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棺桶

読み返してません。。。

長い夏休み、俺は弟と二人でエーゲ海の別荘に滞在していた。
毎日、殆ど名もしれぬ若い男女を引き入れて飲んで騒いで遊んで…時々女の子をベッドに引き入れて、やって、二日酔いに苦しんで、海に出て、ボートに乗って、キャンプファイアーにバーベキュー。時にはオペラハウスに高級レストラン。ガルウィングの真っ赤な車をぶっとばして、警官におっかけられて、カジノで一稼ぎ。
毎日毎日乱痴気騒ぎ。
だがそれも…今日は一休み。

外は大雨。
強い風が時折ふいて、バシバシと窓を叩く。
雷はなっていないが、鳴り出すのも時間の問題だろう。
低気圧のせいか、それとも昨日のテキーラのせいか頭が痛い。
すり切れたジーンズに、シャツを羽織っただけでテレビのチャンネルを次々に変えてぼんやりとしていると、二階からバカ弟がおりてきた。
俺と似たりよったりな格好をしたバカ弟…フェリシアーノは大あくびをしながら「おはよー兄ちゃん」と言ってキッチンの方へと足を向け、しばらくして牛乳とコップを持って戻ってきた。
バカ弟は隣のソファにだらしなく腰掛け、俺が絶えずチャンネルを変えているテレビを見、それから窓の外を見た。
「今日はあそべないねぇ」
バカ弟はひとりごとのように言ってミルクを飲み「あ」と声を上げた。
「…なんだよ」
俺は一昔前のバイオレンスムービーをやっているチャンネルで指を止めて聞いた。
「昨日、電話があってさぁ~」
「誰から?」
どうせ誰かから遊びの誘いだろうと思って聞いた俺は、
「エミリオおじさん」
「叔父貴?!」
バカ弟が口にした名前に、思わず手に持っていたリモコンを落としてしまった。
驚いて弟の顔を見ると、彼は困ったような顔で眉尻を下げている。
「マジ…かよ」
弟がすまなそうに肩をすくめるのを見て、俺は思わず乗り出していた体をどっとソファに預けた。
「何だって?」
「たぶん兄ちゃんが想像している通りだと思うけど…」
「いいから」
「だから…顔を出せって」
「断ったんだろうな?」
「ヴェ、断れるわけ無いじゃんッ!」
「お前なッ!」
そう、とりあえず怒鳴ってはみたものの…。経済的には完全に叔父貴に依存している立場では、俺だって断れるわけもない。
「できるだけ早くって…」
「うえ」
思わず舌が出る。
「遊び回ってるくらいなら、こっちにきて早く仕事を覚えろって」
最悪だ。
テレビの中、深刻そうに男同士で顔を寄せ合って話しているギャングを見て、俺はうんざりした。
俺の叔父貴は、テレビの中のギャングと同じ種類の職業だ。
所謂マフィアとかってやつで、所謂裏社会とのつながりがあって、所謂犯罪者。
シチリアに本家のある彼は、三代目。近頃では他のあちこちでいかがわしい…?いや、怪しいお仕事を手広くやっているらしい。
そんな叔父貴にはこれまでに妻が4人いて、その妻達の間に3人の子供がいた。…けど、その全員が死んでいて、今は愛人二人を囲っているきり。
叔父貴は何故か知らないが、俺とフェリシアーノに目をかけてくれていて…俺たちを後継者に仕立て上げたいらしい。
はっきりいって俺やフェリシアーノはそんなのはお断りだが…先程も言ったように、俺たちは叔父貴にかなりの額、金銭的にお世話になっている。
この夏だけだって数百万くらいはすでにとんでいる気がする。
それに加えて、俺たちに労働意欲…というか、一般人としての生活力に欠けている。このことを加味して考えると、俺たちは絶対に叔父貴には逆らえないって結論が出てくる。
「またフランシス兄ちゃんやアントーニョ兄ちゃんと一緒かなぁ…?」
「さぁな」
弟が言うフランシスとアントーニョ…ってのは、俺たちの教育係みたいな感じだ。
一人は虫も殺しませんって顔の優男で、もう一人は気のいい兄ちゃんって感じ。
だけど本性がそうではないってことはバカの俺たちでもうすうす気づいて入る。ただし…まだ裏の顔…もしかしたら本当の顔?…を俺たちは知らない。
それに加えてもう一人、
「ギルベルトはいないといいねぇ…」
「あぁ」
ギルベルトという男がいるのだが、その男は最低最悪。
ものすごく乱暴で、恐ろしい男。一度キレると手がつけられない。何度も監獄送りになって、何度も叔父貴がコネで出してやっている。
飢えた狼 とか 狂犬 とかって呼ばれている。
フランシスやアントーニョとかとは仲がいいらしく、三人でいるときは割と普通の人間に見えるが…一度酒場で暴れている彼を見た時には、俺もバカ弟もあまりの恐ろしさに玉がすくみあがってブルブル震えたものだ。
あいつには…あいつが機嫌が良い時だってあんまり…いや、絶対に会いたくない。
「やだね」
「あぁ」
「でも、行かなきゃね」
「あぁ」
テレビの中では、裏切り者の女が敵を手引きしている。
ここから先は音楽がアップテンポなものになり、ドハデなアクションシーンが連発ってところだろう。
俺は床に落としたままだったリモコンを拾い上げ、チャンネルを変えた。
その途端、窓から強烈な光が一瞬入ってきたかと思うと、ドーーーーンととんでもなく大きな音がして部屋の中の電気が一斉に落ちた。
びっくりして固まっていると、弟が「なんだかすっごく嫌な予感だね」と震えたような声で言うので、俺は「そうだな」とこたえてやった。

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