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こいつのキスは甘い

出来上がってる。

夜中に喉の乾きを覚えて部屋を出た。
するとキッチンの方の明かりがついているのに気づいた。なんとなく足音を殺して、そちらに向かうと換気扇の下にルートヴィヒがいた。
左手を上げて、右手に持った本を読んでいる。
何だ、あの格好は。
何をしているんだ?と思ったが、まもなくわかった。
上げられた左手にはタバコがあり、その煙を換気扇に吸わせている。
キッチンの薄暗い明かりで、彼の顔の陰影が際立っている。
それを見た俺は、なんとなく美術館で見た真っ白な彫刻を思い出した。

「タバコ」

ポツリと呟くと、俺に気付いて居なかったらしいルートヴィヒはびくんと体を震わせ、慌てたようにタバコをシンクの上の携帯灰皿に押し付けて消した。
そんなに慌てなくてもいいのに。
「ロヴィーノ。起こしたか?」
「いや」
俺は流しに近づくと食器立てからコップを一つ取って、水道水を汲んだ。
「喉乾いたから」
コップを口に運びながら時計を確認すると、時刻は一時半だった。
「寝なくていいのかよ」
「え、あぁ…そろそろ寝るつもりだ」
妙に焦っているルートヴィヒを見て首をかしげる。
もしかして喫煙者だということに気づかれていないとでも思っていたのだろうか…。そんなことを考えていると、「兄さんが…」と口を開いた。
「一時期、ヘビースモーカーで…俺にもやたらと勧めてきてたから」
最初は美味しくも何ともなかったが、そのうち口寂しい時に一本二本と吸うようになったのだと彼は言った。
「いつの間にか癖になってしまったらしく…。もう止めようとずっとずっと思っていたんだが、どうしても時々手が伸びてしまって…」
2日に1本くらいの割合で吸ってしまう。
そう恥じ入るように言う。
何言い訳してんの?って感じだけど、…ってことはやっぱり、彼は喫煙者だとバレていないと思っていたらしい。
コイツ。思ったよりアホだ。
なぜ気づかないなんて思っているんだろうか。
ただ一緒に暮らしているわけじゃなくて、俺たち、一応恋人同士ってやつだろ?
だからこそわかる。
あたりまえじゃないか。
「ふーん」
「すまない、家では吸わないようにする」
「別に」
「でも気にならないのか?お前は吸わないだろう?」
気になるかっていわれると、気にならないわけじゃない。
俺は喫煙者じゃないし、服や家に臭いがつくのは嫌いだ。
だけど、まぁある程度は慣れた。
っていうのはつまりルートヴィヒがタバコを吸うからで…だから…

がぶり

と、噛みつくように唇を合わせ、ベロリと唇を舐めて離れる。
彼は目を見開いて驚きバッと口を手で覆った。
なんだ、今更、その反応は。
少しムカツイて睨みつければ、「あ、いや、なんでもない」とひきつった顔で答えた。
その煮え切らない反応に一喜一憂していたのは、もう昔の話。
ほんとコイツって…。

「あのなぁー…俺、お前が喫煙者なの、知ってたぞ」

「最初にキスした日から」

「だから慣れてるし。別にまずくねーぞ」

あっ。
ッてかんじのルートヴィヒの顔。
俺は彼の耳が赤くなるのを見届けて「じゃ、寝るから」と、ルートヴィヒに背を向けた。

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