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届かない愛を歌う為に

ルート←にょロヴィ
パラレル 中世くらい
ルートは騎士でロヴィは妹と一緒に酒場の踊り子。
時間もないし読み返さない。 @1は書くつもり。

夕方になると「白い真珠亭」には、村にやってきている帝国の騎士たちで溢れかえる。
帝国は元々(一年くらい前まで)は敵国で…つまり、彼らは村の占領軍ということになるのだけれど、そのそも国に帰属意識の薄かった村の人たちは、ただ所属する国が変わったという程度の認識しかないようで、彼らにも友好的だ。
その理由は、帰属意識が薄弱だったという以外にも、この村はとても田舎だったということもあるだろう。産業らしい産業もなく、名物らしい名物もなく…ほんのちょっとの野菜と、家畜。それだけで暮らしてきた貧乏な村。
だけど彼らが来てからは、彼らを目当てに商売人たちがたくさんやってきたお陰で、とっても賑やかになっている。
過疎が進んでいた村としては、この占領軍はほんとうに願ってもないものだったようだ。

かく言う私も妹のフェリシアーナと一緒に流れてきた人間の一人だ。
ジプシーに育てられた私たちは成人(16才)になったのを機に独立し、踊りや歌…そしてほんのちょっとの薬草の知識を飯の種に、各地を回っていた。
そして半月前にこの村にやってきたのだ。

 *

「さぁ、今日もはりきっていくよ!」

店の女将さんがはりきって声を上げると、厨房の男たちや給仕の女の子たちが「はーい」とか「おー」とか声を上げる。
そうして店が開店すると同時に、店は大勢の人で賑いを見せだす。
ほんとうにあっという間にフロアは人で溢れかえり、人々の喧騒で耳が痛いくらいになる。
私と妹の二人は立ち上がりだけスタッフたちを手伝い、そして少し落ち着いたあたりでステージに立つのがいつもの流れだ。
その頃には、客も程よく酔っていて…公には認められてはいないのだが、娼婦の女たちもちらほらと姿を見せ始めている。
「そろそろ行こうか」
揃いの赤いドレスをまとったフェリシアーノの言葉に、私は頷き生花を頭に飾った。
そうして髪に手串をささっといれていると…妹がふふふっと鏡の向こうで笑っているのに気づいた。
「何?」
少しむっとして言うと、彼女はフフフっとまた笑い、「あのね」と口を開いた。
そして、
「今日のお客さんに、姉ちゃんの好きな人が来てたよ」
妹の言った言葉にぎょっとした。
確かに私には時折来る客の中にちょっとだけ気になっている人がいる。
だけどそれは絶対に内緒で…妹にだって絶対に気付かれていない自信があったのに…。
驚いて鏡の中の妹を見ると、「やっぱりぃ」とフェリシアーナはくすくすと肩を震わせた。
「か…かまを掛けたわね…」
じっとりと睨むと、彼女はちらりと赤い舌を見せた。
「ごめんね。だって姉妹だから」
姉妹だから?
姉妹だからなんだというのだろう。
「えへへ。でもカッコイイよね。なんか姉ちゃんにしては珍しいタイプかも」
「…そう…かもね」
彼女が本当に、その相手を特定しているのか半信半疑だったけれど…珍しいタイプと言うということは…当たっているかもしれない。
「ね、一曲終わったらさ、あの人の所にチップをもらいにいって、そしてそのまま友達になっちゃおうよ」
「は、はぁ?そんなのできるわけないじゃない」
「そんなことないと思うよー。帝国の騎士様と仲良くなるのってみんなの憧れだし、女将さんだって許してくれるよ」
「だ、ダメよ。ちゃんと仕事はしなきゃ」
普段はまず言わないセリフ。
妹は「ヴェ」と変な声を出して、それからまたクスクスと笑った。
「じゃぁ休憩の時間になったら行ってみようよ。ね」
お酒を一杯おごってもらおう。
妹は言う。
そういうことはよくあることだし、安酒の一杯くらい誰だっておごってくれる。
私だって妹と一緒に愛想笑いをしながら何度だってそういうことはしたことがある。
だけどその相手が“彼”となると話は別だ。
彼は他の酔客のように酔っ払って娼婦の女を隣に座らせたりするような人ではないし、大声で笑って下品な事を口にするような人でもない。
こんな安い酒場にきていても、あまり楽しそうじゃない…というか、見ているだけで近寄りづらい雰囲気があるし…。そう、物語の中のお固い“騎士様”そのものみたいな人だから…。
「無理よ」
「そんなことないって!」
「絶対…」
無理。
言いかけた時に、「まだかい!?」と控え室の向こうから演奏を担当してくれる男の人が声をかけてきて、それでお話は終わりになってしまった。
大慌てで準備を終わらせ、舞台袖に立つと妹が意味ありげにウィンクをしてきたので、私はとっても嫌な予感がした。

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