スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

会いたいな。 04

FT系 こんなのが書きたい というだけの話。
ちょっとだけ続けてみた。 読み返してないけれど。

「昔、ルートヴィヒ王子には会ったことがあるけれど…あれからずいぶんとたつし、きっと素敵な男性になられたでしょうね」

夕食のあと、母親である王妃に私室に招かれたロヴィーナは、突然彼女の口から飛び出した言葉に目を丸くした。
「お母様は…ルートヴィヒに会ったことがあるの?」
ロヴィーナが尋ねると、「もちろんよ」とイチゴのワインを飲みながら王妃は言った。
王妃は御年27歳。昔はおてんば姫と呼ばれた彼女だが、今はそのおてんばもとんとなりを潜め、美しくしとやかな王妃として知られている。
「彼とは一度パーティの席で顔を合わせたことがあるわ」
彼女の話を興味津々といった感じで聞いている娘に王妃は優しく微笑み、「そうね」とその頃のルートヴィヒの事を思い出しながら口を開いた。
「あの時は…」

 *

当時、彼女は15歳。
大貴族の娘であり、大層なおてんばという噂がありながらも美しかった彼女には結婚の話がひっきりなしに届いていた。
そんな中、彼女はドイツの第一王子ギルベルトの誕生日のパーティに彼女は王妃候補として招かれたのだ。

「といっても、順位は低いわ。なにせ大貴族とはいえ、他国。しかもイタリア王国ですものね」

ギルベルトには、他に沢山の候補がいた。
国内の貴族の娘はもちろん、他国の王女に、彼女のように他国の大貴族の娘たち…。
とはいえ彼女がギルベルト王子に見初められる可能性が無いとは言えない。
何しろ彼女は美しかった。容姿で言うならば、他にも美しい姫はいただろうが、彼女のように健康的でハツラツとした美しさを兼ね備えた姫は絶無であったといってもいい。
彼女の両親は、嫌がる彼女にドレスを着せ、飾り立ててそのパーティーに彼女を押し込んだ。
不満たらたらな彼女だったが、国外に出るのは少し楽しみだった。
数日間の旅の後に到着したドイツのお城は華やかさには多少かけていたが、荘厳で迫力のある大きな城だった…と彼女は記憶している。
提供された客間も申し分なく広くて、調度品もまたすばらしかった。
パーティのある日までの間、彼女は国によって城というものはずいぶんちがうものなのだと思い知らされたものだ。
そしてやってきたパーティ当日。会場となるホールもとても大きくて…やはり華やかさには多少かけていたが、隅から隅まで洗練されていて堂々としていて素晴らしかったと記憶している。

「それでギルベルト王子……の話はいいわね。ルートヴィヒ王子の話をするわ」

その時、ルートヴィヒ王子は11か12歳。
今のロヴィーナよりも少し年上だった当時の彼は、まだまだ子供っぽさが抜けないあどけない少年だった。背もまだ小さくて、ほっそりとしていた。真っ白な肌に、化粧をしたかのようなももいろの頬、紅をさしたかのように赤い唇。そして何より金糸のような髪がとても綺麗で、黒い軍服を模した正装がとても映えていた。

「信じられないわ」
「あら、でも本当よ。本当に可愛らしくて…」

緊張しているのか、兄ギルベルトの横で動かない彼は、本当にお人形さんのように可愛らしくてギルベルト王子そっちのけで彼に色目を使うお嬢さんもいたほどだ。
音楽がなり、従姉妹であるらしい少女とぎこちなく踊る姿もとてもとても微笑ましかった。
従姉妹の少女も金髪で、二人でくるくると回る様は物語の中の王子様とお姫様のようで、誰もが目を細めずにはいられないほどだった。

…そう言うと、ロヴィーナが少し複雑そうな顔をしているのに王妃は気付き、扇に口元を隠して小さく笑った。

それに第一王子ともとても仲がよかったようで、緊張しているルートヴィヒにギルベルトはしきりに笑顔で話しかけ、彼の緊張をほぐそうとしてるようだった。
侍従に料理をとってこさせ、それをギルベルトが弟に勧め、それを断られると無理やりギルベルトがルートヴィヒの口に押しこみ…
その時の事を思い出すと、今でもまだ可笑しくてたまらない。
その後、ルートヴィヒが恥ずかしがって真っ赤になって怒るのを、ギルベルトが笑って口元についたソースをハンカチで拭ってやったりしていた。

「私もダンスのお相手を願おうかと思ったくらいよ」
「えっ」
「もちろん、ダメだったけれどね」
王妃がいたずらっぽく言うと、ロヴィーナは母親に恨めしげな視線を向けた。

結局、それはギルベルトの策略だったとも言える。
彼があまりに弟にばかり構うので、パーティの席では彼の側室、正室候補はことごとく彼には近寄ることもできなかった。
そしてそうこうしているうちにさっさと彼は下がってしまったのだ。
しかし…そのおかげで…

「翌日にルートヴィヒ王子がわざわざ謝罪に来てくれたのよ」
「謝罪?」
「そう」

兄が失礼をしました。
そう言って部屋に訪れた少年を彼女は忘れないだろう。
本当に済まなそうに眉尻を下げた彼は、顔を上げ、彼女の顔を見ると頬をポッと染めた。
どうしたのかと問うと、彼は戸惑ったように視線を彷徨わせ…

 *

「“とてもお綺麗な人ですから、見惚れてしまいました”ですって」
あの時の真っ赤な顔!あれこそが紅顔の美少年というのね。
王妃はその時の事を思い出し、少女のようにクスクスと笑った。
「相手がルートヴィヒ王子以外の人ならば口説かれたと思って、当時の私は憤慨したでしょうね」
何しろ跳ねっ返りだったから。
「でも、ルートヴィヒ王子の様子があまりにも可愛らしいものだから、私まで真っ赤になってしまったものよ」
「それで?」
「それでって、それだけよ」
「お母様はルートヴィヒとは結婚しようとは思わなかったの?」
「ルートヴィヒ王子と?」
そう言って娘の顔を見た王妃は、ロヴィーナがひどく不機嫌な顔をしているのに気付いて苦笑した。
「それは思わなかったわ。だってその頃には私、…両親にはないしょでしたけど、陛下と面識がございましたから」
一途なのよ。
「……」
納得のいかない顔をするロヴィーナ。
王妃はそんなロヴィーナに目を細める。
最初、彼女とルートヴィヒ王子との婚約の話が出た時には、二人の年齢の差の大きさに猛反対をし、配偶者であるこの国の王の頬をひっぱたいた彼女だが…ロヴィーナの今の表情を見ていると、どうやらそれは余計なことであったらしい。
確かに…冷静に考えてみると、今の彼があの頃と同じように純真な心を持ち続けているのであれば…何の問題もないし、彼ならば少し我儘で気性の激しいところのあるロヴィーナとも上手くやっていけそうな気がした。
「当時はまさか陛下がこんなに女遊びの激しい方だなんて思ってませんでしたからね。いくらルートヴィヒ王子に求婚されたとしても、なびかなかったと思いますよ」
でも今はルートヴィヒを選んでおけばよかった…なんて思わないこともない……ということは心のなかだけに留めておく。
そうするとロヴィーナの表情も少し柔らかくなったように感じた。
「ロヴィーナ、貴女、ルートヴィヒ王子のことがお好き?」
「え…えと、嫌いではないわ」
少しひねくれた言い方をして顔を赤くするロヴィーナ。もじもじと居心地悪そうにする彼女は恋する少女そのものだ。彼女自身に自覚があるかどうかはしらないが、まだ小さいとはいえ…どうしてどうして…心はずいぶんと成長したものだと彼女は思う。
「で、でも…」
「なに?」
「本当に、ルートヴィヒは私と結婚する気だと思う?」
「え?」
「だ、だから…あの、侍女が言ってたから…」
「なんて?」
「だから…ルートヴィヒには…本当は私よりもふさわしい人がたくさんいるって…」
「心配なの?」
王妃の言葉にロヴィーナは首を横に振り…しばらくして、コクリと頷いた。
彼女は今にも泣きそうな顔をして俯き「変なの」と言った。
「ルートヴィヒの事は別に…き、キライじゃないけど…結婚とかよくわからないし…婚約者っていうのはわかってるつもりだけど…年だって離れてるし…」
要領を得ない喋り方。
王妃はロヴィーナの言葉を辛抱強く聞いた。
「こっちに帰れるって聞いたときは嬉しかったの。すごく。だって、お母様やお父様や…弟にも会えるし…ドイツは退屈だったから」
「それで?」
「でも、離れていると…なんか…ちょっと」
「寂しい?」
「寂しくはない。…でも気になる」
そう言ってロヴィーナは複雑そうな顔をした。
「なんだかもやもやする」
「…そう」
王妃は彼女においでっと手を広げると、恥ずかしがる彼女を膝の上に抱っこした。
「ルートヴィヒ王子は優しくしてくれる?」
「…うん」
「カッコいい?」
「悪くはないわ」
「結婚したい?」
「…して…あげてもいい」
後ろから抱かれ、顔を見合わせていないからか、ロヴィーナはずいぶんと素直だ。
王妃はそんな彼女の髪を優しく撫でてやった。
「貴女がお嫁にいってしまうと、私は寂しいわ」
「でも…あの…」
「心配なのね」
「…ん」
ロヴィーナには、ルートヴィヒが婚約者である限り他の結婚話など来るはずもないが…ルートヴィヒの場合は違う。
王様ではないから、ハレムのように沢山の妻を持つことはできないが、確か3人までは妻を持つことが許されていたはずだ。
彼にその気がなかったとしても、現在、彼の兄である現国王が未婚でその気がないと言われている中、彼への縁談話は多いだろう。ロヴィーナが不安に思うのもわかる。
でも…
「大丈夫でしょう」
王妃はきっぱりと言った。
「私の記憶に間違いがなければ、あの人は陛下とは違ってとっても誠実な人でしょう?そんな人が貴女を婚約者にと決めたんですもの。不誠実な事をなさるはずがありません。それにうちの陛下とは違って浮気なんかしないでしょうし、陛下と違って侍女を寝室に引きこもうなんてしないでしょうし、陛下と違って仕事をサボって市井で若い女の子とお酒を飲んだりはしないでしょうし、陛下のようにお酒によって市民と喧嘩をしたりもしないでしょうし…!」
話しているうちにだんだん腹が立ってきたのか、王妃の口調は後半かなり荒いものになっていた。
「全くあの陛下ときたら…ッ!…いえ、今はルートヴィヒ王子のことだったわね。あの人なら大丈夫よ。お母様は男の人を見る目は……あぁ…うん。あんまりないけど、えぇ、あの人は大丈夫よ」
微妙に頼りないながら力説する王妃。
ロヴィーナは母親の言葉をクスクス笑いながら聞き、母親に背中を預けて彼女の顔を仰ぎ見るように顔を上げた。
「大丈夫よ。貴女は幸せになれるわ」
「当たり前よ」
「そうね。貴女は私の娘だもの」
王妃は大事なぬいぐるみを抱きしめるように強くロヴィーナを抱きしめた。
それにくすぐったそうにロヴィーナは笑い、「ねぇ」と口を開いた。
「私、早くドイツに戻ってルートヴィヒに会いたいな」

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。