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たまにはこんな休息日

読み返してません。
微妙です!

コッツウォルズに観光に来ていた日本とティーハウスに入ってお茶を楽しんでいた時…

「狐の嫁入りですね」

ふと日本が空をみあげて言った。
つられてティーハウスの外を見ると雨がハラハラと細く降っていた。
だが狐なんてどこにもいないし、ウェディングドレスを着た誰かもいない。
牧歌的な田舎風景が続いているだけだ。
あの長い草葉の間に隠れているのだろうか?じっと風景を見ていると、くすりと笑われ視線を日本に戻した。
「すみません。紛らわしかったですね。狐の嫁入りというのは喩えというか…比喩というか」
「どういう意味なんだ?」
「天気雨のことですよ。ほら、そらは明るく雨雲は遠い。けれども細い雨が降っている。なんだか化かされているような気分になるでしょう」
「あぁ…」
言われて一つ思い出した。
「お前の家じゃ、狐や狸ってのは人をばかすんだったな」
「えぇ、よくご存じで」
「ふん。お前が昔俺に言ったんじゃないか」
言うと日本は、はてそうでしたか…と首をひねった。
「それにしても狐の嫁入りか」
言っているうちにそれはとっとと止んでいて、濡れた草木が陽にキラキラと輝いていた。
「随分とロマンチックだな」
雨の時には一瞬姿を消していた蝶々がひらひらと舞う様子に目を細める。
「かもしれませんね。イギリスさんなら、うちに来たときに見れるかもしれませんね」
「バカにしてるのか?」
少しムッとして言うと、日本はとんでもないと両手と、それから頭を使って否定した。
「むしろ羨ましいとすら思います。イギリスさん、うちで河童や座敷わらしを見た事がおありなのでしょう?」
「…あぁ」
やはり馬鹿にされているんじゃないかと思いつつ、見えるのは本当なので素直に頷くと日本は羨ましげな視線を俺にくれた。
それを見て俺はなんだか落ち着かない気分になり、慌ててスコーンにジャムを塗った。
「昔はね、私も見えたものですよ」
頻繁にではないけれど。
「座敷わらしに河童もそうですが、猫又や九尾の狐、犬神…それに百鬼夜行」
「昔?」
「えぇ昔の話です」
頻繁にではありませんでしたが。日本は同じ言葉をもう一度繰り返した。
「あれは一体いつくらいの記憶でしょうね…。思い出してみると皆さん和服を着ていたような気がしますし…その和服も古いものですから…あぁ、本当に本当に古い記憶になってしまいますね…」
日本は寂しそうに言った。
「鎖国をしていた頃か?」
「いえ…おそらくそれよりも前でしょうか…。私も本当におじいちゃんになってしまったものです」
苦笑する日本を見ながら、俺は以前に彼が、自分は俺たちよりもずいぶん年上なのだと言っていたことを思い出した。それはもちろん事実ではあるのだけれど…彼の外見はとても若く…ヘタをしたら幼く…初対面の人間(特にアジア圏以外の国の人間)から見れば子どもにしか見えないことだってある。
なんとも返事に困って黙っていると、彼は外のほうを見て「今も見えていらっしゃるのですか?」と聞いた。
俺は同じく外を見て、そこにごく自然にいるフェアリーたちを見つけ頷き
「あぁ…いる」
彼を相手にはもう何も気後れする必要はないだろうと、正直に口にした。
「そこいらにいっぱい。雨が降ったのが嬉しいみたいだ」
ここまで声が聞こえるわけではないが、だてに何百年と一緒にいるわけではない。
光に半ば透けたフェアリーたちは花を愛で、風に歌い、蝶々たちと踊っている。
とても楽しそうで、微笑ましくて…おもわず微笑みが出るような光景。しかし、此処には自分達以外の人間もいる。努めて口許に力を入れ日本を見ると、彼は少し悲しげな表情で視線をさ迷わせていた。
見えないフェアリーたちを必死に探すように。
ひどく悲しげな面差しを見ると、なんとも言えず胸が締め付けられた。

俺は…彼にそれを見せる力を持っている。
一時的なものでしかないが…彼に俺と同じものを見せる力を持っている。
だけど…

しばらく逡巡し…、日本がまだ憂いに満ちた目をしているのを確かめると、
「おい」
俺は勇気を出して手を伸ばし、テーブルの上におかれていた日本のそれに重ねた。
「えっ」
驚いた声。
普段から他人との接触に慣れていない彼はとっさに手を引こうとするが、俺は逃さないとばかりにその手を強く握った。
「あの…」
困惑した日本の声に、俺はカッと顔が熱くなるのを感じた。
あぁ、チクショウ。俺は一体なにをやってるんだ。
そう思いながらも俺は視線を合わせないように慎重に窓に目を移し、顎で示して外を見るように促した。
「はぁ」
抜けた答えをしつつ、日本は窓の外を見たようだ。
手にぎゅっと力を込めると、一回り小さな手がまた一回り小さくなった。
俺はその手に力を込め、ゆっくりとそれを日本の方へと流してやる。
すると
「あ」
日本が声をあげたのは、力を送り始めて五秒ほど経ってからだった。
少しだけほっとして「見えるか?」と聞くと、「は、はい。見えます!」少し緊張したような弾んだ声。
「白い花のところに…あ、あっちにも、それから…」
普段あまり感情を出さない彼がなんとも嬉しそうに歓声を上げた。
「あぁ、あんなにキラキラ光って…羽も…虹色に輝いて…」
感極まったように目をうるませる日本に、俺もまた自然に笑顔になった。
そして、
「なぁ、日本、このまま森の方へ行ってみないか?もしかしたらユニコーンがいるかもしれない」
いつもなら絶対に口にしない誘い文句を口にしていた。
日本は俺の提案にすごく嬉しそうに微笑み「是非」と頷いた。
俺はなんだか照れくさくて…だけど誇らしくて、だらしなくゆるんだ口元を見られないように、慌てて開いた手で鼻の下を掻くふりをした。

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