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ROYAL BOX 05

展開を焦りすぎた気がする

「ちょ、ちょっとまてよ!ルートヴィヒ!待て!ウェイト!待てってば!!!」

ルートヴィヒは俺の言葉に従わず、ドンドン下へと下っていく。
「ちょ、ほんとに待ってって!ルートヴィヒ!!!」
もう何階分下ったかわからない。
ヤバイ。これ以上は絶対にヤバイ!
「お願いだからッ!」
俺はもう泣きそうだ。
試練の洞窟なんてものは下に行くほどどんどん敵が強くなる仕組みになっている。
そんな洞窟の中、俺たちが許された探索は地下2階までだ。それが今はもう…多分10階近く下っている。
「ルートヴィヒッ!!」
なんで言うことを聞いてくれないんだ…!やっぱり俺、舐められてるのかな。
だんだん気温が低くなっている気がするし、なんか生臭い匂いがしてる気がするし…。
これは絶対にマズい。もう逃げたい。逃げ帰りたい。
だけど、ルートヴィヒはどんどん先にいっちゃうし…もうやだ。俺、絶対に死ぬ。何かに殺される。
「ちぎぃ…ッ!」
生理的な叫びとともに手を伸ばし、ルートヴィヒの尻尾をぎゅっと掴むと「ギャンッ!」と彼は悲鳴を上げて顔だけで俺を振り返った。
「なんで、勝手にずんずんいくんだよーー!お、俺がご主人様なんだぞー」
ギロリと睨まれたような気がするが、俺がそんな風にべそをかくと彼は近寄ってきて俺を慰めるように足に体を擦りつけてきた。
「か、勝手にいきやがって、お、俺は待てっていったのに…!」
じわじわっと滲んだ涙を俺は必死に拭う。
「なんで勝手に…ひぐっ」
だけど、だめだった。一度堰を切った涙は止まらない。
しゃがみ込んで泣いていると、ルートヴィヒが戸惑ったように俺の周りを回り、「クゥン」と情けない声を上げ、涙に濡れたほっぺたに頭を擦り寄せてきた。
チクショウ、慰められてなんてやらないんだからな…そう思いながら顔を上げると、その瞬間、ルートヴィヒの耳がピーンと立った。
「ふぇ?」
情けない声が出てしまったが…ルートヴィヒの様子がおかしい。
彼のピンとたった耳が、何かをさぐるようにピクピクと動いている。
俺の方をまっすぐ見ているのに、その目は俺を映してはいない。
犬…いや、これまで狼を飼ったことのない俺だって本能的にわかる。これは“警戒体勢”ってやつだ!
「ヒッ」
それに気づいた瞬間、俺の喉からは情けない声が出た。
「る、ルートヴィヒ、か、帰ろう」
そう言って“のぼり”の階段の方を振り返ろうとしたが…フッと姿勢を落とし、俺の背後をじっと見つめているルートヴィヒを見て、俺は動きを止めた。
彼は、俺越しに“何か”を見ている。
“何か”?
そんなもの決まっている。
此処にいるのは…。
「…………」
なんだかものすごく嫌な予感がした。
背中がぞわぞわっとして、それはビリビリになって頭の先から足の指の先まで走っていった。
「ヒゥッ!!!」
俺はまたおかしな声を出してしまった。
ふ、振り向きたくない。振り向きたくない。
だけど同時に、俺の後にいるであろうものをどうしても確かめてやりたいという欲求も強い。
どうしよう…どうしよう…と考えている内に、背中に感じる気配がどんどんその存在を大きくしていく。
俺に覆いかぶさるような巨大な化物…それが今まさに俺に襲いかからんとしている。
そんな想像がリアルにできて、俺は恐怖に喉をヒクヒク鳴らし、欲求に逆らえずにゆっくりと後を振り返り……

 *

「あ?」

パチリ。
そんな音を立てて瞬きをした次の瞬間、目に映ったのは、何故か俺の部屋の天井だった。
なんで?
俺…試練の洞窟にいたはず…って、もしかして死んだ?
顔を青くし慌てて身体を起こすと…そこはやはり俺の部屋。それに身体の重さもあるし、手も足も動く。…確実に俺は生きている。
もしかして夢オチ?全部夢だったのか?
もしかしたら、試練の洞窟に行く前日に、緊張しまくって変な夢みたのかも?
可能性としてはそれが一番高い。
「なんだ、夢だったのかよ」
俺はほっと胸を撫で下ろし、あんなもの絶対に正夢にはしてやるものかと心に誓った。今日は絶対に地下2階より下には降りない…!
…ところで…
「なにやってんだ?こいつら」
こいつら…というのはルートヴィヒにバカ弟、それからギルベルトの事だ。
綺麗とはいわないが、それなりに片付いた床に、まずルートヴィヒが腹這いになって眠っている。
その背中を枕にしてバカ弟が大の字になっていて…そして、そのバカ弟の腹の上に黄色い小さな毛玉が寝てる。
ルートヴィヒは俺の使い魔だからいいとしても、あとの一人と一匹はなんでまた?
「寝るなら自分のとこで寝ろよ」
俺は呆れた。
そしてベッドから出ようとした俺は、ベッドサイドテーブルに赤ん坊の拳くらいある、薄い黄色の宝石が置かれているのを見つけて目を丸くした。
「は?」
なんだこれ。
バカ弟のか?
それにしても大きい…。
俺はそれに手をのばし触れた。
きれいにカッティングされた宝石は表面がすべすべしてて、あまり明るくない部屋の中で宝石自身が光を放っているかのようにキラキラと光っていた。
「すっげ…」
こんなきれいな宝石、店のショーケースでも見たことがない。
これひとつで一体どれくらいの価値があるんだろう?
今のこれには宝石としてしか価値はないが、こいつに何らかの魔法効果を加えるとすると…きっと恐ろしい金額になる。
ぼけーと、宝石を見ていたら、『ようやっと起きたか』と声が聞こえた。
声に振り返ると、ちょうどギルベルトが目を覚ましたところだったようだ。
小鳥の癖に、眉間に皺を寄せたギルベルトはパタパタと羽ばたきをすると『ったく一週間も眠りやがって』と悪態をついた。
「は?」
一週間?
『なんだ?覚えてないのか?試練の洞窟にいったお前は一週間寝込んでたんだぜ?』
「しれ…ん?は?」
ちょ、ちょっとまて、試練の洞窟って…え?
目を白黒させていると、『なんだよ、それも覚えてないのか?』と彼はパタパタ羽ばたき、よろよろと近くの椅子の上に降り立ち姿を人型に変えた。
相変わらず鋭すぎる美形。
黒の上下に、銀髪、赤い目は釣り上がっていて、本人にそのつもりはないのだろうが、いつも睨んでいるように見える。
俺はこいつがどうにも苦手だ。
小鳥の姿をとっているときはまだしも、人の姿の時は特に。
上位悪魔特有の整いすぎた容姿や乱暴な口調。どちらも俺を怯えさせる。
彼は大きく口を開けてあくびをすると、目をごしごしこすった。
「事実だけを言うと、お前は試練の洞窟に行き、そして宝石をくわえたルートヴィヒにおぶられて帰ってきた。そして一週間眠って、ようやく今目が覚めたってわけだ」
「試練の洞窟に…行ったのか?俺は」
「あぁ」
それに宝石って…?もしかして?
思わず手の中の宝石に目を落とすと、「そう、それだ」とギルベルト頷いた。
これを…?こんなに…大きな…すごい宝石を…?
俺は手元の宝石に目を落としてゴクリと喉を鳴らした。
「でも…どうやって…」
「俺様の予測だと…、お前は…いや、お前とルートヴィヒは、約束を守らず下へ下へとくだった」
俺は夢の中の出来事を思いだし、無意識にごくりと喉を鳴らした。
もしかして…あれは本当に現実にあった出来事?
一週間前の現実…?
怯える俺に気づいてギルベルトがニタリと笑う。
「結界がどうして壊れてたのかは知らないが、とにかくお前らはこの学園の教師連中でもそうそう入らない下層へと足を踏み入れた。そして“そいつ”に出くわした」
「そいつ?」
夢の中…いや、あのときに感じだ気配を思いだし、俺はぶるりと震えた。
とてつもなく大きく感じだあの気配。
背中が粟立つようなあの嫌な感覚。
姿を見ることはなかったが…あいつは…あいつは一体…
「なんだったんだ?」
答えを求めてじっとギルベルトを見つめると、
「だから予測だと言ったろ」
彼は苦笑混じりに返した。
「俺はその場にいなかったんし、ルートヴィヒとは今は全く意思疏通が計れない。…まぁとにかく、それだけの宝石を体内に持ってたんだ。大物ってのは間違いねぇな」
俺はギルベルトの言葉を聞いて、手の中にあるものが恐ろしくなってテーブルの上にそっと置いた。
それはまるで自らが発光しているかのようにギラギラと輝く。
「そいつに出くわしたお前が善戦したのか、それとも逃げたのかはしらない」
ギルベルトは言うが、おそらく事実はその時点で気絶したのだ。俺は昔オバケを見た…と思った時も、気絶した事がある。
「だが少なくともルートヴィヒは戦おうとしただろう。今はアレだが…本来ルートヴィヒは強いし、戦闘意欲の高い種族だからな。敵意を持って向かってくるやつには本能的に牙を向くようにできてんのさ。特に理性が低く抑えられている今はその傾向が強いだろうから間違いない。しかし此処で問題があった」
ギルベルトは格好つけて指を一本立てた。
「問題?」
「あぁ、言うまでもない、制約の事だ」
「制約…」
「わざわざ言うまでもないな。お前との制約だ」
そして、その指をまっすぐ俺に向けた。

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