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神の狂気

マニアクス
ダンテ主ぽぃ まだ仲魔じゃない
ばいおれーんす

この世界では、まっとうな人のままあり続けるということは難しいのだと、ある時ピクシーが教えてくれた。
ボルテクスには人体に“良くないモノ”あふれていて、それが人を狂気に駆るのだと言う。
だからこそ普通の人間が運良くあの日を生き残っていたとしても、すでに人非ざるものになっているはずだと。
それはあの赤いヤツにも適応されるのかと問うと、彼女は少し考えて「半分だけど、たぶんね」と答えた。
半分?
それってどういう意味だろう?
魔人に分類されるといっても、あいつは“人”ではないのか?
聞いてみると、彼女は曖昧に肩をすくめるだけで答えてはくれなかった。
わからない。わからないがともかく注意するに越したことはない。
何しろ俺はあの男に一度ひどい目に合わされている。
つまり男としてのプライドがズタズタに引き裂かれるようなことを。
とても口には出せないような屈辱的なことを。
あれは絶対に許せない…とはいえ、あいつがこの世界に充満しているらしい狂気に駆られていたのだとすると、少しは気分的に楽になった。
ほんのティースプーン一杯分くらいだけど。
取り敢えず、今度あったらぶっ殺すってのは廃案にして、二度と会わないように最大限の警戒をすることにする。…といっても、あの男は近頃はアマラ深界をテリトリーとしているようなので、そこに近づかない限りは平気だろう。

…そう決めつけていたのは…本当に甘い判断だったと今なら言える。



その日、俺はマネカタがかつての人の模倣をして町を作っているアサクサでぶらぶらとしていた。
オカマの店員としゃべりったり、ガラクタあつめのマネカタとしゃべったり。
仲魔たちにも自由を与えてたった一人でふらふらと。
そうだ、久しぶりにゲームでもしにいこうか…なんて人通りの少ない通路に入ったのが運のつき。
まったく気配なんてなかったのに、唐突にのびてきた腕に俺は路地へとかっさらわれた。
あっと言う間もなかく「ぐっ」と喉の奥でカエルが潰れたみたいな音が出た。
背骨が砕けるかと思うほどの衝撃に、壁に叩きつけられたと悟るより先に息が詰まった。
…痛い。あちこちが。
何がなんだかわからない。
先ほどの衝撃でか口の中を切ったらしく舌先に赤錆に似た嫌な甘さが広がる。必死に状況を把握しようと目を開けると…
「なっ…」
誰かが至近距離で俺を見つめていた。
それが誰かが悟る前に、そいつは俺の口を口で塞いできた。
ただでさえ息苦しいのに口まで塞がれ、俺は苦しくてたまらない。
口の中をゾロリと舐められ、背中の産毛が逆立った。
一瞬、舌に噛み付いてやろうかと思ったが、そうする余裕がなかった。そうしていれば、すぐさま開放されたかもしれないのに、体はめちゃくちゃに暴れることの方を選んだ。
わけがわからないまま本当にがむしゃらに暴れて、振り回したどの一撃かが彼の急所をついたらしく、突然俺は開放され尻から地面に落っこちた。
「ご、ゴホッ、ゴボッ…!!は、はっ…ゴホッ!」
苦しくて…死にそうだ。
空気、酸素!だけど、その前に気管に入ってしまった唾液を吐き出さなければ。
「ゴホッ…ガッ…は、ゴホゴホッ!!!」
まじで。死ぬかも。…と思ったけれど、四つん這いになって大きく口を開き、赤く色づいたよだれを垂らしていると、少しずつ楽になってきた。
「カッ…は、は、はぁ…」
よかった、俺、生還。
くちもとをぐいとぬぐい…それから、俺は思い出した。
何故俺が死の淵に立たされなきゃいけなかったかを。
それを思い出した途端、腹の底からぐつぐつと怒りがこみ上げてきた。

絶対に殺す。

そう思って俺は顔を上げたのだが…その瞬間、視界がキラキラと輝いた。
いや、キラキラというよりパチパチだろうか。
とにかく白い星が沢山はじけて……マズイ…と思った。
これには覚えがある。
元人間だった俺には時折しか現れないが…マズイ。これはこの光は…、地下通路にいようが、建物の中に居ようが追いかけてくる…

「煌天…」

呟いた次の瞬間、俺の視界は真っ白に染まり、そして真っ赤に燃えた。

真っ赤に染まった視界の中、これまた赤い獣を見たような気がしたが、記憶は定かじゃない。

 *

次に俺が目を覚ましたのは回復の泉の中だった。
俺はそこに仰向けにたゆたっていた。
「あ?」
かすれた声を上げざばりと体を起こすと、正面にいたあぐらをかく泉の聖女と目があったお(様な気がした)。
「大丈夫ですか?」
スズが転がるような涼しい声。
「あ、はい」
大丈夫です。
しかし何だって俺はこんなところに?
泉から腕を引き上げるついで、掌で水をすくったその瞬間…

ズキンッ

腰、そしてあらぬ場所に覚えのある痛みが走ってビシリと俺は固まった。
この痛みは…まさか…しかし、あんな場所が痛いなんて…他に理由は考えられない。
嘘だよ、まじかよ。あぁもう…。何だってこんなことに…。
あぁ、あれだ。
思い出した。俺はアサクサを歩いていて…
「聖女…様?」
ギギギっと体を軋ませるようにして聖女にもう一度目を向けると、
「赤い魔人が貴方を此処につれてきたのです」
と、これまた涼やかな声で、俺を絶望へと突き落とした。
やっぱり…そうなのか。
俺は力が抜けてバシャンとまた水の中に逆戻りした。
「あぁ…クッソォ…」
またヤられた。
ばしゃばしゃと水を手で叩くと、クスリと聖女が笑った気配がした。視線だけをそちらにやると、「貴方達ふたりともボロボロで…。あまり無茶をしてはなりませんよ」と聖女は言った。
「ボロボロ?」
「えぇ。全身血濡れで…生きているのが不思議なほどでした。まぁそれは貴方も同じでしたが…」
今日の聖女はやけに多弁だ。
そんな彼女に普通なら少しテンションが上がってしまうだろうけれど…今日ばかりはそれもない。
なにせ二度と許すまいと思っていたことを、どうやらヤられたらしいのだ(記憶はないが)
本当に最悪の気分だ。
…といいつつ、幾分体がすっきりとしたような気がしないでもないのが悔しい。
水に沈んでぶくぶくと泡を吐き、勢い良く飛び出て犬のように全身を震わせる。
とりあえず…今回は向こうにも痛手を負わせる事が出来ただけ…マシか。そう思うことにしよう。
でないと惨めすぎる。
「もう、大丈夫ですか?」
「うん。ありがとう」
鈍く痛む腰と……をかばいつつ…仲魔たちと合流するために泉を出た。

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