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ゼロの夜想曲 21

ルイズは俺の言葉を、自分を試しているのだと受け取ったらしい。
間の抜けた顔を一瞬晒したものの、すぐに真面目腐った顔になって何事かを考え出した。
そして、
「この世界がすきかどうかなんて・・・私にはわからないわ」
と、肩をすくめて言った。
「どうして?」
「だって、比較する対象がないもの。私はこの世界しか知らない。好きだろうと嫌いだろうと、この世界で生きるしかないわ」
「ゼロだと揶揄されてもか?」
「当たり前じゃない。」
言った後に、ルイズは俺をきつく睨んだ。
「ゼロのルイズ・・・それは私を侮辱する言葉だったわ。
 でも、玲治、貴方いったでしょう?そんな言葉で自分を貶めるのはバカらしいって。
 だから、私は笑われないように頑張る。ゼロって言葉にプライドを持つって決めたの」
いつか“ゼロ”を誇れる日がくるはずよ。
そういった彼女に俺は息を飲んだ。
「一体、何が言いたいの?」
桃色の髪をふって振り返った彼女に、俺はよくわからない反感を覚え彼女の問いに答える代わりに、授業が始まると彼女を促して部屋を出た。

彼女の隣の席について、聞くともなしに授業を聞きながらまたぼんやりとしてしまった。
昨日のストック空間での協議では、賛成が4、反対が4、そして棄権が3だった。
だから、結論は保留。
まぁ、俺はどちらでも構わなかったのだけれど・・・。
参考までにと彼女に世界のことを聞いてみたら・・・あの結果だ。
ルイズの票ははどうやら反対へと周ったらしい。
勝算はあったように思うのに・・・そう思って、自分は賛成だったのだろうかと悩む。
このままこの世界がこのままであるのは麗しいように思う。この世界は受胎前のあの世界のように病んではいない。まだ、若葉のような匂いのする世界は、あの路地裏のゴミ溜めのようなすえた臭いは何処にもない。
だから、壊すには早いような気がする。
だけど・・・少し誘惑されるのもまた事実。
っというより、自分が召喚された時点でこの世界の行く末もそういうものだということだろうか・・?
鬱々と考えていると、バンッと音がしてルイズが乱暴に本を閉じたところだった。
その音に教室内が少しざわついて、そして何事もなかったかのように授業が再開される。
どうやら彼女の機嫌をまたもや害してしまったらしい。
容姿は全然違うけど・・・やはり何処か千晶に似ていると思うのは、二人がお嬢様育ちだからだろうか。もし、ルイズが彼女なら・・・もう一度ヘマをした時点で張り手が飛んでくる。幼馴染である千晶の機嫌取りは俺の役目ではあったが、彼女のヒステリーには全く打つ手が無い。
頬を打たれても今の俺なら痛くも痒くもないが、悪いのは自分だ。
俺は気配を薄れさせると、これ以上彼女の機嫌を損ねないようにそっと教室を離れた。

そしてそのまま俺はまたもや学院の屋根の上へと昇った。
今日はストック空間に意識を落とすことはなく、青空を見上げ上空を飛んでいく雀のような鳥を見つめ・・・それから校庭(?)で魔法の練習をしているらしい生徒たちを眺めた。
黒いローブを来た教師役に15人ほどの生徒たち・・・はどうやらルイズよりも1、2歳年上。そいつらが手に炎を宿してそれをぐるぐると回している。
どうやら火の玉でも作ろうとしているらしい。
此処からでは聞き取れないが、口をもごもごと動かしていることからみると、やはり魔法を使うには詠唱が必要らしい。俺なら口から空気を吸い込みさえすれば、それが腹の中で炎になるというのに・・・やはり魔法の系統が違うのだろう。

ぼんやりとそれを見ていると、寝るつもりは無かったのにいつの間にか寝てしまっていたようで、気がつけばとっぷりと陽が暮れていた。
当然のことながら校庭には誰もいないし・・・窓には所々オレンジの光が灯っており、虫の声が小さく聞こえる。
本当にあきれるほどに平和な日々。
平和すぎるほどに平和。
久しぶりにいる戦いのない世界は・・・懐かしいけれど、俺には退屈すぎる世界だった。
此処は、やはり俺のいるべき場所じゃない。
悪魔の俺には、やはりそれなりの世界でしか生きていけないのだろう。
退屈で死ぬ・・・そんなことを、昔、勇と言っていたような気がするが、本当にこのままでは退屈に殺されそうだ。
俺はため息をつき、ルイズに一言おやすみの挨拶でもしようかと腰を上げた。
千晶もそうだったが、ルイズもおそらく機嫌を損ねさせると長そうだから・・・みえみえだと分かっていても、このあたりで機嫌取りをしておいた方がいいだろう。
何しろ、名目上は俺のご主人様なのだから。

そして、廊下に長いローブを僅かにこすらせて歩いていると、ルイズの部屋の前で真っ赤なトカゲがドンと座っているのに気付いた。
そいつは俺に気付くと僅かに怯えながら、キュルキュルと喉でなく。
甘えているツモリらしいその鳴き声は、夜魔・キュルケの使い魔だ。
何をしているのかと首を傾げると、彼(?)はしきりに喉を鳴らし俺の顔と開いたキュルケの部屋を交互に見ている。
キュルケの具合でも悪い・・・のか?
それで俺を呼んでいるというのだろうか・・・?
不思議に思いながらも・・・まぁ関係ないとルイズの部屋に入ろうと思ったのだが、そいつはそれに慌てたように短い足で俺に近づくとローブの端を咥えて、ぐいぐいと力強く引いた。
「・・・なんなんだ?」
いつぞや、散々脅かしたというのに・・・それ以上に切羽詰ったような印象を受ける。
本当に急病なのだろうか?
だったら様子くらいはみてやろうと、仕方なく俺はその部屋のドアをくぐった。

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