食らった。
しかも結構痛い。
痛いと思ったら、ひどいDVを食らったような気分になって少し涙が出た。
するとカインが気づいて頭を撫でてくれた。
「やっさしーなー」
感動しながら言うと、
「当たり前だ。そういうところをちゃんと周りの女子に言っとくように」
そんな言葉が返ってきた。
その反応はカインらしくて…でもちょっとタイミング的に違う気がする。
うーん…ってことは、女の子関連でトラブルがあったってことだろうか。
うん。多分それだ。間違いない。……ますます愉快。
「じゃぁ、強盗ごっこ!」
「それ“ごっこ”じゃなくなるだろ…」
「わがままだねー」
「わがままじゃねぇだろう」
ますます呆れた声。そこからはもういらだちは感じられない。
お手軽だなぁ…なんてことは思っているだけで絶対に口にはしない。
カインには嫌われたくない。
怒られるのは平気だけど。
「じゃぁさ、駅前のパーラーにいかない?」
「パーラー?」
「喫茶店?」
「パーラーっていうのか?」
「わかんない」
首を傾げると、カインは反対側に首を倒した。
「で?パーラーにいくのか?」
「行こうよ。プリンアラモード食べに」
「そこのが美味いのか?」
「……わからない」
どうしよう。
一度も食べたことがないからわからない。
むしろそんなパーラーがあったかどうかすらよくわからない。
あったかな?いや、なかったかも。うん。無かった気がする。
どうしよう。
助けを求めるようにカインを見ると、彼は少しイラっとしたようだった。なので反射的にへらーっと笑うと殴られた。でもデコピンよりは痛くない。
「じゃぁどうするの?」
パーラーもだめっぽぃので聞いてみると、「じゃぁ、俺の家でゲームやるか」と言った。
その時のカインの顔は、もう完全にいつもの顔で…なんだか嬉しくなった。
そんなカインが、
「うん」
やっぱり扱いやすいなぁ…と思ったりする。
だけど口には出さない。
って、こんな風に言うと、めちゃくちゃ性格が悪いみたいだけれど、もちろんそんなことはない。
これは所謂親友同士の馴れ合いってやつ。
きっとカインも僕のことを“扱いやすい”なんて思ってたりするんだろうなぁ…と思ったりする。
もしかしたら全く逆の事を思っているかもしれないけど…まぁそれはどうでもいい話。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。