スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

飴色の夕焼け

FT系 こんなのが書きたい というだけの話。
ちょっとだけ続けてみた。 読み返してないけれど。

一時帰国で彼女に何があったのか、どんな心境の変化があったのか…久しぶりに会う彼女は笑顔で俺に挨拶をした。
その時は気まぐれかと思ったのだが、連日に渡る食事の誘いや、執務室への突然の訪問を考えると一概にそうとも言えない。
兄さん…陛下がニヨニヨとするのは気に入らないが、全くなついてくれなかった気位の高い猫がようやく心を許してくれたようで、俺は素直にこの事態を喜んでいる。
婚約者であり将来の妻。それは形式のものでしかないだろうが、それでも隣にある者同士仲良くしたいと考えるのは当たり前のことだろう。

 *

今日もまた朝食を共にしたあと、彼女は町外れにある湖に行きたいと言った。
「レディアナの湖か?」
「そう。大陸戦争の戦乙女、レディアナが身を清めたって本にあったわ」
知ってるかと言うような視線を受けて俺は頷く。
「当たり前だ。彼女は英雄であり、俺の祖先でもあるからな」
女性でありながら最前線に立ち、敵国の勇将たちを次々に打ちとったと言われ…今では戦の女神とまで言われている。実際、戦の出撃の際には「リディアナの加護あれ」という言葉をかけるのが通例となっている。
「そこに行ってみたいの。だってすごく綺麗なんでしょう?」
「あぁ…だが、無理だ」
俺が言うと彼女はムッとしたような顔を見せた。
「どうして?私がイタリア国の姫だから?」
「あぁ違う。そういう意味ではなく、レディアナの湖には行きだけでも半日はかかるんだ」
馬を駈ればもう少し早くつくが、彼女を乗せた馬車でとなるとどうしても半日はかかってしまう。
「今日は時間があるとは言ったが、さすがにレディアナの湖には…」
「そうなの」
つまらなそうに口を尖らせる彼女にチクリと胸が痛んだが、これはしょうがない。
「他に何か希望はあるか?」
「そうね…。うーん…。あ、私、市井に降りてみたいわ」
「市井に?」
「そうよ。私は此処に来てからずっと城に篭もりきりだったから」
「だが…」
俺は少し戸惑った。なぜなら彼女は城に篭りきりというよりも、むしろ部屋に篭もりきりで殆ど表に出たことがなかったからだ。だからこそ…
「貴女は室内が好きなのかと思っていた」
そう正直に告げると、彼女はくすくすと…近頃ではよく見せる、しかし一時帰国前は絶対に見せなかった仕草で…笑った。
「そうね。私はアウトドア派になったのよ」
「アウトドア派…」
「いいでしょ?私は将来もずっと此処で暮らすんだから。この国のことをもっと知っておきたいわ」
その言葉に俺は感動を覚えた。
そうだ。彼女はこれまで俺に対して全く関心を寄せていなかったばかりか、この国に対してすら全く関心を寄せてはいなかったのだ。
この俺、この国を知ろうとすることを拒否して、そして室内に閉じこもっていた。あくまでイタリア王国の姫であろうとしていた。
それが今日の…いや、一時帰国を終えてドイツに戻った彼女はどうだ。
彼女は積極的に俺に関わろうとしてくれ、そして国を知りたいという。先ほどのレディアナの事だって以前の彼女からは絶対にでない言葉だっただろう。
教育として教え込まれていたとしても、彼女はドイツの英雄の名前を口に乗せることはしなかっただろうし、“行きたい”という言葉や、ドイツの場所を褒めるような“きれいな…”なんて言葉は考えられない。
俺は本当に嬉しくて、市井に降りたいという彼女の願いを即座に受け入れた。
「だが、それには貴族の娘程度の洋服に着替えなければならないんだが…」
さすがに宝石を散りばめられたドレス姿はマズイし、使用人も最低限にしなければならない。それには難色を示すかも知れないと思ったが、彼女はそれにあっさりと頷いた。
「当たり前よ。これでも私、イタリア国ではよく市井に降りていたもの。その程度知っているわ」
「そうなのか?」
「えぇ。弟と二人で城を抜けだして、屋台で買った食べ物を食べながら市井を歩いたり、近所の子と遊んだりもしたのよ」
「それは…なんというかとても意外だ」
俺は彼女が本当に姫らしい姫なのだと思っていた。
ドイツにやってきて拗ねている所はあるにしろ、イタリア王国でもおとなしく城の中にいて、花や音楽を愛でているような人だと思っていた。
「だから護衛も貴方一人でいいわ」
「は?いや、それは…」
「なによ、貴方、この国一の剣豪なんでしょう?そんな貴方が怖気づくほど、この国の城下町は危険だというの?」
「いや。そんなことはないが…だが、女性の付き人が貴女には必要だろうし…それに万が一ということも…」
「その万が一を貴方がなんとかするんじゃない」
ごちゃごちゃとうるさい…とでもいうような剣幕に、俺は肩をすくめるしかなかった。

準備をして一時間ほど後に、もう一度此処に迎えに来るというと、彼女は「せいぜいおしゃれをしてきなさい」と言って俺を部屋から追い出した。
気難しいところは相変わらずだが、やはり彼女の中で何かが大きく変わったようだ。
だがそれも、今後の俺の対応でまたどうにも変わりようがあるはずだ。
今日のこの誘いは、その最初の試練であるのかもしれない。
俺はなんとかこれから彼女と穏やかな関係を築いていけるようにと気合を入れ、街におりる準備をするために部屋へと戻った。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。