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恋しい背 03

携帯でうってたので…あー…

勢いよく外に飛び出してはみたが、すでに彼女の姿はどこにもない。
チクショウ。
どっちに行きやがった?!
右か?左か?
人が多すぎてわからない上に、タクシーに乗られていたら完全に手遅れだ。
とはいえ、此処は彼女の地元じゃない。行ける場所は限られている。
俺は携帯電話を取り出すと少し迷ってからフランスに掛けた。

フランスに聞き出した彼女の泊まっているホテルは、会場のすぐ近くにあった。
高級とは言わないがリーズナブルでもないそこそこのホテルは彼女らしいチョイスだといえる。
エントランスをさっと通り抜けた俺は、エレベータに乗り15を押した。
これで彼女が部屋にいなけりゃ俺はただのバカだが…他に行く場所もないはず、おそらく居るだろう。
居たら…居たら、“言い過ぎた”って言えばいい。そして“悪かった”って言えばいい。
謝るのは苦手だけど…、相手はあのドイツだけど…、やっぱり今回は謝らなければ男が腐る。
口の中でもごもごと謝る練習をして、よしと小さく気合いを入れた。
ついでに鏡になった箱の壁で少しだけ姿を正した。

まっすぐに延びる明かりを落とした廊下。部屋の番号を確かめつつ進む。
そして2つ分かれ目をパスした先に目的の部屋はあった。
俺は扉の前で軽く胸に手を当てた。かなり鼓動が早くなっているのがわかる。
ドキドキドキドキ…
ドアを開けてもらって、あとは謝るだけ。
“さっきは言い過ぎた。悪かった。じゃあ、それだけだから”で、あとは背を向ければいい。
それだけだ。
それだけだ。
自分に言い聞かせて、部屋のドアをノックする。
ドンドンドン。
しばらく待って、もう一度ドンドンドン。
…無反応。
もしかして…戻ってなかったか?
嫌な事が先伸ばしになっただけなのに、ほっとしてしまう。
まぁ…明日も会議で顔を会わせるし…その時でも…と思ったとき、中から足音が聞こえ俺は一気にまた緊張した。
開ける前にきっと覗き穴から確認すると思った俺は一歩下がって、少しだけうつむいた。
やばい。マジで緊張してきた。
足音は扉の前で一旦停止し、数秒の沈黙ののちガチャリと開いた。
そして顔を見せたのは、先ほどのパンツスーツの上着だけを脱いだドイツ。
相変わらず白い顔をした彼女の目元は赤くなっていて…俺はギクリとした。
もしかして泣いたのか…?
「なにか用か?」
「あ、いや…用ってほどでもない…んだけど」
じゃなくて!
「さ…さっきは…」
「あぁ…気にしないでくれ」
「いや、あの…」
「無理に謝る必要はない。悪かったな、せっかくの楽しい昼食に水をさすようなことになってしまって」
「ちが…」
ちょっと待てよ。
謝るのは俺の方だろ?
悪いのは俺の方だ。
せっかく楽しいはずだった昼食を台無しにしたのだって…ドイツじゃない、俺だ。
なのに…
「ロマーノ?」
「なんで謝るんだよ!!」
気づけば怒鳴り付けてた。
「す、すまなかった。何か気に…」
「さわるような事をしたのは俺だろう!」
なんで謝るんだ!!
あたまがカッカする。
「適当に謝っとけば、俺が納得するとでもおもってんだろう!」
「そんなことはないっ!」
「だったら…」
言いかけてやめたのは近くの部屋の扉が開けられたからだ。
チッと舌打ちをして、その扉を睨み付けているとドイツが俺の腕を引いた。



「……」
「……」
部屋の中、俺とドイツはしばらく無言で立っていたが、やがてドイツがハッとしたように俺の腕から手を離すと「茶を入れる」と言って部屋の奥へと入った。
「…んだよ」
俺は悪くねぇぞ。……ホントは悪いけど。

部屋はごく一般的なホテルの一室。
右手がクローゼットになっていて、右手が浴室。
奥にはベッドと簡易な応接セット、事務机、小さな冷蔵庫とその上にティーセット…。
ゆっくりと中に入った俺は茶を入れるドイツに背を向ける形でソファに座った。
ずずっと沈み込むソファ。
正面の壁に飾られたカラーコピーの絵画を見、テレビのスイッチを入れた。
ボリュームが最小まで下げられたそれはニュース番組だ。
聞こえるか聞こえないかくらいに、少しだけボリュームを上げて…ため息をついた。
何やってんだろうな…俺は。
何で謝るはずが逆に謝られて、それで怒鳴り付けてるんだ?
我ながら意味がわからない。
昔からスペインに『ロマーノはもう少し素直にならなあかんなぁ』とかフランスに『可愛げねぇ』とか言われてきたし、自分でもひねた性格だとか思ってきたけど…マジで始末におえねぇ…。
しかも、
「大丈夫か?」
「…あぁ」
心配されるってどんだけだよ…。
ますます落ち込む俺の前に、紅茶が置かれた。
「インスタントだからまずいかもしれないが」
「あぁ」
琥珀のそれをじっと見つめ、俺は自己嫌悪の局地でもう一度気合いを入れた。
もう一度仕切り直しだ。
今度こそ謝る…と、思ったのに
「ロマーノ」
口を開きかけた所で出鼻をくじかれた。
「あ?」
顔を上げると深刻な顔をしたドイツ。
彼女は背筋を伸ばし両手をぎゅっと握りしめていた。
「せ、せっかくだから言ってしまいたい事があるんだが…いいだろうか」
「?あぁ」
「そ、そうか」
彼女は落ち着きなく視線をさ迷わせゴクリと唾を飲み込む。
なんだ?
俺は一体何を言われるんだ?
ピンとはりつめた空気に俺はびくついた。
緊張したドイツってのはそれだけで俺をびくつかせる。なんだか嫌な事が起こりそうで。
これは大戦中のトラウマかもしれないが…。
「その…だな。私は…いや、お前は…昔から俺を嫌っていただろう。それはいい…いや、よくは無いが…あーつまり、私は…」
かなり焦っているらしい彼女の言葉。
?何が言いたいんだかさっぱりわからない。
首をかしげていると、彼女はちょっとまってくれと手を上げ、自分の分のお茶を一気に飲み干した。
あまりに勢いよく飲んだせいか、ケホケホと咳き込み真っ赤になる。
本当にどうしたんだ?こいつ。
「ドイツ?」
少しだけ心配して声を掛けると、「ま、待ってくれ。言わせてくれ」と彼女は慌てたように言った。
そして彼女は真っ赤になったまま、スーハーと何度か大きく呼吸をして口を開いた。
「い、言うつもりはなかったんだが、やっぱり、い、言わないといけないと思う…から…その。め、迷惑だということはわかってるんだ。だけど…あー…その…つまり」

「す…好きなんだ!お前がっ!む、昔から!」

「…は?」

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