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それぞれの本質

上と同じ世界観
ギルベルトはネジが数本ぶっとんでます
途中から読み返してない

刑務所の門が見えるあたりに車を止めたルートヴィヒは、窓を開けてエンジンを切ると胸元からタバコを取り出した。
喫煙は悪い仲間から教え込まれた悪癖だ。
やめようやめようと思いつつ、忙しい時や、イライラしたときにはどうしても手が伸びてしまう。
彼は苦々しいような表情でそれをにらみ、そして一本を咥えた。ライターの代わりに携帯を取り出し、時間を確認する。
もうまもなく。
ルートヴィヒは火のつかないタバコ越しに空気を吸い、閉じられた門と両側に立つ警察官をチラと見た後軽く目を閉じた。

 *

「よぉ、ご苦労さん、酒は程々にしとけよ」
「おい、ハル、お前少し太ったんじゃねぇか?」
「よ、いつみてもべっぴんだなぁ、マリー」
「まだ定年じゃなかったのか?アドルフ」

刑務官に付き添われ廊下を歩きながら、一歩ごとに無駄口をたたく男。彼の名はギルベルトという。つい先ほどまで“お勤め”であったはずだが一切消沈した様子はない。鮮やかなパイナップルの絵のついたアロハに白いチノパン姿の彼は、へらへらと笑ってはいるが、紅玉を思わせる目の奥には狂気の光がある。
彼は出口付近の小部屋に案内されるまでもなく入ると、奥のデスクの前に立ち差し出された書類にさらさらとサインをし、付き添いの刑務官に差し出した。
その紙を受け取った刑務官が仏頂面で「さて、これで自由の身というわけだな、ギルベルト」と言うと、ギルベルトはニヤリと笑った。
「そう寂しそうな顔をするなよ、マルコフ。またすぐに会いに来るって」
「ふん。二度と来るんじゃない!いい加減に更生しろ!…といっても来るんだろうな。お前は。…まったく、お前なんかさっさと縛り首になっちまえばいいんだ」
お前なんかがいるから、犯罪が減らないんだ。
刑務官は苦り切った顔で言うと、ギルベルトから入所する際に預かった財布や鍵、アクセサリーといったものを返却する。
「足りないものはないな」
「いや、スキンがひとつ足りねぇような…」
もしかして使った?
財布を見ながら言うギルベルトに、
「ふざけたことを言ってないで、さっさといっちまえ!」
刑務官は顔を真っ赤にして怒鳴り、ギルベルトを追い出しにかかった。

数分後、門の外へとぽぃと放り出されたギルベルトは、数日ぶりの広い空間に思い切り伸びをしていた。
拘束を解かれ、自由になって青空を仰ぎ見る彼に去来する思いはどのようなものだろうか。
彼でなければ、それは自分の罪を反省し、これからは清く正しく生きようと誓い…という風にしてもいいだろうが、それはあくまでも“彼でなければ”という前提の元での話だ。
ギルベルトの場合はせいぜい“次はもっと上手くやろう” とか “さぁ、今日は久しぶりに飲むぞ” とかそんなところ。最悪、次の被害者を思い浮かべている。
その彼はくあっと猫のように大きく口を開けてあくびをすると、近くに止まっている車を見て、きらりと目を輝かせた。
狂犬だの飢えた狼だのと言われる彼は人を人と思わぬところがある。つい先ほどまで一緒に飲んでいた相手をクリスタルの灰皿で殴りつけたり、ベッドを共にした女を裸で通りに捨てたり、恐喝をしていた若者たちを捕まえてボコボコにして金を取り上げた挙句、最初の被害者からも金を取る。これはまぁ序の口だが、そんな事を平気でやるような男だ。
取り扱い厳重注意。
機嫌が良ければ半殺し、機嫌が斜めな時は考えたくない…そんな男が唯一大切にしているもの。
それが…
「ルッツ!!!来てくれたのか!」
彼の弟であるルートヴィヒだ。
彼はルートヴィヒを殊の外かわいがっている。
血を分けた唯一の兄弟…という以上に、彼は弟の事を神聖視している節すらある。
ギルベルトは助手席に乗り込むと、ルートヴィヒが何か口を開く前にハグをし、きつく抱きついたまま頬にキスをした。
運転席に座ったルートヴィヒは、ギルベルトよりも体格がいいこともあり窮屈そうではあるが、兄が自分から離れるまではじっとしていた。
「あぁ、久しぶりだな。ルッツ。刑務所に入って何が辛いかって、そりゃお前に会えないことだぜ」
「…そうか」
ルートヴィヒが咥えたタバコを抜くと、ギルベルトがそれを奪った。
「ルッツ、いい子にしてたか?おかしな奴らにイジメられたりなんかしてねぇだろうな?」
「兄さん…俺はもう子供じゃないんだが…」
「はは、俺からすればお前はいつまでも子供なんだよ」
そういって上機嫌にタバコを咥える兄にルートヴィヒは苦笑し、車のエンジンを掛けた。
そして左右、後を確認するとゆっくりと車を通りへと出した。
「兄さん、火はいいのか?」
「ん、いい」
ルートヴィヒが先ほどまでしていたように、タバコを唇に挟んだままのギルベルトは上機嫌で言った。
「なぁルッツ、勉強はどうだ?ちゃんとやってるか?」
「あぁ、もちろんだ。来月には新しい資格が取れる」
「優秀だな。俺のルッツは」
ギルベルトは弁護士を目指している弟の方を見て目を細めた。
「俺と違って本当に優秀だぜ」
「兄さん…貴方だって優秀なのだから、きちんとすれば…」
言いかけたルートヴィヒの言葉に「ムリムリ」とギルベルトは言葉をかぶせた。
「俺がそんなこと出来るわけがないだろう?俺はほら、頭のネジが…」
「兄さんッ!」
厳しい口調で言葉を遮るルートヴィヒ。怒った横顔を見ながらギルベルトは甘く微笑んだ。
「そうだなぁ…俺もやればできる…よな…」
「当たり前だ」
「お前の兄貴だしな」
「そうだ」
不機嫌そうに、生真面目に答えるルートヴィヒ。
ギルベルトは満足気に口角を上げ、座席をリクライニングさせた。
「寝るのか?」
「あぁ、少しな。ついたら起こしてくれ」
「了解だ」
「それと…夕食にはでっかいティーボーンステーキが食べたい」
兄の言葉に、ルートヴィヒはちらりとギルベルトの方を見、目が合うと「了解」と小さく微笑を返した。

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