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この愛はすこしばかり重すぎた

花の香りをぷんぷんとさせたカインは、何も言わずに僕の部屋に入ってくると、これまた何も言わずに僕のベッドに横になった。
書き物をしていた僕は、仰向けになって目の上に腕を置いているカインを見て羽ペンを置いた。
落ち込んでる…と言うよりは自己嫌悪か。
彼がこんな風になってしまうのは珍しくない。
カインはハイウィンド家という名門の生まれ。眉目秀麗で成績もよく、将来有望と誰もが羨むような恵まれた立場にある。
だが彼は満たされない。
彼は…僕には話してくれないが…なにかとても大きなものを抱え込んでいて…そして今日のように時折潰されかける。
そんな時に彼は酒や女性に一時的な逃避を図るのだが、その一時的な熱が冷め、現実にたち戻った時、彼は逃避した時以上に苦しむのだ。
そして弱りきった彼が頼るのが僕。
親友として、頼ってくれるのは嬉しい。だけど贅沢をいうならば、もっと早くに頼ってほしい。そして出来るならばその悩みを打ち明けてほしい。

「カイン」

名前を呼ぶと、彼の手がピクリと動くのがわかった。
僕は立ち上がり、彼が横になるベッドに腰かけた。
すると濃く立ち上るのは女性のコロン。
「カイン」
もう一度名前を呼び、彼の熱い手に触れてそっと顔から下ろさせると、潤んだ蒼と目があった。
「セシル…」
彼は僕の名を呼び、すがるように僕の頬に触れる。
今日はいつもよりも重症に見える。
「大丈夫かい?」
「だめだ」
「だめって…」
震える指先が痛々しい。
その手を下ろし、体を持ち上げるカインは、そのまま僕に抱きついた。
僕は体重を預けてくるカインを支え、そして抱き返す。
そうすることで彼が多祥なりとも安定するという事を、僕は経験上学んでいる。
カインは僕よりも数センチだけど背が高い。だけど今は、彼がすがり付く体制で僕の首筋に顔を埋めている。
僕は慰めるように背中を撫で、後ろで一つにまとめられた金糸の髪を撫でた。
カインの体は熱く…そして何かに耐えるように震えている。
カイン。
僕の親友、そして好敵手。
強く、聡明でたくましい人。
なのに今はこんなにも弱々しい。
僕は胸が痛くなって腕に力を込めた。
僕にその悩みを打ち明けてくれればいいのに。
僕にその苦しみが肩代わりできたらいいのに。
だけど彼はそれをしない。
カインは“自分が背負うべきものだ”と言って、僕にはそれを分けてはくれない。
僕には、彼の背負った何かの正体はわからない。
だけど暗黒騎士の道を選んだ僕には、自分自身でしか抱え込むことができない事があることを知っているから…だから、何も言えない。
ただこうして時折、折れそうになった彼を抱き締めてやるのがせいいっぱい。
「カイン、少し眠ったら?僕がそばにいるから」
「眠りたくない」
「じゃぁ熱い紅茶を淹れようか、ブランデーをたっぷりいれれば気持ちが楽になるよ」
「いらない」
「そうだ。甘いお菓子もあるよ。甘いものは疲れがとれるし…」
「いらない。セシル」
「なに?」
少しだけ体を話したカイン。
間近で目を覗き込んだ僕は、

「お前が欲しい」

その切実な色に、一瞬息をするのを忘れた。
「カイン?」
「お前が欲しいんだ。セシル」
切なげに下がる眉尻。
その懇願を誰が拒めるだろう。
僕は、彼の懇願の内容に驚くよりも、彼が僕を頼ってくれたという喜びの方が数倍も大きかった。
いつも抱きしめるだけで、話を聞くことすら許されなかった僕に、彼が何かを求めてくるなんて初めてのことなのだ。
「カイン…」
「ダメか?」
「ダメなんて…」
そんなことがあるわけがない。
僕でも力になれることがあるなんて…僕は自分の目が熱くなってほとんど泣きそうになってしまった。
あぁわかっている。きっと僕は馬鹿なんだろう。考えなしなんだろう。
だけど…
「いいよ、カイン」
彼が求めてくれるのならば、僕なんて安いものだと思った。
たとえば、前提としてカインをヤンデレにすると、話が違ってきますよねー。
カイセシとして読むか、セシカイとして読むかでも随分ちがいますよねー。
ってそんな策略しつつ書いたのですが…筆力不足は否めません!

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