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髑髏のランプ 02

局部的な大雨や局部的な日照りによる飢饉。家畜に広がった伝染病に、未だ効果的な治療法のない疫病の流行。そして魔物の活性化。
まるで天に呪われているかのような事態に、今や王都は存亡の危機に瀕していた。
あるものは神に祈り、あるものは異世界からの神子を召せんとし、あるものは他国に攻め入ろうと主張し、あるものは邪教に救いを求めて生贄を捧げ…そしてあるものは国を捨てる。
そんな末期的な状況の中、国の王は魔女を国の兵士たちをあらゆる場所に送り『魔女』を探させることにした。
魔女は国の歴史の中で何度も現れ、その度に奇跡を起こして国を助けてくれている。
一番近い記録では150年前だが、魔女は不死といわれている。
きっとこの国の何処かに居るはずだ。

 *

第三次魔女捜索部隊の中に火村はいた。
火村は中程度の貴族の生まれ。剣術、馬術、そして知略に富む彼はぐんぐん出世し、一時は中隊を取り仕切る地位まで最年少で上っていたが、上司とトラブルを起こし、半ば左遷の形での捜索部隊参加だった。
だが火村は腐らない。
あまり愛想は良くないと言われる彼だが、決して冷たい人間ではない。
金と権力の力だけで成り上がった貴族連中とは違い、彼は兵士の視点で物事を見ることが出来るし、無茶な注文をつけたりはしないし、作戦や行動は取らせない。
態度はそっけないが、物事の大局を見ることのできる彼は、兵士達に優しく彼を慕う人間は多い。

その彼は…今、森の中を一人進んでいた。
此処に来る前は15人を連れいてたのだが、突然の濃霧に包まれたかと思った次の瞬間には、彼は一人になっていたのだ。
あまりに唐突な出来事に火村は緊張したが、同時にもしかしたら『アタリ』だったのかもしれないという予感も強く感じていた。
それが証拠に魔物の気配が消え、霧が出る前に比べてシンと静まり返っている。
豊かな森だ。
腐葉土がつもっていて、きのこがあちこちに顔を見せ、また実をつけた木々も多い。それに小動物のフンも落ちていることから、此処には野生動物が暮らしていることがわかる。
こんなに豊かな森がまだこの国に存在していたのかと火村は驚いた。
どこも魔物に荒らされ、その瘴気でもって腐りかけていたというのに…。
サラサラという音を耳にし、そちらに足を向けるとこれまた綺麗な川が流れていた。
「王都の水は浄化しなければ飲めないほどだというのに…」
此処はとても透明で澄んでいて…そして魚が泳いでいる。
「なつかしいな」
火村はポツリと呟いた。
そう遠くない昔…。こんな綺麗な川や豊かな森は何処にでもあったはずなのに。
悲しいような悔しいような気持ちを押し殺し、辺りを見渡した火村はその川から人工的に水路が引かれているのを見つけた。
気になってそちらに近づくと、水路沿いに獣道のようなものがあった。
明らかに誰かに踏み固められて作られたものだ。
火村は自然とそれにそって歩き出す…と、またもや霧がサッと彼の周りを取り囲み…そしてまた現れた時と同じようにサッと消えた。
これも魔女の力なのだろうか?
左右を見渡した火村は、正面に目を戻して驚いた。
「家…?」
ついさっきまでは絶対に無かったはずの家が…唐突にあらわれた。
小さな…しかしとても手入れの行き届いた物語にあるような家。その家の前には畑があり、水路の先には池が作られていた。
「魔女の家か…?」
細かな石を沢山積み重ねて作られた壁、そして赤レンガ色の屋根。その屋根の上には煙突が突き出ていて…家全体を細い蔓草が覆っている。
あまりにも長閑すぎる光景に火村は一瞬ぼうっとしてしまった。
あまりにも平和な光景だった。
あまりにも。
よろめくように一歩を踏み出し、その家にゆっくりと近づく。
と、その途端、後でパキリと小枝が折れるような音がし、火村はハッと振り返った。
するとそこには洗濯カゴを持った純朴そうな青年が立っていた。

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