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恋しい背 02

ロマーノが割りとひどい

ホテルの一階に入ったレストランでは、昼は完全にバイキング形式となっており、近くで会議のあった俺たちを含めた各国がちらほら顔を見せている。
会議初日は昼までで、明日が本番といったところ。
俺はスペインと一緒に昼食を取りに二人で来たのだが、途中でバカ弟がドイツとともに合流してきて(日本は上司とともにアメリカと昼食らしい)、今は町並みを見下ろす(一階だが床が高い)窓際の四人席についている。
弟はあいもかわらずパスタ、パスタ、パスタ。
まぁ俺も好きだけど、割と高価なホテルのバイキングでは食べる気がしない。
そういう訳で、俺の前にある皿にはラムのトマト煮込みやニシンのパイ包みなど量は少な目に種類を多くとっていた。
スペインは大量に“寿司”をとってきて大満足みたいだ。
弟とスペインは、さっきからのべつまくなしにしゃべっていて煩いほど。
わざわざ会話に参加する必要もないと、俺は食べるのに集中していた。
そうして食事に一段落がついた頃、バカ弟とスペインはドリンクバーで色々とミックスして新しいジュースを作るのだと言って席を離れてしまった。

必然的に残されたのは、俺とドイツ。

今の今まで居ない人間として扱ってきたが、さすがに二人きりにされるとそうもいかない。
しぶしぶ顔を上げてちらと彼女の皿を見ると、それはグリーン一色。つまり葉物の野菜サラダばかりだった。しかも殆ど手が動いていない。
生意気にも草食動物にでもなったつもりか?
何故か無性に腹がたって「そんなんで足りるのかよ」と声を上げると、彼女は俺が話しかけた事に驚いたのかフォークを皿に軽くカチンと打ち付けた。
「あ、あぁ。少し食欲がなくてな」
「ふぅん」
ダイエットなんて似合わねぇよ、ムキムキ男女…と言おうとしたが、その前に彼女の豊満すぎる胸が目に入り慌てて視線をそらした。
「ちゃんと食わなきゃ、体力がつかないんじゃなかったか?“隊長殿”」
変わりにそんな嫌みをいってやると、彼女は傷付いたように顔をしかめた。
「今は時代が違う」
「あぁそうだな。あの頃のガチガチな筋肉が少しは離れたみたいじゃねぇか」
仮にも婦女子相手に、よくぞ俺がこんな口をきけたものだと我が事ながら驚嘆する。
しかし相手はドイツ。自分に驚きはするが、彼女への罪悪感はない。
「…訓練は欠かしていない。さすがに訓練に割く時間は減ったが」
「だろうよ。相変わらずちっとも女らしくねぇ」
ふんっと鼻を鳴らしてやる。
「けど、腑抜けたのは間違いねぇんじゃねぇか?今日の会議での発言、聞いてたぜ?何度もつっかかった上に数字の読み間違い。なんだよ、ありゃ。フランスにすら同情の目を向けられてんの気づいてたか?ったく、経済大国のドイツ様がなぁ~?あんなんで大丈夫なのか?」
妙に滑らかな舌。
彼女が会議中にらしくないミスを連発したのは本当だが、少し言い過ぎたかもしれない。
きっと怒鳴られる。
そう思って顔を見ると、ドイツは顔を真っ赤にしているどころか、真っ青にしていた。
今にも倒れてしまいそうなほどに…蒼白に。
「あ?」
なんだ?その顔は。
俺は初めて見る彼女の表情に戸惑った。
真っ青になった顔、小さく震える唇、白くなるほどに握りしめられた手…
「なん…だよ」
俺は大いに動揺、いや狼狽していた。
たしかに酷い口を利いた自覚はあったが…だからといって、ドイツがこんな表情をするなんて思ってもみなかった。
っていうか、思うわけがないだろう。
彼女はプライドの高い、強い女だ。だから…、きっと何か言い返すと思っていた。
“会議で半分寝ていたお前には言われたくない”とか“いまだってお前を片手で伸すことくらい簡単だ”とか見下すようなムカツク顔で…なのに…なんだよ、その表情はっ!
そんな顔をされたら俺が悪いみたいじゃないか…(実際俺が悪いのだが)
「な、なんだよ。俺に慰めてでもほしかったのかよ」
「そ、そんなわけはない!」
「だったら何なんだよ、その顔は!」
だめだこれ以上は何もいうな。
「た…ただ今日の会議は…たしかにひどかった自覚が…」
むっつりと黙りこめばそれでなんとかなる。
「っで?今さらか弱い淑女のふりか?そりゃ一世紀ほど遅いんじゃないか?」
舌が全く言うことを利かない。

「第一全く似合ってねぇんだよ。きめぇ」

最悪な事を言ってしまった。
特に最後の一言…完全に余計だった。
自分でも青ざめていると、ガタンと彼女が席から立ち上がった。
ドイツは青ざめている俺に何か言いたそうにしていたが、結局なにも言わず…逃げるようにレストランから出ていった。

最悪だ。
俺。

たしかに彼女の事は到底好きになれないが…あれは完全に言い過ぎた。
あそこまで攻撃的になる必要はまったくなかった。
ドイツだから涙こそ見せなかったが、他の女なら間違いなく涙をこぼしていただろう。
あぁ…最悪だ。
イタリア男の風上にも置けない。
自己嫌悪にズーンと沈んでいると、
「兄ちゃん…」
非難するような弟と、
「ロマーノ、今のはあかんで」
スペインの声。
いつ戻ってきていたのかは知らないが、バッチリ聞かれていたらしい。
俺は煩いとも言えず黙り込んだ。
自己嫌悪が募る。
罪悪感に胸が張り裂けそうだ。
それに立ち去り際の彼女の表情。
シクシク胸が痛む。
これは駄目だ。
これは放置してたら数日…いや、半月は引っ張る。
クソ…なんで俺がドイツなんかのために、ドイツなんかのために…。
あーーーっ!
「おい!会計は任せたぞ」
俺は勢いよく立ち上がると、彼女を追いかけるため走り出した。

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